平成22年1月18日(月)東京大学・山上会館で、ダム工学会・若手の会による「第4回語りべの会」があり、会員をはじめ学生・一般の方も含めて90名近い参加者が集まった。
【プログラム】
■開会挨拶: 濱口 達夫(ダム技術センター理事長) ■講演:「永田 年(すすむ)と佐久間ダム」 高橋 裕 (国際連合大学上席顧問・東京大学名誉教授) 「水利土木遺産を見る」 岡田 昌彰 (近畿大学理工学部社会環境工学科准教授) ■意見交換会: コーディネーター:石田 哲也・東京大学社会基盤学科准教授、 島村亜紀子・前田建設工業株式会社
会場風景 【内容】
「語りべ」による講演では、最初に、高橋裕先生が、戦後の経済復興期の電力不足を解消すべく、およそ3年という異例の速さで完成した佐久間ダムについて、その工事を牽引した永田年(ながたすすむ)を通して、当時の日本の土木技術者がどう働いたかについて講演された。
司馬遼太郎氏との対談を引用し、明治初頭の欧米の技術導入が果たした役割も大きかったが、敗戦後、焼土と化した国土の復興から高度成長期へと移行する中、社会基盤建設の時代の扉を開いたのが佐久間ダムであったこと。また、その建設には、アメリカから大型土木機械を導入、これがその後の我が国の土木技術の近代化や発展に大きな役割を果たしたこと。そして、苦難の大工事の先頭にたった土木技術者・永田年は、より良い国土の建設を担っているという高い「志」と、“一日工事を休めば日本の発展がそれだけ遅れる”という情熱をもった人物であったこと。戦後復興の時代に、明治の日本人がそうであったように、まさに使命感に燃え、情熱を持って大プロジェクトに挑んだことを講演された。
続いて、岡田昌彰先生が、歴史的なダム・水利施設の土木遺産を紹介され、ダム・水路・水道・浄水場という水のネットワークとしての水利土木遺産について講演された。
水利土木遺産として、松江市の千本堰堤(1918年)、埼玉県本庄市の間瀬ダム、南あわじ市の上田池堰堤(1932年)等を紹介。配水塔では、桐生市、高松市、今市、甲府市、水戸旧低区、名古屋旧稲葉地、高岡清水町等、なかでも名古屋旧稲葉地は演劇場(アクテオン)として再利用されている事を紹介。 また、ランドスケープ遺産という新たな視点から、金沢市末浄水場について詳しく紹介。金沢市末浄水場は、その価値を認められて、1930年に近代水道百選に、2001年に登録有形文化財、2007年に登録記念物、2009年に国名勝指定を受けた。
意見交換会 講演後の意見交換会では、お二人の語りべに対して突っ込んだ質問があったほか活発な意見が出て盛り上がった。土木を歴史的にとらえることの重要性、遺産の意味、土木も時代背景と切り離せないことなど、示唆に富む意見交換となった。
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