◇ 矢木沢ダム
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矢木沢ダムは、昭和42年に完成。熊谷組施工によるダム堤体積570,965m3、堤高131.00m、堤頂長352.00mの非越流型ドームアーチ式コンクリートダム。 主ダムがアーチで、ウイングダムが重力式で、脇ダムがフィルという1つのダムで3つの型式を楽しめるダムマニアにとっては贅沢なダムである。また余水吐がスキージャンプ式になっているのも特徴の一つである。
午後2時を過ぎると、少々雲が出てきた。当初の予報では今日は雨が降るはずであったので、ここまでもてば御の字である。身体を以てその大きさを体験した奈良俣ダムを後にし、本日のトリを飾る『矢木沢ダム』へと向かう。途中、須田貝ダムも木の間隠れに望見できた。この周辺は「ダム銀座」と言っても過言ではないかも知れない。
矢木沢ダムが近づくと、『スキージャンプ』という単語が漏れ聞こえてきた。さすがダムマニアの一行、よくご存じだ。 奈良俣ダムを出て、30分くらい走っただろうか。バスはほぼ満水位に達している矢木沢ダムへ到着。まずは、資料館でスキージャンプ式洪水吐の試験放水のビデオ鑑賞を行なった。参加者全員「へ〜!」のあらし。所長から「今年も放流するかもしれない。」との思いかげない言葉に、場の空気は一変。「自分のカメラで撮影したい。」と、みんなの野望へと変わった。「次の放流はいつですか?」答え「ホームページで発表するので、各自調べて下さい。」
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マニアもすごいが、管理事務所の方もさすがに手馴れたものである。「ダムの寿命は?」とか「矢木沢ダムの堤内には唯一螺旋階段があるそうだが、本当か?」といった、ちょっと答えに窮するような質問もいくつか出たが、とりあえず質疑応答も無事終了。いよいよ本日最後のダム見学が始まった。エレベーターの定員の都合で二班に分かれて行動。水資源機構管理所職員による現場説明と案内により堤体内の監査廊やキャットウォークの体験と相成った。
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矢木沢ダム資料館で説明を受ける |
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下流面にて御本体撮影 |
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アーチ式で堤体断面が薄い所為か監査廊断面も小さく大勢で移動するには窮屈であったが、皆我先にと思い思いの行動に出る。 まずはエレベーターに乗って、第1班は下流低標高部へと降り立った。見学者一同カメラを構えて、矢木沢ダム御本尊を撮影。オーバーハングが圧倒的な迫力を持って一同を包み込む。しかしこれらの感覚はダムマニアには別の次元でやってくるものらしい。喩えて言うなら、寺社へでも参拝しているような……。そういった感覚が、実際にアーチ式コンクリートダムの直下に立ってみると理解できる。
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その後、再度、堤体内に入りエレベーターで中段へ。いよいよ憧れの、キャットウォークの体験だ!! キャットウォークは高所恐怖症気味の参加者にとっては気持ちの良いものではなかったようだが、くだんの参加者を除き、皆大はしゃぎ。 あのオーバーハングの手摺から身を乗り出して撮影している者も多かった。中には手摺りに片足を預けポーズをとる猛者もいる。「おい、ちょっと、それはやめておけ」と言おうかとも思ったが、声は喉の奥で凍り付いたままであった。 考えてみると、山中のダムまたダムを探訪し、狭い監査廊をくぐり抜け、目もくらむようなキャットウォークから遙か下方の地面を望む。これは紛れもなく『探検隊』そのものである。ダム好きは冒険心旺盛な人種なのだ。
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最終目的地『矢木沢ダム』の見学会も無事終了するころには、空は一面鉛色の雲に覆われた。良く一日天気がもったものである。参加者の執念のたまものであろうか。天端で記念撮影の後、案内をして頂いた水資源機構の方々に丁寧にお礼を述べ、一行は帰路についた。 帰りのバスでは、1日の疲れと充足感からであろう、大抵の参加者が熟睡の様子であった。関越道も都内の道路も渋滞もなく順調に流れ、ほぼ予定通りの午後8時15分、新宿駅西口に到着した。
今回のダムツアーはダムマニアが大半を占めていて、名古屋などから新幹線を使って新宿に集合した人も数人いたほど熱狂的であった。ダムの魅力とは「人間が造りだした巨大な建造物の迫力」「周りの自然との対比」などであり、そのダムを巡る理由は同じ形のダムがふたつとないことらしい。特に今回の三つのダムは近場に在って全てのダムが違う形式をとっているというのはダムマニアだけでなく誰にでもオススメできるツアーだったのではないかと思う。
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