《堆砂が問題な場合には、対策を》
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さて、以上のように書いてきたわけですけども、堆砂が無問題というわけではないですよ。調整池発電ダムでは殆ど問題ないのだけれど、それとて全く問題がないというわけにもいかない場合もあるかもしれないし、貯水池式発電ダム・各種水源用ダム・洪水軽減ダムなどでは有効貯水量を侵す状態まで堆砂が進むとこれは問題が出てくる。ダムによっては堆砂の問題の解決が急務になっているものもある。解決には費用も時間もアイデアもいる。しかしダムが果たす役割が重要だからこそ手を掛けても解決に奮闘するのです。
長野県・美和ダムでは土砂バイパストンネルを設置する工事が始まっています。これは作るのには費用がかかりますが一度作れば恒久的対策になるのだから、ダムの寿命を考えると決して高価な投資ではない。同様の計画は長野県・小渋ダムでも計画されているようです。
奈良県の旭ダムでは土砂バイパストンネルはすでに運用開始から数年が経っており、施設見学の機会に恵まれたので旭ダムの例で申し上げます。結論から申し上げるとこんな画期的方法があったのかと目から鱗でした。
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旭ダム※関係者以外立ち入り禁止のところを関西電力株式会社様の許可を得て立ち入りさせていただいております。
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旭ダムの調整池上端。小さな堰を築いて排砂バイパストンネルに普段の清流や洪水時の濁流を導く。
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旭ダム天端から排砂バイパストンネル吐き口を見る。ダム湖を迂回してここまで数キロのトンネルが作られている。
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排砂バイパストンネル吐き口拡大。ダム上流の水を新鮮なままで下流に流す。
旭ダムは純揚水式発電下部調整池ダムという特別な用途も絡んでくるので全てのダムで必ずしも当てはまる方法ではないかもしれませんが、ダムの用途により適応出来るダムでは、採用すればダム貯留によって起こされると言う環境への影響を悉く解消できるというほど画期的なものでした。
ダムが出来るとダム湖で淀んだ水が流されるのでどうしても下流に流される水は上流に比べると良くない場合が出てくる。しかし土砂バイパストンネルを使って上流からダム湖に流れ込む水をダム湖に入れる前にバイパスで下流に送ってしまいますと、上流の水が淀むことなくそのまま下流に流されるのでその効果は絶大です。いわゆるダムによる水質劣化というのはダム湖で淀むというのがかなりのウエイトを占めるのではないでしょうか? これがほとんど完全に解決できるのです。
また洪水時にも土砂バイパストンネルに土砂を含んだ濁流を下流に流すことにより、ダム湖の埋没寿命も延びるという効果はもちろんの事、それにより次のような嬉しい結果もありました。(但し洪水を全て下流に流すのではなく、下流に被害が出ない程度に調整している。危険な量は一度ダムに貯留することは、治水の責務が無い利水ダムでも貯める余力があれば行うのは当然の事です)
旭ダムのある旭川は川原に美しい真っ白な玉石が多く見られる川でしたがダム完成後はめっきり少なくなった。しかし土砂バイパストンネルの完成から数年経ちますとダム建設前の白い玉石が再び見られるようになったということで水質が良くなったことも併せて地元の方に喜ばれています。
安易に土砂が溜まるからダム撤去してまえという短絡論では何の解決にもならない。堆砂対策というのはいわばメンテナンスです。メンテナンスをするのは何もダムに限った話ではない。家でもマンションでも道路でも車でも機械でもありとあらゆるものは適切なメンテナンスをしてはじめて能力をいかんなく発揮できるものです。鉄筋コンクリートの頑丈なビルも作ってから手入れをしなければ10年もしないうちにほころんでくる。しかしメンテナンスをしながら使えばずっと寿命は延びていく。しかも手入れをせずに壊れてから修理となれば高くつくけど、適切なメンテナンスをしておけば結果的に安く上がるものです。
堆砂対策のうち、背水域の溢水対策は治水の一環として行政が行う義務があると思う。しかし朝日の記事にある飯田市の水害はすべてが泰阜ダムの影響とも考えにくい。天竜川の流れは、諏訪湖を出発して伊那谷盆地を流れ、飯田市から山峡部に入って行くという珍しい形をしているんだけど、こういう地形は川が山に入っていくところで氾濫しやすい。他地域のよく似た例では、京都の亀岡市が桂川が保津峡に入るところに位置しているのだけれど、ここでもよく氾濫する事がありました。ただ桂川は治水に有利なところにダム適地があったから日吉ダム建設で治水はほぼ成功したと言えると思います。しかし飯田市の場合は強い堤防を築いたりする必要があるのでしょうね。 ダムによる水資源、水力電気は地球の宝です。しかし自然は人間に都合の良い物だけを恵んではくれず試練も同時にくれるといえましょう。その試練がダムでいえば堆砂の問題だと思います。だからといって諦めて化石燃料にエネルギーを求めては資源がもちそうにありません。温暖化の問題もある。これも便利な化石燃料の恵みと裏腹の試練かもしれません。原子力でも強大なエネルギーの裏に放射性廃棄物や核兵器の問題が隠れています。これらのエネルギー源を見比べて、ダムや水力が忌み嫌われるほど悪いですか? 水力は太陽があるかぎり循環する無限のエネルギーです。地球の面積の7割を占める海洋に降り注いだ太陽エネルギーが海水を蒸発させて陸に雨や雪として降り注ぐ、太陽エネルギーの化身ともいえるリサイクル可能なクリーンエネルギーです。
時代は使い捨ての時代からリサイクルの時代へ移りつつあります。エネルギー源だけではなく物も大切に長く使うことが求められる時代です。ダムにしても作リッパなしで埋まるのを黙ってみているのではなく手入れをして使う事がトレンドになるのでは。100年で埋まって使えなくなるダムなんて無い。法廷耐用年数80年を超えても修繕すればいつまでも使える設備だから費用も水力発電、治水利水で稼いでいる限りは金食い虫にもならない。むしろ使えば使うほどうまみが出てくる資産です。冷やかし半分の批判はやめてほしい。
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