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8.三原川 〜 大日・牛内ダム、成相・北富士ダムの建設


 淡路島は瀬戸内海東部にあり、面積 593・に及ぶ瀬戸内海最大の島である。三原川は淡路島西南部に位置し、論鶴羽山(標高 608.3m)に源を発する淡路島最大の河川であって、途中支川を合流しながら三原平野を北西に貫流し、成相川と合流後、西流して河口付近で大日川と合流し、西淡町湊地先で瀬戸内海に注ぐ流域面積 123km2、流路延長20kmの二級河川である。中下流に広がる三原平野は淡路最大の穀倉地帯となっている。


大日ダム

大日・牛内ダムの建設 
 大日ダム(大日川)、牛内ダム(牛内川)は、三原川水系大日川流域の兵庫県三原郡南淡町賀集生子及び同南淡町賀集牛内地点に三原川総合開発の一環として平成13年に完成した。この両ダムは3つの目的をもつている。

・大日ダムは、ダム地点の計画高水流量85m3/sのうち65m3/sを、牛内ダムは計画高水流量 110m3/sのうち、90m3/sを各々洪水調節を行う。
・両ダムは大日川、牛内川の沿川における既得用水の補給を行う。
・牛内ダム地点において南淡町、三原町、西淡町に対し、水道用水 0.017m3/s( 1,500m3/日)の取水を可能ならしめる。


牛内ダム

 大日ダムの諸元は、堤高36m、堤頂長 247m、総貯水容量 110万m3、一方牛内ダムは、堤高59m、堤頂長 216m、総貯水容量 220万m3で、ともに重力式コンクリートダム、両ダム併せて総事業費 262.3億円である。起業者は兵庫県、大日ダムの施工者は西松建設(株)・(株)森長組共同企業体。牛内ダムの施工者は(株)大林組・日本国土開発(株)・(株)森長組共同企業体である。

 この両ダムの建設記録として建設技術研究所編『大日・牛内ダム工事誌』(兵庫県洲本土木事務所・平成13年)が刊行されている。

『大日・牛内ダム工事誌』

 大日・牛内ダムは地形的条件から、トンネルにより洪水を分水し、一体となって機能するように考慮されており、2ダム1事業として採択された全国的には珍しいダム造りである。なお、この工事誌には、大日・牛内ダムに係わる設計、施工、基礎処理等について、雑誌に掲載された研究・論文も収録されている。例えば、この論文に「平成7年1月17日未明兵庫県南部を襲った阪神・淡路島大地震について、その震源はこの牛内ダムからわずか40kmの淡路島の北端であり、現場に駆けつけて、確認調査を行ったが、本体コンクリ−トの打設完了後3ケ月経過したところで、全く影響は生じなかった」と述べられており、ここに日本における高度なダム技術が実証されている。


右が成相ダム、左が北富士ダム

成相・北富士ダムの建設 
 成相ダム、北富士ダムは、三原川水系三原川(支川成相川)の兵庫県三原郡三原町八木地点に三原川総合開発の一環として平成12年に完成した。
 両ダムの目的は次のようになっている。

・成相ダムはダム地点の計画高水流量 110m3/sのうち 100m3/sを、北富士ダムは計画高水流量45m3/sのうち40m3/sを洪水調節を行い
・成相川の沿川の既得用水の補給、さらに
・淡路広域水道企業団に対し、水道用水として0.46m3/s( 4,000m3/日)の取水を可能ならしめる。


『成相・北富士ダム工事誌』

 成相ダムの諸元は堤高61m、堤頂長 223.5m、総貯水容量 405万m3。一方北富士ダムは堤高52.5m、堤頂長 162.5m、総貯水容量 130万m3。ともに重力式コンクリートダム、あわせて総事業費は 283.5億円である。起業者は兵庫県、成相ダムの施工者は西松建設(株)・(株)宮本組共同企業体、北富士ダムの施工者は(株)フジタ(株)・新井組共同企業体である。

 この建設記録として、ニュ−ジェック編『成相・北富士ダム工事誌』(兵庫県洲本土木事務所・平成16年)が刊行されている。

 成相ダムサイトから上流 500m地点に、粗石モルタル造りの成相池(昭和25年完成)が満水位以下に水没することになる。この土木遺産を残すために、上下流に水位差が生じないように越流部を切り欠きによって、水没する成相池堰堤の安定性を確保し、下部取水塔を穴空けし、歴史的価値を損なうことなく、歴史的環境の創出を図ったことは特筆に値する。このように、先人の水資源開発に係る熱意を後世に伝え、貴重な歴史的財産の保全されたことには頭が下がる。

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