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14.宮崎県ダムのまとめ

 宮崎県のダムは、大正期から平成18年にかけて46基築造されてきた。一部重複するものの次のようにまとめてみたい。

1)ダム築造の年区分は、大正期1基、昭和初期9基、昭和中期18基、昭和後期8基、平成期10基となっている。とくに昭和中期(昭和21年〜40年)の高度経済成長期に18基の多くのダムが造られた。

2)ダムの型式は、重力式コンクリートダム31基、アーチダム5基、アース式ダム4基、ロックフィルダム2基、アスファルトフィシングダム2基、中空重力式コンクリートダム1基、重力式アーチダム1基となっている。重力式コンクリートダムが圧倒的に多く67.3%を占める。日本初の本格的アーチダム上椎葉ダム、中空重力式コンクリートダム諸塚ダムの建設が特筆される。

3)ダムの用途は、発電ダム24基、多目的ダム16基(発電を含む10基)、農業用ダム1基、治水1基である。発電ダムは多目的ダムのなかの発電ダム10基を含めると34基と増え73.9%を占める。宮崎県は、富山県、長野県と同様に発電王国といえる。

4)宮崎県施行の治水ダム(河川維持用を含むので多目的ダムとしているが)は、沖田ダム、長谷ダム、瓜田ダム、広渡ダム、日南ダムと造られ、穴あきダムの自然調節方式であって、とくに多雨地帯における水害防除のためのダムとしての特徴を現している。

5)農業用ダム5基(多目的ダムとして含めているが)であるが、古くからため池造りや、用水の技術が発達し、江戸時代以降清武川左岸における松井用水をはじめ多くの用水路が開削された。また、宮崎県のため池数は 835ケ所(平成元年度現在)である。

6)ダムの堤高別は、15m〜30m14基、31m〜50m14基、51m〜70m14基、71m〜 100m2基、 101m〜 130m2基であり、
 ベスト3は、
・一ツ瀬ダム  130m
・上椎葉ダム  110m
・塚原ダム原  87mであり、
3ダムとも発電用ダムとなっている。

7)ダムの総貯水容量別は、 100万m3以下14基、 101〜1000万m322基、1001〜3000万m33基、3001〜8000万m35基、8001〜1億m31基、1億1万m3〜2億7000万m31基である。
 ベスト3は、
・一ツ瀬ダム 2億6131万m3
・上椎葉ダム   9155万m3
・松尾ダム    4520万m3であり、
3ダムとも発電を目的としている。

8)ダムの事業者別では、九州電力(株)20基、宮崎県19基、農林水産省4基、土地改良区1基、チッソ(株)1基、旭化成(株)1基である。
 戦前では、全てといいほど電力会社によるダム建設がみられ、高度経済成長期を迎えると宮崎県、九州電力(株)の施行のダムがほとんどを占めた。

9)平成17年、ダム湖百選に上椎葉ダム( 日向椎葉湖)が選ばれ、地域にとってはかけがえのないダム湖であって、地域の人々に親しまれている。

10)ダムの堆砂率をみてみると、戸崎ダム(昭和18年完成)57.5%、岩屋戸ダム(17年)54.1%古賀根橋ダム(34年)47.3%、川原ダム(16年)46.2%、西郷ダム(7年)44.2%であり、戦前のダムが高い。また、戦後のダムでは、杉安ダム(昭和38年完成)30%、上椎葉ダム(30年) 9.4%、一ツ瀬ダム(38年)5%となっている。(「電力土木」2004 No313 )

11)沖田ダムは治水ダムであるが、沖田川下流域には併せて河川改修が行われた。さらにその施工には、植生などの河川環境にも配慮されており、これからの治水はこの環境を含めた総合治水事業を行うことが大切になってくるだろう。

12)最近、地球温暖化の影響であろうか、平成16、17、18年と続けて、梅雨前線や台風によって豪雨をもたらし、山肌があらわれ平成18年9月現在小丸川、一ツ瀬川はミルクコーヒー色のように流れており、なかなか清流に戻れない。また、耳川の上椎葉ダム等のダム群に発電支障を及ぼした経緯がある。

 宮崎県における河川管理、ダム管理は多雨性、地質上、地形上から困難さをつくづく感じる。これからは、治水を含めたダムのきめ細かいダム管理が望まれる。一つの方法として、洪水に対処するために発電容量分を治水容量分に振り分ける調整も必要かもしれない。


 以上、宮崎県のダムについて概観してきたが、おわりに宮崎県に係わる水環境の書をいくつか掲げる。

・宮崎県編・発行『宮崎県の水資源』(昭和45年)
・国土庁土地局・編・発行『大淀川・川内川地域主要水系調査書』(昭和59年)
・  同        『宮崎北部地域主要水系調査書(五ヶ瀬川・小丸川)』(昭和61年)
・宮崎工事事務所編・発行『宮崎工事事務所60年のあゆみ写真集』(昭和62年)
・「大淀川の歴史」編集委員会編『大淀川の歴史』(宮崎工事事務所・平成10年)
・宮崎河川国道事務所ほか編・発行『大淀川水系河川整備計画(平成18年)
・大淀川教育課程編集委員会編『大淀川の教材化と指導計画』(宮崎市教育委員会・昭和61年)
・宮崎市生活保健部編『大淀川をきれいにするために』(宮崎市・昭和62年)
・宮崎県総合博物館編・発行『大淀川の自然』(平成元年)
・建設省宮崎工事事務所編・発行『大淀川百科(第1巻)−大淀川と生物たち』(平成9年)
・  同           『大淀川百科(第2巻)−大淀川の見どころ』(平成9年)
・  同           『大淀川百科(第3巻)−大淀川の治水』(平成10年)
・  同           『大淀川百科(第4巻)−大淀川の歴史』(平成11年)
・  同           『大淀川百科(第5巻)−大淀川の未来』(平成12年)
・大淀川水系水質汚濁防止対策連絡協議会編『川の生物から水質を調べる(平成17年度)』(国交省宮崎河川国道事務所・平成17年)
・田代学著・発行『消えた赤江川−大淀川界隈新風土記』(平成7年)
・  同著   『橘橋を架けた医師−福島邦成』(江南書房・平成9年)
・竹下静子著『木綿の水着−郷愁の大淀川』(鉱脈社・平成13年)
・原田 解著『宮崎平野のフォークソング−大淀川民謡記行』(本多企画・平成8年)
・岡崎文雄著・発行『宮崎県の石造アーチ橋』(平成13年)
・宮崎「橋の日」実行委員会編・発行『宮崎「橋の日」10周年記念誌』(平成9年)
・宮崎河川国道事務所編・発行『小丸川百科(児童書)』(平成15年)
・坂本守雄写真集『綾川渓谷』(鉱脈社・平成10年)
・政野龍雄著・発行『加江田渓谷の植物たち』(昭和62年)
・池内捨吉著『加江田川』(川越石男翁顕彰会・平成2年)
・小林市教育委員会編・発行『湧水のまち小林』(平成4年)
・宮崎県土木部河川課編・発行『もっと知りたい広渡川・酒谷川(児童書)』(平成14年)
・  同          『水の記憶 宮崎の河川と海岸』(平成10年)
・全国建設研修センター編・発行『土木遺産を訪ねて(宮崎編)』(平成15年)
・延岡工事事務所編・発行『水郷のべおかまちづくり−水神さまガイドブック』(平成8年)
・延岡工事事務所・北町区五ヶ瀬川の畳堤を守る会編・発行『畳で街を守る』(平成17年)
・耳川の歴史と文化を語る会編『耳川百科(児童書)』(宮崎県土木部・平成13年)
・都甲鶴男著『耳川』(耳川文化の会・平成3年)
・  同著・発行『坪谷川風景』(昭和62年)
・宮崎県農政水産部編・発行『宮崎県土地改良史』(昭和53年)
・宮崎県農林建設課編・発行『碑が語りかける水と土』(平成9年)
・松尾宇一著『日向水利史』(日向文庫刊行会・昭和27年)
・農林省農地局編・発行『大淀川水系農業水利実態調査書』(昭和33年)
・九州農政局編・発行『綾川地域における土地改良の展開と効果』(昭和52年)
・農林省一ツ瀬川農業水利事業所編・発行『一ツ瀬川事業誌』(昭和57年)
・松田仙峡著『藤江監物−岩熊井堰二百三十年史』(岩熊堰土地改良区・昭和34年)
・杉安堰土地改良区編・発行『杉安堰土地改良区のあゆみ』(昭和53年)
・山田町土地改良区協会編・発行『山田土地改良史』(平成12年)
・石井一次著『広谷用水路と山口弘康』(鉱脈社・平成5年)
・日本ナショナルトラスト編・発行『油津の町並みと堀川運河』(平成9年)
・宮崎県編・発行『宮崎県の気象−宮崎県気象70年報』(昭和34年)
・三好利奄編・発行『中・近世の日向災害史』(平成6年)
・霧島盆地水害対策委員会編・発行『大淀川上流の水害』(昭和29年)
・宮崎県土木部・宮崎県土木事務所編・発行『宮崎県における災害文化の伝承』(平成18年)
・沖水川治水史編さん会編『沖水川治水史』(三股町役場・昭和48年)
・日之影町編・発行『台風11号による集中豪雨の記録(S57.8.13)』(昭和58年)
・西臼杵支庁編・発行『'88 GW災害の記録』(平成3年)
・宮崎県北諸県農林振興局編・発行『平成5年豪雨・台風災害の記録』(平成7年)
・宮崎県北川町役場編・発行『平成9年9月16日台風19号大水害』(平成10年)
・宮崎市水道史編集委員会編『みやざき水物語』(鉱脈社・昭和63年)
・坂本新著・発行『宮崎の水道と私』(昭和41年)


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