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8.前川ダム(最上川水系前川)の建設

 前川は、最上川水系須川の左支川であり、その源を南陽市新田の丘陵地に発し、国道13号線まで奥羽本線沿いに流下し、上山市を貫流し、須川に合流する流路延長16km、流域面積78km2の河川である。

 前川沿川はたびたび水害に見舞われていたがとくに、昭和39年7月12日〜13日の豪雨により、被害家屋184戸、総額4億円の被害をうけた。また昭和42年8月28日〜29日の豪雨により、田畑冠水343ha、浸水家屋404戸、被害総額9億円に及んだ。このような水害を減災するために、前川ダムは、前川の上山市川口地先に、昭和46年に着手し、昭和58年3月に完成した。

 山形県前川ダム建設事務所編m3発行『前川ダム工事誌』(昭和58年)により、目的、諸元、特徴を追ってみる。


『前川ダム工事誌』
 ダム建設の目的は次の2つである。

・前川本川には、ダムを建設する適地がないため、南陽市小岩地点に分水口を設けて導水管により、ダムに貯留する特殊な洪水調節である。即ち、小岩沢地点高水流量135m3/Sのうち110m3/Sを導水管に導き、ダム直接流域分30m3/Sをあわせて140m3/Sの全量を貯留する全量カット方式で洪水調節を行い、泉川橋基準点で470m3/Sを350m3/Sに低減する。

・前川の流量は沿岸123haの水田に農業用水に利用されているが、過去しばしば用水不足をきたしており、河川の正常な機能の著しい低下を解消するため、河崎利水基準地点で流量最大6.388m3/Sを確保する。

・前川の流量は沿岸123haの水田に農業用水に利用されているが、過去しばしば用水不足をきたしており、河川の正常な機能の著しい低下を解消するため、河崎利水基準地点で流量最大6.388m3/Sを確保する。


(撮影:ふかちゃん)

 なお、前川ダムによって水没した忠川池の従前の機能を補償するために、有効貯水量50万m3を確保している。

 ダムの諸元は、堤高50m、堤頂長265.5m、堤体積69万m3、総貯水容量440万m3、型式ロックフィルダムである。起業者は山形県、施工者は間組で、事業費は122.6億円を要した。主なる補償関係は用地取得面責65.7ha、移転家屋1戸、神社2、漁業補償である。

 この前川ダムの特徴については、高橋準一山形県土木部長は、
「前川ダムは、県の事業であり、建設省の補助事業のダムとしては、県で初めての本格的中央コアロックフィルダムであります。また、導水管によって河道外に築造したダムに洪水を導流するという珍しい計画で、事業関係者もいろいろと苦労しました。工事に携わった方々のダム完成の喜び、更にその利益を受けられる地域の人々の喜びは、またひとしおのものがあると思います。」

と述べている。

 繰り返すが、この導水路は、前川ダムの洪水計画により、分水地点において、計画高水流量135m3/Sを導水管と前川本川に110m3/Sと25m3/Sに分流し、導水管と2流域の流量を含めた総量130m3/Sを前川ダムに導水するものである。

 分水口(南陽市小岩沢)からダム貯水地(上山市川口)までの区間総延長2891.1mで、分水口、余水吐、トンネル及び開渠で構成されている。導水路工事はダム建設の全体工程から全延長7工区に分別し、昭和54年度に着手し、ダム完成同時期の昭和58年度に完成した。このようにみてくると、前川ダムは河道外に造られた全国的に貴重なダムである。


   目つぶればダムに沈みしわが母校桜の花は満開なりき (田熊正子)


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