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14.田沢川ダム(最上川水系田沢川)の建設

 田沢川は山形県飽海郡平田町に位置し、その源を大森山(標高781m)に発し、山間部を西流し、途中坂本地先で平地部に出て支川小林川を合流しながら流路を西北から北へ緩やかに転じ、上北目地先で相沢川に合流する流路延長17.0km、流域面積83.0km2の一級河川である。

 田沢川流域は日本海の影響を受け多雨多湿、多照の海洋性気候を示し、降雨量は梅雨期、台風期に多く、特に台風期の豪雨により災害を発生している。流域の年平均降水量は2300mm、最大日雨量206mm、年平均気温は9.7℃、冬期間の積雪量は2〜3mである。昭和46年7月16日、日量260mmという50年に1度という大きな集中豪雨により未曾有の大水害を被った。

 このような水害を解消するため田沢川ダムは、最上川水系相沢川の山形県飽海郡平田町大字山元地先に昭和61年建設に着手以来16年の歳月をかけて、平成13年に完成した。

 このダム建設記録について、山形県田沢川ダム建設事務所・株式会社建設技術研究所編『田沢川ダム工事誌』(山形県・平成14年)がある。


『田沢川ダム工事誌』

月刊ダム日本 2002.12)
 田沢川ダムの目的、諸元、特徴を追ってみたい。
 ダムは4つの目的をもって造られた。

洪水調節は、自然調節方式とし、ダム地点における計画高水流量250m3/Sのうち200m3/Sを調節し、50m3/Sを放流する。

◇既得用水の補給等、潤いのある河川環境と機能の保護と増進を図るため、相沢橋地点において0.83m3/Sを確保する。

◇酒田飽海地区(八幡町の一部を含む酒田市、平田市、松山町)への水道用水として新たに日量33700m3(0.390m3/S)をダム地点から供給する。これによって、酒田市での全給水量の約3割、平田町では6割、松山町では全量をこのダムから供給することとなる。

◇管理用発電は、潤いのある河川環境と機能の保護を行うために放流を利用して、最大出力490kwの発電を行う。

 ダムの諸元は、堤高81m、堤頂長185m、堤体積21.7万m3、総貯水容量910万m3、有効貯水容量790万m3、型式重力式コンクリートダムである。起業者は山形県、施工者は大成建設・佐藤工業・地崎工業共同企業体、事業費は292億円を要し、費用のアロケーションは、河川65.3%、水道用水34.7%である。

 田沢川ダムの特徴について、

◇堤体施工において、ダムサイトがV字急峻地形で、河床幅も狭く、中小規模ダムとして合理的な拡張レヤー工法を採用。

◇ダム高が81mあり、管理上点検や観測の作業効果性を高めるためにエレベーターを設置。

◇ダムの中央の展望広場には、平田町出身の彫刻家石黒光二氏による男女の像「恵水」を設置。

◇ダムによる水没家屋、耕作地もなく、用地取得は順調に進捗。

の、4点を挙げることができる。

 堤体コンクリート打設完了時には、地元田沢小学校の児童がそれぞれの想いを小石に書いて埋められている。またダム湖の愛称募集は多くの応募のなかから「ひらた赤滝湖」に決定した。ダムの上流、約10kmに原生林に囲まれた古来赤滝様とも呼ばれ、赤滝山不動明王の霊所、飛島神社の獅子頭が生まれた聖地として、地元民から崇め親しまれてきた「赤滝」にちなんで付けられた。赤滝の「アカ」は梵語やアイヌ語で信仰の水、浄水を意味し、それは長雨や干ばつの時にも水量に大きな変化が見られないと伝承されている。まさしく、田沢川ダムの役割がそのことを物語っているといえる。


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