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13.神室ダム(最上川水系金山川)の建設

 金山川は、その源を秋田県と県境神室山(標高1365m)に発し、金山町をほぼ西流し、真室川町にて最上川支川真室川に合流する流路延長25km、流域面積117.2km2の一級河川である。流域内の土地利用状況は有屋地点を境に上流が国有林、下流平坦部は田畑約1630haが利用されている。流域周辺の気象状況は日本海からの北西季節風と出羽丘陵の影響をうけ年間降水量約2200mm、冬期間の積雪量1.5 3mに達する多雨多雪地帯である。

 金山川筋は近年出水による災害が相次ぎ、とくに昭和49年7月の集中豪雨による出水時には浸水家屋99世帯、総額4.5億円の被害、昭和50年8月の洪水時には浸水家屋60世帯、田畑冠水500haに及び、総額5億円に達する甚大な被害を被った。

 また、利水面においては、昭和48年7月から干ばつ時に水道用水が不足し、新庄市では道路の消雪用井戸水、農業用井戸水を給水し急場を凌いだ。さらに、人口の都市部へ集中と工場団地造成などに伴う水需要の増加が見込まれ、水道用水の水源を確保する必要も生じてきた。このような必要性から、神室ダムは金山川の山形県最上郡金山町有屋字神室国有林地内に平成5年10月に完成した。

 山形県編・発行『神室ダム工事誌』(平成6年)により、目的、諸元、特徴を追ってみたい。


『神室ダム工事誌』

月刊ダム日本 1993.3)
 このダムは3つの目的を持って造られた。

◇ダム地点の計画高水流量390m3/Sを自然調節方式により118m3/Sに調節し、金山川及び真室川町の洪水を防ぐ。

◇金山川沿川の既得用水の補給など、流水の正常な機能の維持と増を図るため必要な水量を流す。

◇新庄市、金山川町及び真室川町に対し、金山橋基準点において最大22500m3/日(0.261m3/S)の水道用水を供給する。

 ダムの諸元は堤高60.6m、堤頂長257m、堤体積30.7万m3、総貯水容量740万m3、有効貯水容量580万m3、型式重力式コンクリートダムである。企業者は山形県、施工者は鹿島建設・熊谷組・飛島建設共同企業体、事業費205億円を要した。事業費のアロケーションは河川89.2%、上水10.8%である。

 洪水防除区域の資産として、氾濫防止面積950ha(金山町、真室川町)人口5404人、家屋1166戸、田畑735ha、国道などがあげられる。

 主なる補償関係は、取得面積44.64ha(ほとんど国有林)、ヤマメ、ニジマス、イワナ、カジカ、ウグイ、アユの漁業補償であった。

 次に神室ダム建設の経過をみてみたい。

昭和55年 神室ダム建設事務所開設
  56年 原石山地質調査
      保安林解除の用地測量
  57年 付替道路の3橋梁着工
  60年 付替道路神室大橋完成
  61年 仮締結及び仮排水トンネル着工
  62年 堤体掘削、堤体コンクリート打設開始
  63年 ダム定礎式
平成 3年 堤体コンクリート打設完了
   4年 試験湛水開始
   5年 多重無線、周辺整備事業完成
      基幹湛水終了(6月)
      竣工(10月)

 この『神室ダム工事誌』のなかで、ダム建設における工法、景観、環境に考慮したことについて、次のようにみることができる。
 宮下武山形県土木部長は

「施工にあたっては、最新技術を駆使し、建設省が開発したRCD工法を採用し、合理化施工によるコンクリート打設を行うなど、現代土木工学、ダム技術の粋を集めて建設したものであります。また県内で初めてシビックデザイン事業を取り入れ、ダム天端にデザイン的要素を加え景観に配慮するとともに、ダム周辺環境整備に意欲的に取り組み自然との調和に十分配慮した水辺空間を創造しており、地域住民のいこいの場所として末永く親しまれることを期待しております。」

と述べ、事故、災害の発生もなく完成したことをともに喜んでいる。
 さらに、岸宏一金山町長は

「その立地が、栗駒国定公園内にあることからダム湖とブナの原生林の織りなす空間が、人々に美しい自然景観、保健休養の場、レクリェーションの場等を提供してくれるものと期待されており、………………シビックデザインダム事業を取り入れ、堤体天端を石畳の散歩道風にし、上水道の供給対象地域となる新庄市・金山町・真室川町の多くの住民から募集したふるさとの絵を展示したり、湖名を広く町民に募集し「神室湖」に決定したことなど、人々とダムのふれあいをその建設段階から配慮し正に現代エコロジーを考えたゆとりと潤いのある素晴らしいダムであることに誇りを感じます。」

と讃えている。


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