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この書を読むと、黒部川におけるダムが治水や発電などの利水に大きく貢献しているが、その反面ダム堆砂の排砂が流域住民、とくに富山湾内の漁業者に漁業への悪影響を及ぼしている。 新聞記者である著者角幡唯介は、黒部川の排砂の取材を通じて次の3点にまとめた。 @黒部川で始まった排砂は、排砂問題の解決策として非常に有効な手段と考えられた。しかし、堆砂は漁業被害を引きおこし川や海に深刻な爪痕を残している。 A取材を通じて強く感じたことは排砂を実施する国交省、関電の主張が、環境への影響を訴える漁業者、研究者の主張する被害の実態と全くかみ合わない。 B行政が平成9年の河川法の改正によって市民との協働という言葉を使うようになったが、形だけの協働でなく、きちんと市民の意見が事業に反映される協働作業が求められる。
そして、最後に「ここは一つ、一歩を踏み出して改革に着手してみてはいかがだろうか。漁業者も国交省、関電も、黒部川と海を良くしたいということでは、気持ちも目的も同じはずだ」と問いかけている。
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