◇ 8. 上津浦ダム(上津浦川)の建設
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昭和41年天草諸島に五橋が完成した。天草は五橋の開通によって、熊本市中心地と2時間ほどで結ばれるようになり、経済的、文化的に発展を遂げてきた。そして昭和40年以降、天草諸島のダム建設をみてみると、第1ヤイラギダム(昭和40年完成)、楠浦ダム(41年)、志岐ダム(48年)、教良木ダム(51年)、西河内ダム(55年)、亀川ダム(57年)、第2ヤイラギダム(59年)、五和ダム(60年)、姫の河内ダム(62年)、都呂々ダム(平成2年)、五和東部ダム(14年)、上津浦ダム(16年)と、順次12基が造られた。
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このことは、天草諸島の河川は急流で延長が短いため、梅雨期や台風期に降雨が集中し、洪水が起こりやすく、逆に渇水年には、しばしば深刻な水不足に見舞われることから、その対策としての治水、利水事業であるダム12基が築造された、といえる。これらのダムのなかから、上津浦ダムの建設を追ってみたい。 上津浦ダムの建設については、熊本県土木部河川課による『上津浦ダム工事誌(CD)』(平成17年)が作成されている。
上津浦ダムは上津浦川総合開発事業、上津浦簡易水道事業の一環として、熊本県天草郡有明町大字上津浦字中野河内地先に平成16年に完成した。
そのダム建設の経過は次のとおりである。 昭和63年予備調査を開始、平成元年建設事業着手、平成5年工事用道路着手、平成11年ダム本体着手、平成15年試験湛水開始、平成16年竣工した。
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『上津浦ダム工事誌(CD』 |
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上津浦ダムは次の3つの目的をもっている。 @ 洪水調節 ダム地点の計画高水流量26m3/sのうち、20m3/sの洪水調節を行い、上津浦川沿川流域の水害を防禦する。 A 水道用水 有明町に対し、水道用水として新たに0.0093m3/s(800m3/日)の取水を可能とする。 B 豊かな川の流れを保つ 渇水が続き、河川の流量が減少すると、水質、生態系、景観等に悪影響を及ぼす。これを防ぐためにダムに貯めた水を流し、川の流れを一定にする。
上津浦ダムの諸元は、堤高54m、堤頂長205m、堤体積14.1万m3、総貯水容量46.7万m3、有効貯水容量44万m3、型式は重力式コンクリートダムである。起業者は熊本県、施工者は戸田建設・竹中土木・吉田組建設共同企業体で、事業費は167.8億円を要した。
この上津浦ダムの特徴について、次のことが挙げられる。 石打ダムと同様に、江河内川に取水堰(堤高6m、堤頂長29.1m)を設け、導水トンネル(延長251.3m、R=1.2m)によって、最大14m3/sを上津川のダム貯水池へ導くことにより、洪水調節を図るとともに、新たな水道用水を確保することとなっている。
また、取水範囲内に複数の取水管を設けることにより、任意の取水管から取水が可能となる選択取水設備を設置している。このように適切な水位から取水することによって、水道水質の保全およびダム湖の水質の向上を図っている。
さらに、技術面では、従来の「柱状工法」に比べ省力化と安全性をあわせ持つ「拡張レヤー工法」を採用。この工法は縦継目を設けない連続した複数のブロックを一度に打設し、横継目を埋設型枠、目地切りなどにより造成する面状工法である。
上津浦ダムの完成後、その効果は、上津浦地区49ha(家屋約400戸、人口1,100人、農地約45ha)の洪水被害の軽減、農業用水の確保、さらに近隣地区を含め給水人口約2,800人の水道水の供給となり、地域の人達に貢献している。
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