[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]


◇ 11. 鬼怒川のダムのまとめ

 平成20年12月現在湯西川ダムは建設中であるが、鬼怒川のダムは、大正期以降13基完成している。次のようにまとめてみた。

@ ダムの完成時代区分は、大正期3基、昭和31年〜昭和58年7基、平成期3基となっている。大正期のはじめから、高低差を利用した水力発電用ダムが建設されてきた。しかし、昭和初期の戦争の時代にはダムは1基も造られず、昭和31年以降治水を含む、多目的ダムが完成した。

A ダムの型式は、アースダム1基、重力式コンクリートダム9基、アーチダム2基、ロックフィルダム1基である。

B ダムの用途は、水力発電8基、多目的ダム5基であって、多目的ダム5基のうち3基は水力発電の目的を持っている。この3基のダムを含めると、水力発電用ダムは全体の85%を占める。このことから鬼怒川が水力発電に適した川であると言えるだろう。

C ダムの事業者は、国土交通省(建設省)3基、栃木県3基、東京電力鰍V基である。

D ダムの家屋移転、水没面積は、五十里ダム66戸、面積122.3ha、川俣ダム50戸、面積105ha、川治ダム77戸、面積189ha、三河沢ダム0戸、面積16.7ha、現在建設中の湯西川ダム85戸、面積286haであり、他のダムは未調査であるが、合計278戸、面積719haに及び、移転者、地権者のダム建設に対する協力をダム完成後も忘れてはならない。

E ダムの堤高は、6m〜70m8基、71m〜100m2基、101m〜120m2基、121m〜150m1基である。堤高ベスト3は
   1 川治ダム  140m
   2 川俣ダム  117m
   3 五十里ダム 112m である。

F ダムの総貯水容量は、80万m3〜500万m37基、501万m3〜1,000万m32基、1,001万m3〜5,000万m31基、5,001万m3〜9,000万m33基である。総貯水容量のベスト3は
   1 川俣ダム  8,760万m3
   2 川治ダム  8,300万m3
   3 五十里ダム 5,500万m3 である。

G ダムの堤高、総貯水容量とも、ベスト3には、国土交通省が管理する川俣ダム、川治ダム、五十里ダムが占めており、さらに、鬼怒川上流ダム群連携事業として、五十里ダムと川治ダムをトンネル導水路で結び、相互に水の有効利用を図っている。なお、この三ダムの役割は、下流域の宇都宮市をはじめ、千葉県下流域に対し、水害を減災すると同時に水道用水、農業用水、工業用水を供給し、地域の発展に寄与している。

H 中禅寺湖を水源とした大谷川には、日光第一、二発電所をはじめ、所野第一、二発電所などの発電所が造られ、水利用が行われている。

I 鬼怒川の日光地域は、世界的な文化遺産の宝庫にもかかわらず、古くから土石流の災害を受けてきた。その土砂災害を防ぐために、砂防ダムが多く造られてきた。昭和3年大谷川流域には日向砂防ダムをはじめ69基、鬼怒川本川流域に49基、男鹿川流域に11基に及ぶ。

◇ 12. おわりに

 以上、鬼怒川のダムについて概観してきたが、おわりに鬼怒川・小貝川に係わる水環境の書を挙げてみたい。

・横島広一著『鬼怒川物語(上)』(筑波書林・昭和55年)
・  同  『鬼怒川物語(下)』(筑波書林・昭和56年)
・諏訪三郎著『鬼怒十里』(牧書房・昭和18年)
・学習研究社編・発行『鬼怒川週刊にっぽん川紀行(16)』(平成16年)
・常陽藝文センター編・発行『鬼怒川・小貝川(常陽藝文133)』(平成6年)
・経済審議庁計画部国土調査課編・発行『利根川水系鬼怒川高水表』(昭和27年)
・  同  『利根川水系鬼怒川水位年表』(昭和27年)
・  同  『利根川水系鬼怒川流量年表』(昭和27年)
・鬼怒川工事事務所編・発行『鬼怒川その治水工事』(昭和36年)
・藤原町文化財調査委員会編・発行『五十里湖水』(昭和45年)
・玉城 哲・新井信男著『鬼怒川・小貝川の治水の特性と流域土地改良事業についての研究』(水利科学研究所・昭和35年)
・  同  『鬼怒川水系調査』(水利科学研究所・昭和35年)
・高橋 裕・玉城 哲・新井信男著『鬼怒川水系における治水と農業水利の史的展開』(水利科学研究所・昭和36年)
・鬼怒川水系農業水利調査事業所編・発行『鬼怒川水系農業開発計画調査報告書』(昭和44年)
・鬼怒川南部農業水利事業所編・発行『鬼怒南』(昭和51年)
・農業農村整備情報総合センター編『鬼怒潤郷−鬼怒中央農業水利事業誌』(鬼怒中央農業水利事業所・平成8年)
・市の堀土地改良区編・発行『市の堀−市の堀用水沿革史』(昭和53年)
・江連用水普通水利組合編・発行『江連用水誌前編』(昭和2年)
・  同  『江連用水誌後編』(昭和3年)
・江連用水土地改良区編・発行『江連用水史』(平成6年)
・八間堀川沿岸土地改良区編・発行『八間堀川沿岸土地改良区』(昭和60年)
・坂本平重郎著『伊奈氏と谷原領福岡堰』(福岡堰普通水利組合・昭和26年)
・長命 豊著『飯沼新田開発』(崙書房・昭和53年)
・塚原 敕著・発行『蟠龍斎と大井口用水史料(1)』(平成14年)
・  同  『蟠龍斎と大井口用水史料(2)』(平成17年)
・  同  『蟠龍斎と大井口用水』(平成14年)
・  同  『えづら十跡』(平成19年)
・常陽新聞社編・発行『流域紀行 鬼怒・小貝』(平成4年)
・鬼怒川・小貝川サミット会議編・発行『鬼怒川 小貝川−自然 文化 歴史』(平成5年)
・鬼怒川・小貝川流域を語る会編・著『鬼怒川・小貝川 水と暮らし』(高田印刷・平成14年)
・同編・発行『鬼怒川・小貝川 谷原領物語』(平成17年)
・  同  『鬼怒川・小貝川の舟運再発見』(平成11年)
・下館工事事務所編・発行『空から見た鬼怒川・小貝川』(平成6年)
・  同  『小貝川洪水の記録 昭和61年・台風10号』(昭和62年)
・日本河川開発調査会編・発行『新聞にみる昭和61年8月台風10号水害』(昭和61年)
・国立防災科学技術センター編・発行『1981年8月24日台風15号による小貝川破堤水害調査報告』(昭和58年)
・芦原修二編・著『小貝川河口の闘い』(崙書房・平成7年)
・小貝川の歴史を考える会編・発行『こかい−小貝川とふるさとの結びつき』(昭和61年)
・粟野二男雄著『糸繰川史』(山海堂・昭和49年)
・鬼怒川ダム統合管理事務所編・発行『語り継ぐ五十里ダム−50周年記念』(平成18年)


[前ページ] [目次に戻る]
[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]