これは、本田典光様による投稿です。平成23年度の第22回北陸地方ダム等管理フォローアップ委員会資料「三国川ダム定期報告書(案)」を参考に作成されており、図や写真も特に断りのない限り同資料によっています。
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平成23年7月26日から30日にかけて、新潟県中越地方と福島県会津地方を中心に未曾有の豪雨となり、各地で河川の氾濫が発生しました。信濃川の支川である魚野川や三国川でも記録的な大出水となりましたが、三国川ダムでは「ただし書き操作」を含む洪水調節をおこなって三国川の河川氾濫の防止、魚野川の被害軽減に寄与しました。
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1.平成23年7月豪雨の概要
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平成23年7月26日から30日にかけて新潟県中越地方と福島県会津地方は、記録的な大雨となりました。原因は、7月26日より朝鮮半島から北陸地方を通って関東の東に停滞していた前線に向かい南から非常に湿った空気が流れ込み、大気の状態が不安定となったことによるものです。特に27日から30日にかけて、信濃川・阿賀野川流域では、狭い範囲で雨域が移動・停滞を繰り返し長時間にわたる豪雨となりました。 新潟県十日町地域振興局雨量観測所では、新潟県内における日最大1時間降水量値を更新する120ミリを観測するなど、局地的に1時間100ミリを超える猛烈な雨となり、27日0時から30日24時までの降水量は、新潟県加茂市宮寄上観測所で626.5ミリとなりました。
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2.三国川ダムの洪水調節
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三国川ダム流域の出水は大規模な二山洪水となりました。ダムへの最大流入量は第一波洪水の639.5m3/s(7月28日21時00分)で、この流入量はダムの管理開始後の最大流入量を更新しました。(今までの管理開始後の最大流入量は、平成17年6月28日の524.8m3/s)また、その時の放流量は78.1m3/sでした。 第一波洪水が収束した後、再び流域の降雨が強くなり第二波の洪水が発生しました。第二波の洪水は、継続時間が長い降雨によって、流入量が多くなり貯水位が急激に上昇し、第一波洪水の貯留量を夏期制限まで水位を落としきっていなかったこともあって、三国川ダムはサーチャージ水位に到達し「ただし書き操作」を実施しました。貯水位の最高水位は、サーチャージ水位(432.0m)を95cm上回る432.95m(7月30日4時50分)でした。
【ダム地点におけるデータ】
・最大流入量 639.5m3/s(7月28日21時00分) ・最大流入量時の放流量 78.1m3/s ・最大流入量時の調節量 561.4m3/s
・ただし書き操作時間 10時間30分(30日3時30分〜14時) ・ただし書き操作時最高水位 432.95m(7月30日4時50分) ・ただし書き操作時最大流入量 527.44m3/s(7月30日1時) ・ただし書き操作時最大放流量 235.89m3/s(7月30日4時50分)
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3.「ただし書き操作」について
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ダムの洪水調節操作は、計画に基づいて100年に一回起こる確率以下の洪水を調節できるよう操作方法が定められています。 しかし、洪水調節計画を上回る洪水(100年に一回起こる確率以上の大洪水)の発生の可能性も否定できないため、洪水調節計画を上回る洪水が発生した時の操作方法を「ただし書き操作」として定めています。「ただし書き操作」では、流入量の増加に応じて放流量も増加し、想定される放流量以上の放流を行うことも考えられるため、「ただし書き操作」を実施する場合には、定められた関係機関、下流自治体等に通知することとなっています。なお、「ただし書き操作」中の洪水調節では、放流量は絶えず流入量を下回る操作を行うこととなっています。 (以上、テーマページ「洪水被害軽減に役立った二風谷ダム」の「ただし書き操作とは」を参考に作成) 今回の洪水のピーク流量は、三国川ダムの計画高水流量(1,100m3/s)には、達していませんでしたが、二山洪水だったことと洪水継続時間が長かったことで、ダム貯留量が大幅に増え「ただし書き操作」に至ったものです。
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4.三国川ダムの下流河道への効果
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30日4時50分に記録した「ただし書き操作」時の最大放流量(235.89m3/s)は、管理開始後の最大放流量でした。この時、ダム直下付近の三国川の河道(掘込河道)は、満杯に近い状態でしたが流水は越水せずに流下しました。これ以上、放流量が増えれば三国川沿川で越水による被害が発生する可能性もありました。 しかし、ダムが無い場合には、28日19時の流量327.84m3/sで確実に越水による被害が発生し、21時の流量639.52m3/sでは、三国川沿川は大災害になったと想定できます。また、29日23時から30日5時までの7時間にわたり、250m3/s以上の流量が継続することとなり、28日の被害に加えて29日に再度の越水が予想され、三国川の沿川での被害が拡大したと考えられます。
下の図は、ダム下流約2km地点にある当ノ坂水位観測所でのダムが無い場合の試算水位と実際の水位を比較した図です。観測所地点ではダムが無い場合でも氾濫はしませんがダムによる洪水調節効果は大きいものがあることが確認できます。ダム下流の三国川では、三国川ダムの洪水調節によって大幅な水位低下があったことがわかります。
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5.魚野川への効果
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魚野川にある小出水位観測所では、計画高水位を超える洪水になると試算されましたが、三国川ダムが洪水調節を実施した結果、最高水位を計画高水位と同等程度に抑えることができました。三国川ダムが無かった場合には、魚野川の水位は計画高水位を上回り、越水が発生した箇所での被害の拡大、越水危険箇所での新たな越水の発生や洪水が計画高水位を越えることで堤防に重大な問題が発生する可能性があったとも考えられます。三国川ダムは、魚野川の治水に対しても効果を発揮したといえます。
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6.地元の声など
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三国川・魚野川の沿川自治体からは、三国川ダムが洪水調節を実施し、三国川、魚野川の水位を低下させたことを評価してもらいました。 また、三国川ダム下流域の住民の方々から「三国川の大災害だった昭和44年の洪水より大雨だったが、三国川ダムが完成していたおかげで被害がなかった。」という声がありました。 その他、ダム建設工事中に施工し約20年経過しているロック材原石山跡地の長大法面や土捨場の法面では、今回の豪雨で異常はみられませんでした。
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[関連ダム]
三国川ダム
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(2013年4月作成)
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