ダム工学会でお世話になっている石田哲也先生から、コンクリートのまんが本が出るというお話を伺ったので、ちょっと驚きつつさっそくご紹介。版元は、お堅いイメージのある理工系の専門出版社・オーム社です。こちらでは2004年から力学や微分積分といったテーマで「マンガでわかる」シリーズを刊行しているとのこと。ジャパニーズ・まんが本は、世界に広がって評価を受けていると思っていたら、国内ではしっかりと理工系の専門分野、それも東大赤門付近でも広まっていたのだ。文章で説明されても、なかなかイメージが湧かず理解するのが難しいことでも、絵をみせながら解説されるとなるほどよく判る。ということで、どうしてこうなったのか、石田先生との一問一答を交えて皆さまにご案内します。
中野: オーム社の「マンガでわかるシリーズ」で出版という企画になったきっかけ、経緯を教えてください。先方からのアプローチですか、どなたかのご紹介ですか?
石田: きっかけは、編集の方から飛び込みでメールがきました。丁度一年くらい前の9月の頭です。面識もない方なので、普通でしたら断るところなのですが、コンクリートというものが一般の人にとって、もう少しなじみ深いものになればと思って考えたのですが、結果的に今回協力してみようと思いました。
中野: 先生は、オーム社の理工系向きの「マンガでわかるシリーズ」があったことをご存知でしたか?
石田: そのようなシリーズがあることを全く知りませんでした。ただ自分が子供の頃、学研まんが「ひみつシリーズ」や、「まんが日本の歴史」などを通じて、科学や歴史に興味を持つようになったので、マンガでコンクリートを語るというのは面白そうだと思い、やりがいのあることだと感じました。
中野: 編集者、漫画家さんとの仕事で印象に残ったことはありますか。執筆作業を進めてみて、どう思われましたか?
石田: 専門的なことを伝える上では、色々と工夫をしましたが、それでもなかなか難しさはありました。自分のフィールド、分野の中ではごく普通に思えることが、外部の人からみたらそうではない、という当たり前のことを多くの点で気付かせてくれる作業でした。実際、絵にするとどうなるかと頭に思い描きながら解説文を作成するというのは、今までと違って、わかりやすく説明するということのトレーニングになり良い経験が得られたと思います。
中野: ダム工学会の若手の会でも、若者の理工系離れ、土木離れという面で何か良いアイデアはないかと話し合ってきましたが、こういう方向も一つの解決策のように思います。うまく手ごたえがあれば、また別のテーマでやってみたいですか?
石田: 今回、実際にやってみて、意外にどのようなテーマでも、マンガで分かりやすく伝えるというのは可能だと思いました。土木分野で取り扱う多くの内容は、対象とする時間や空間のスケールが大きく、ともすると一般の方にイメージしにくいことも多いのですが、ビジュアルに訴えながら分かりやすく説明することで、多くの人々にその意義を伝えることができるのではないかと考えています。
中野: この本でコンクリートは人のために、ということが理解できそうですね。
★建築系や土木系でコンクリートをはじめて学ぶ人も、わかりやすく基礎から学んでいけます。コンクリートの歴史から作り方、身近で代表的なコ ンクリート建造物などを紹介しつつ、マンガでわかりやすく解説します。またコンクリートのひび割れや劣化はなぜ起こるのかについて、その原因とメカニズムをマンガはもちろん、豊富な写真を使って詳しく解説します。
★このような方におすすめ 土木・建築系の学生、土木に関連する企業にお勤めの方、コンクリート構造物および土木工事の発注に携わる方々など
・著者:石田 哲也 著 はるお 作画 トレンド・プロ 制作 ・定価:2100円(本体2000円+税) ・B5変判 200頁 ・ISBN 978-4-274-06860-7 ・発売日:2011/09/23
〔著者略歴〕 石田哲也(いしだてつや) 博士(工学)(東京大学) 1971年 山梨県山梨市生まれ 1994年 東京大学工学部土木工学科卒業 1996年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻修士課程修了 1999年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻博士課程修了 東京大学工学系研究科社会基盤学専攻助手、講師、助教授を経て、現在、同専攻准教授。専門は、コンクリート工学、地圏環境工学、多孔体熱力学。
〔主な受賞歴〕 土木学会論文賞、土木学会出版文化賞、土木学会吉田賞、日本コンクリート工学協会論文賞、前田工学賞、fib Awards、IABSE Prizeなど
〔主な著書〕 Multi-Scale Modeling of Structural Concrete,K.Maekawa. T.Ishida and T.Kishi,2008.Taylor and Francis.アーバンストックの持続再生、藤野陽三・野口貴文編著、2007、技法堂出版(11章分担執筆)
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