《このごろ》
DVD版「黒部の太陽」が届いた

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 待望のDVD版「黒部の太陽」が届きました。ネットで予約注文をしたのは記憶の彼方のことでしたが、発売予定日の翌日早々に到着しました。これからは自宅で見たい時にいつでもこの映画を見ることができます。(もっとも、自宅では32インチの小さな画面となってしまいますが。)
 永年秘蔵とされてきたこのフィルムは、東日本大震災の復興支援を目的とした「全国縦断上映会」という形で、昨年一般公開されました。また、今年になって東銀座の東劇でも特別公開が行われました。私も、「裕次郎の夢〜全国縦断チャリティイ上映会」で5回、東劇で2回この映画を大スクリーンで鑑賞する機会に恵まれました。


東劇(撮影場所:東京都中央区)

1.裕次郎の夢〜全国縦断チャリティイ上映会

 昨年のチャリティ上映会では、観客が決まって歓声を上げるシーンがありました。

@縁談で岩岡(石原裕次郎)が勤務先の設計事務所から電話で呼び出されるシーン
 「おやじさんが、倒れた…、もう間に合わないかもしれない…、すぐに来てくれ!」
 観客:失笑
 この場面は、いわゆる“嘘も方便”でした。

A仙人谷ダム堤頂で佐藤工業の社員父子が遭遇するシーン
 観客:ざわつき
このシーンについては、仙人谷ダムが撮影の舞台になったことよりも、宇野重吉と寺尾聰の登場に一般の観客は驚いて声を上げたようです。ダムに詳しい方は、恐らく仙人谷ダムが大画面に映し出されたことに感動して思わず声が出たはずです。


仙人谷ダム堤頂部(撮影:だい)

Bトンネル貫通式の鏡割りで、作業員が樽酒を保安帽で汲み出すシーン
 観客:笑い
 保安帽で多量の日本酒を飲むことは、衛生・健康上問題があります。あくまでもトンネルが貫通した喜びを示す一つの表現と考えるべきです。また、このような真似はしないでほしいものです。

2.東劇の特別公開

 「裕次郎の夢〜全国縦断チャリティイ上映会」と東劇の「特別公開」について、具体的な違いはよくわかりませんでしたが、両者とも前後編ノーカット上映という点では共通していました。

 東劇での観客は、押し黙ったように静かに映画を鑑賞しています。恐らくは大スクリーンでの「黒部の太陽」の見納めとなるかもしれない上映会を堪能していたようです。

 映画「黒部の太陽」では、宇野重吉・寺尾聰という実の親子である名優が、ここでは脇役的存在ながら影の主役として森という佐藤工業社員父子の設定を演じています。映画では、事故に遭った息子・賢一(寺尾聰)の生死が必ずしもはっきりとは描かれてはおりません。しかし、主役の岩岡(石原裕次郎)の父親が病死したという展開と対比すると演出的には、森(宇野重吉)の息子は殉職したものと考えざるをえません。
 黒部ダム完成後に森夫妻がダム天端に立ち、慰霊碑に黙祷しています。このことからも、瀕死の重傷を負って診療室に収容された賢一は、急を知らされて駆けつけた父親に看取られて息を引き取ったということになります。

 原作「黒部の太陽」をあたってみると、故山本登氏(佐藤工業社員)が水路トンネル内で測量従事中に軌道を走行してきたバッテリー・カーに過ってはねられ殉職したという話があります。トンネルの精密測量のためペアを組んで作業中、相方が山本氏に懐中電灯で合図を送りました。この懐中電灯の光を山本氏の後方で待機していた運転士が発車オーライのサインと誤認したため事故に至ったということです。原作の記述によれば、この事故は昭和32年2月24日深夜に起きたことだそうです。
 森賢一(寺尾聰)の殉職は、この話をモデルに脚本化されたものだと思います。


尊きみはしらに捧ぐ(黒部ダム慰霊碑)

 東劇では、隣に座っていた方が、寺尾聰がバッテリー・カーと接触する数秒前に静かに両手で目を覆うということがありました。決して悲惨な映像ではありませんが、この方はこのシーンを直視することを避けたかったのでしょう。
 皆々が、沈黙のまま大スクリーンにのみ込まれていました。ほとんどの観客がストーリーを熟知しているリピーターのようでした。

 なお映画では、北川(三船敏郎)が関電大町トンネル内でトロリーバスを『これより破砕帯』付近で途中下車し、当時を回想するシーンがあります。かつての事情はわかりませんが、現在ではトロリーバスの運転士に申し出て途中下車することは許可されないはずです。トロリーバスは、法律的には鉄道の一形態とされるため駅や停留場以外での乗降は非常時を除いて不可能だと思います。

関電トロリーバス(撮影場所:長野県大町市、扇沢駅)


3.東日本大震災と「黒部の太陽」

 東日本大震災、それに続く原発事故、計画停電、その影響による電車の間引き運転・運休。


計画停電によるコンビニ店舗への影響(撮影場所:栃木県小山市内)

 わたくし個人的には、電車が動かないのであればレンタカーを利用すればよいと考え、余震の続く都内の駅でレンタカーの利用を申し出ました。ところがレンタカーを借りることができませんでした。駐車場には何台も「わ・ナンバー」の自動車が置いてあるにもかかわらず、貸すことはできないということです。その理由は、貸したくてもガソリンが無いからでした。片っ端からレンタカー会社に電話した挙句、栃木県宇都宮市で「ガソリン半タンで目安として300キロ弱くらいまで走行可能な車でもよかったらお貸しできる」という車をようやく見つけたことを覚えています。


ガソリン不足(撮影場所:栃木県足利市付近)

 電力の安定供給の重要さを忘れてはなりません。東京電力の計画停電は、遠い過去の出来事ではありません。


計画停電、信号機使用不能のため警察官による交通整理中(撮影場所:栃木県小山市)

 震災からの復興という意味で現在の日本は、いまだに『大破砕帯』の最中です。ただし、破砕帯を抜け出す方向に毎日少しずつ進んでいることもまた事実です。
 この春、進学や就職・人事異動など新たな局面で困難を迎える人もいるかと思います。恋人と別れた。友人との人間関係で悩んだ。仕事上のトラブルを抱えた。挫折を味わった…等々。
 「大変だ」「無理だ」「できない」という言葉を口にするよりも、まずは冷静に現状を分析しましょう。そして対策を考えましょう。また、努力を惜しんではなりません。創意と工夫も必要です。自分で考えてもわからなければ、周りの人に教えを乞うべきです。「絶望」という言葉は逃げ道としては使ってなりません。あなたに知恵があれば破砕帯を克服することは時間の問題です。
 一人でも多くの方が「黒部の太陽」に勇気づけられ、自分自身に潜む『破砕帯』を突破して欲しい…、石原裕次郎が身を挺して示唆したものがこの映画であると思います。


DVD版「黒部の太陽」

 黒部ダム竣工から50年。知恵と技術と資金を集めて完成したこのダムは、現在でも日本一の堤高を誇っています。このダムが電力の安定供給の一端を担っていることは、改めて言うまでのないことです。

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(H25.3.25、安部塁)
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 (安部 塁)
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