11. 庄川のダム建設のまとめ
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昭和初期から平成17年まで、庄川におけるダム建設は17基に及ぶが、次のようにまとめてみた。
・庄川水系縦断図の示すように、富山湾河口から約 110kmの距離間、標高約1200mにおいて、階段状に17基のダムが築造された。ダムサイト地点の所在は、岐阜県側7基、富山県側9基、両県境1基となっている。
・ダムの用途は、水力発電用ダムが14基、水力発電を含む多目的ダム3基であり、庄川はまさしく 100%水力発電用のダムであり、庄川が発電に適した河川といえる。17基の合計最大出力は96万1700KWで、最大出力ベスト3は、 ・御母衣ダム 21万5000KW ・祖山ダム 12万2000KW ・椿原ダム 10万1800KW である。
・ダム型式は、庄川の上流域ではロックフィルダム3基、中流域では重力式コンクリートダム13基、重力式コンクリートダム・フィルダム複合ダム1基となっており、庄川上流域の地質、岩盤の危弱性であることがわかる。
・ダムの堤高は、15m〜50m9基、51m〜 100m8基、 101m〜 150m2基で、堤高ベスト3は、 ・御母衣ダム 131m ・境川ダム 115m ・大白川 95m である。
・ダムの総貯水容量は 101万m3以下3基、 101万m3〜1000万m36基、1001万m3〜2000万m32基、2001万m3〜3000万m31基、3001万m3〜3億7000万m35基で、総貯水容量ベスト3は、 ・御母衣ダム 3億7000万m3 ・境川ダム 5990万m3 ・小牧ダム 3795.7万m3 である。
・ダム事業者は、関西電力(株)10基、電源開発(株)4基、富山県3基で、昭和初期から電力会社のダム開発が進み、戦後では電源開発(株)、富山県の事業者も加わった。
・ダムの堆砂率をみてみると、 ・利賀ダム 73.5% (昭和18年完成) ・小原ダム 62.3% (昭和17年完成) ・祖山ダム 54.2% (昭和5年完成) ・利賀川ダム 46.9% (昭和49年完成) ・成出ダム 41.9% (昭和26年完成) の順で、小牧ダム24.3%(昭和5年完成)、御母衣ダム 2.9%(昭和36年完成)となっている。(「電気土木」('04.9月号No313))
・ダム開発によって、木材の運送は、川下げから鉄道や道路による陸送に変遷し、交通の利便性が図られ、庄川における上、中、下流地域の人的、物的交流が盛んとなった。その反面ダム水没に伴う離村が増えた。
・話題となった小牧ダム(庄川流木事件)、御母衣ダム(死守会のダム反対運動)の建設はその当時、東洋一のダムを誇り、我が国土木史上、技術的に特筆するダム造りとなった。
・ダム開発は、関西地方、北陸地方に電力エネルギーが供給され、都市化の発展につながっていく。
・庄川合口ダムの建設によって、農業用水の近代化が図られ、戦後、農業用水合理化事業のせんべい性となった。
・ダム開発は、庄川における鮎、鱒等の魚族を減少させ、水環境の悪化を招いた。今後の水環境の改善を図る必要性に問われている。
おわりに庄川、常願寺川等に関する書についていくつか掲げる。
・小寺廉吉著『庄川峡の変貌』(ミネルヴァ書房・昭和38年) ・吉村朝之著『源流を訪ねて(V)−庄川水系』(岐阜新聞社・平成15年) ・学習研究社編・発行『庄川(にっぽん週刊川紀行25号)』(平成16年) ・建設省富山工事事務所編・発行『庄川沿革誌(資料編)』(昭和50年) ・庄川合口50年誌刊行会編・発行『庄川合口50年誌』(平成2年) ・中谷福次著『庄川水系の電源開発』(誠文社・昭和61年) ・高瀬信隆著・発行『庄川とその流域史』(昭和59年) ・砺波市教員センター編・発行『庄川の自然』(昭和60年) ・木下青嶂著『電力争議と庄川事件』(木材新聞社・昭和29年) ・小原喜三郎著『南北分水嶺を越えて 付庄川問題の真相』(千倉書房・昭和7年) ・神戸淳吉著・清水勝絵『ふるさとのさくら−御母衣ダムから桜を守った話(児童書)』(岩崎書店・昭和52年) ・佐藤良二写真集『名金線に夢を追う』(岐阜新聞社・平成14年) ・電源開発(株)編・発行『発電30年史』(昭和59年) ・水野清著『電源開発物語』(時評社・平成17年) ・岐阜経済大学地域経済研究所編・発行『東海地方の親水・治水・利水( 「地域経済」 第12集)』(平成4年) ・芹谷野用水普通水利組合編・発行『芹谷野用水誌』(昭和25年) ・二万石用水史編集委員会編『二万石用水史』(二万石用水土地改良区・昭和59年) ・鷹栖口用水土地改良区編・発行『鷹栖口用水史』(昭和61年) ・常東用水沿革史編纂委員会編・発行『常東用水沿革史』(昭和51年) ・常西用水土地改良区編・発行『常西合口用水史』(昭和38年) ・ 同 『常西合口百年史』(平成4年) ・建設省北陸地方建設局『常願寺川沿革誌』(昭和37年) ・北陸農政局氷見農業水利事業所編・発行『常願寺川工事誌』(昭和55年) ・農林省農地局編・発行『常願寺川水系農業水利実態調査』(昭和37年) ・建設省立山砂防工事事務所編・発行『常願寺川の歴史を訪ねて(年表)』(昭和52年) ・ 同 『常願寺川直轄砂防への道』(昭和56年)
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