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7.大森川ダム(吉野川水系大森川)の建設


(撮影:夜雀)

 大森川は四国の中央を、やや東西に流れる吉野川の最上流にある一支流で石槌山(標高1981m)の連峯手箱山にその源を発し、高知県土佐郡本川村長浜において本流に合流する流路延長17.5km、流域面積 44.10km2の河川である。

 吉野川の上流域は落差と降雨に恵まれ四国での最大の電源地帯であり、既設発電所は本流と分水系を合して7カ所を数え、その最大発電力は76,400KWに達している。大森川の開発計画は昭和24年頃より立案され、工事は翌昭和32年の早春より着工し、34年7月貯水を開始し、9月末をもって完了した。
 このダム工事記録については、四国電力(株)編・発行『大森川発電所工事誌』(昭和35年)が発行されている。

 ダムの位置は高知県吾川郡いの町大字寺川字奥南で、取水量最大12m3/s、常時1.51m3/s、有効落差最大時 118m、最大出力 11800KWとなっている。 大森川のダムの諸元は、高さ73.2m、堤頂長 191m、堤体積14.6万m3、有効貯水容量1732万m3、総貯水容量1912万m3で、型式は中空重力式越流コンクリートダムである。起業者は四国電力(株)、施工者は(株)間組である。

 大森川ダムは、最初アーチダムの計画であったが、地質調査の結果、基礎岩盤が余り強固でなくアーチには不適当なことが判明し、アーチダムは断念せざるを得なかった。重力ダムとすると経済性が希薄となることから、当時大井川の井川ダム(中部電力(株)、昭和32年完成)が中空重力式を計画されており、これを検討した結果、大森川ダムはこの型式によるダムで実施可能がわかり決定した経過がある。


『大森川発電所工事誌』
 また、四国電力(株)社長中川以良は、この『工事誌』で次のように述べている。

【大森川発電所は中空重力ダムとわが国最初の可逆式ポンプ水車を有する揚水式発電所としてその工事は誠に画期的なものであった。
 この開発方式を採用するに当っては幾多の問題があったが、幸いにも関係各位の御努力によってここに実現をみたものである。特に通商産業省、建設省、高知県、徳島県等の関係諸官庁、ならびに京都大学、電力中央研究所の御努力により「大森川ホローグラビティーダム委員会」が組織され、ダム建設に多大の成果をおさめ得たことに対し深甚の敬意を表すと共に、工事施工に直接あたられた業者各位の終始一貫した御努力に対し心から敬意を表するものである。
 当社では、本工事の貴重な体験を生かして更に穴内川発電所の開発にも揚水式およびホローグラビディーダムを計画し、既に準備工事に着手しているが将来全国的にも開発が予想される他の工事に本誌が幾分でも役立てば望外の喜びである。】

 わが国初の中空重力式コンクリートダム井川ダムが昭和32年に完成し、さらにその後大森川ダム(34年)、木地山ダム(35年)、畑灘第1ダム(36年)、畑灘第2ダム(37年)、穴内川ダム(39年)、横山ダム(39年)が施工された。このようにダム技術は、他のダムに多大な影響を及ぼすこととなる。


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