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19.青森県ダムのまとめ

 以上、青森県のダムは、昭和以降平成18年にかけて34基の建設がみられ、維持管理段階に入っているが、次のように纏めてみた。

1) ダム築造年区分は、昭和初期5基(14.7%) 、昭和中期5基(14.7%)、昭和後期15基(44.1%) 、平成期9基(26.5%)で、昭和後期(昭和41年〜63年)が大半を占めている。現在、大和沢ダム(岩木川)、津軽ダム(岩木川)、駒込ダム(堤川)、奥戸ダム(奥戸川)が建設中である。

2) ダムの型式は、アース式11基(32.3%)、重力式コンクリートダム13基(38.2%)、ロックフィルダム9基(26.5%)、アスファルトフィシングダム1基(3%)である。アース式ダムは大穴ダム(昭和8年完成)、重力式コンクリートダムはーの渡ダム(昭和6年完成)、ロックフィルダムは花木ダム(昭和47年完成)、アスファルトフィシングダムは二の倉ダム(昭和45年完成)が各々最初である。

3) ダムの用途別は農業用ダム11基(32.3%)、発電用ダム2基(6%)、治水(防災)ダム8基(23.5%)、多目的ダム13基(38.2%)となっている。農業用は大穴ダム(昭和8年)、発電用ーの渡ダム(昭和6年)、治水・防災は四和ダム(昭和34年)、多目的は目屋ダム(昭和35年)、水道専用ダムはないが、水道を含む多目的ダムは飯詰ダム(昭和47年)が各々最初である。

4) 青森県は、工業用水を目的としたダムはみうけられない。工業用水は地下水や水道用水で直接供給されているようだ。また、多目的ダムには、農業用水と維持用水を目的としたダムが多く含まれ、農業専用ダム(11基)を加えると大半を占めてくる。 このようにダムの目的でみる限り農業県といえる。

5) ダムの堤高別は、9m〜30m13基(38.2%)、31m〜50m10基(29.4%)、51m〜70m9基(26.4%)、71m〜100m2基(6%)であり、ベスト3は、
  ・浅瀬石川ダム 91m
  ・二庄内ダム  86m
  ・下湯ダム   70m
である。

6) ダムの総貯水容量別は、100万m3以下13基(38.2%)、101万m3〜3000万m35基(14.6%)、3001万m3〜5000万m32基(6%)、5001万m3〜5500万m31基(3%)であり、ベスト3は、
  ・浅瀬石川ダム 5310万m3
  ・目屋ダム   3900万m3
  ・世増ダム   3650万m3
である。

7) ダムの事業者別は、青森県20基(58.8%)、農林水産省6基(17.5%)、土地改良区4基(11.7%)、国土交通省2基(6%)、東北電力2基(6%)となっており、青森県施工のダムが6割を占める。

8) ダムの堆砂率(総貯水容量の内)をみてみると、平成15年12月31日現在目屋ダム8.1%、川内ダム1.6%、下湯ダム1.6%となっている。(「電力土木」(’04.9月号))

9) 平成17年ダム湖百選に下北半島の川内ダムが選ばれた。川内ダムは本州の最北端に位置するが、奥戸ダムが完成すれば、その位置を譲ることになる。

10) 沖浦ダム(昭和20年完成)は、その下流3.2kmの地点に浅瀬石川ダム(昭和63年完成)によって水没したが、砂防ダムの機能を持つように改修工事がなされ、今でもその役割を果たしている。

11) 堤高58mの目屋ダム(昭和35年完成)は、その下流60m地点に、現在、堤高97.5mの津軽ダムが施工中であり、津軽ダムの完成によって目屋ダムのゲート等は撤去され、ダムサイトそのものは残るが水没することとなる。

12) 移転家屋をみてみると、小泊ダムは、青森県初の小規模生活ダムで移転世帯はなかった。川内ダムの移転世帯数36戸は、満州など移住から帰国。野平地区の開拓に苦労を重ね、さらにダムによって移転せざるを余儀なくされた経過がある。

13) 水没戸数、水没農地の多い浅瀬石川ダム(水没戸数201戸、水没農地59ha)、世増ダム(71戸、59ha)は、水源地域対策特別措置法に基づく指定ダムを受け、黒石市、平川市、八戸市、軽米町(岩手県)において、道路等の生活社会基盤が整備された。

14) 約1万3000年前、「十和田カルデラ」を作った大噴火で火砕流が四方に広がり、この影響を受けるなど、ダムサイトの脆弱な地質に対し、早瀬野ダムの水質問題、二庄内ダム、浪岡ダム、下湯ダム、川内ダムにおける複雑な基礎処理工、地震対策工などがなされ、その困難性を高度な技術力をもって克服したダム造りとなった。 また、浅虫ダムは、洪水量の全量を洪水吐トンネルによって排水するというユニークなダム造りがなされた。

15) 早瀬野ダム、浅瀬石川ダム、浪岡ダム、世増ダムの4つのダムは、各々に農業用水事業、広域水道事業、電力事業の関連事業が行われ、ダムで開発された水は、それらの地域の開発に大いに貢献している。

16) 三村知事は公共事業の施行にあたって、「環境公共の理念を持つ」ことを提唱されている。この理念は全国に先駆けて平成13年12月21日に、「青森県ふるさとの森と川と海の保全条例及び創造に関する条例」が制定されているように、青森県は、森と川と海と一体となった生態系や自然環境保全を重視した県土創りが行われている。


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