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6.山倉ダム(養老川)の建設

 山倉ダムは、昭和39年五井市原地区工業用水道事業の水源施設として養老川水系山倉川の千葉県市原市山倉地先に完成した。工業用水専用のダムであり、豊水時及びかんがい期に養老川からのポンプアップによって貯留することにより用水を確保している。

 型式はアースフィルダムで第1堰堤堤高23.0m、堤体積53万m3、第2堰堤の堤高20.5m、堤体積16万m3、有効貯水容量450万m3、総貯水容量510万m3である。起業者は千葉県企業庁、施工者は鹿島建設である。

 山倉ダム周辺の地形は、東京湾の東側沿岸に広がる洪積台地と沖積低地に区分され、山倉ダムは市原台地とよばれる洪積台地の西端部に位置する。市原台地の西端部に位置する市原台地の西側は養老川及びその支川により開析が進み、樹枝状に細長く谷津を形成する沖積台地が入り込んでいる。第1堰堤は2つの沖積低地が合流する地点に設けられ、第2堰堤は左岸側の沖積低地の上流1q余の鞍部に位置する。ダムサイト周辺の洪積台地はTP.40m〜TP.60mのなだらかな丘陵地であり、沖積低地の高さはTP.20m〜TP.25mである。

 また、山倉ダムの地質は、第四紀更新世中期〜後期の下総層群姉崎層、及び低地部を覆う完新世の堆積物と尾根部を覆う関東ロームから構成されている。

 平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震を契機として、山倉ダムがすでに完成から40年近く経過しており、さらに下流域の都市化などの変貌していることから耐震性能の見直しを行い、その結果、耐震性強化改修工事を行うこととなった。

 その工事について、千葉県企業庁編・発行「山倉ダム耐震性強化工事工事誌」(平成18年)に、次のように述べてある。


「山倉ダム耐震性強化工事工事誌」
 耐震性強化工事、試験施工結果に基づく工法の検討は、「山倉ダム改修実施設計調査委員会」(委員長 国生 剛治中央大学理工学教授)に委託された。
 改修工法の設計は、現行のダム設計基準に従い震度法による安定計算にて安全率1.2以上を確保。基礎砂層の液状化に対しては兵庫県南部地震の結果も考慮された道路橋示方書「耐震設計編」(H8年)に示す方法にて、所要の安全性を確保することを基本とした。
 改修工法は、地区外からの盛土材料の搬入と捨て土の搬出を最小限とし、周辺地域の環境への負荷を低減できるよう、深層混合処理、SMW(ソィルミキシングウォール)とGCP(グラベルコンパクションパイル)による地盤改良と押さえ盛土の併用工法を採用した。この工法はアースフィルダムの改修工事ではわが国初の試みであった。

 工事は平成13年4月着手し、平成15年3月深層混合処理工、SMW工及びGCP工が完了。平成15年11月末に押さえ盛土工を完了し、平成16年2月〜平成17年3月に試験湛水を実施した。

 第1堰堤上流側対策工としてSMW改良部の施工ヤード造成に伴う斜面の肩の杭間施工継目部にクラックが発生した。覆土によるアースブランケットの設置、クラック上端のカットオフ、グラウチングの補修工法が行われた。

 環境対策として、工事により落水した場合、周辺の自然環境に与える影響が大きいため、工事中は左岸側谷津の推移をこも池の高さと同程度(TP.33m)に保つよう、第2堰堤上流側に鋼矢板2重締め切り堤を設けるとともに、第1堰堤法先周りには仮締め切り堤を設けて貯水位をTP.28mで保持した。

 特定種は鳥類29種、陸上昆虫類が16種、底生動物マツカサガイやイシガイが確認された。またオオタカの営巣が発見されたことから営巣が終わる期間まで工事を中止し、モニタリングと猛禽類詳細調査を実施した経過がある。

 なお、施工者は第1堰堤は鹿島・東亜特定建設工事共同企業体、第2堰堤は西松建設、取水塔は飛島建設である。


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