5.千葉県のダム開発史 |
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千葉県では、明治以降ダムは53基の築造がみられる。このダム開発史について、千葉県総合企画部水政課編・発行「水のはなし 2007」(平成19年)、石井進・宇野俊一編「千葉県の歴史」(山川出版社・平成12年)、千葉市総務局編・発行「写真集 千葉市のあゆみ」(平成13年)、日本ダム協会編・発行「ダム年鑑2007」(平成19年)、各々ダムのパンフレット等により、
(1)明治期 (明治元年〜44年) (2)大正期 (大正元年〜14年) (3)昭和初期(昭和元年〜20年) (4)昭和中期(昭和21年〜40年) (5)昭和後期(昭和41年〜63年) (6)平成期 (平成元年〜17年)
の6期に分けて追ってみたい。
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「水のはなし 2007」 |
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(1)明治期(明治元年〜44年)
明治 6年 木更津・印旛両県を廃し、千葉県を設置 8年 新治県を廃し、千葉県に編入 21年 井 堤上(夷隅川)の竣工(杉戸土地改良区) E A 16m 6万m3 23年 利根運河完成 24年 利根川出水、十六島など被害 27年 日清戦争(〜28年) 総武鉄道(株)、市川〜佐倉間開通 29年 利根川大氾濫 房総鉄道(株)、蘇我〜大網間開通 34年 成田鉄道、成田〜我孫子間開通 35年 暴風雨 死傷者348人 37年 日露戦争(〜38年) 38年 千葉県落花生同業組合結成 40年 利根川大洪水 43年 利根川・江戸川大洪水 寒川港改修工事、出洲を埋立
明治期はアース式ダムの農業用1基が築造された。なお、平成元年度における千葉県の溜池は1220カ所となっている。(内田和子著「日本のため池」)
(2)大正期(大正元年〜14年)
大正 元年 国鉄木更津線 木更津まで開通 2年 国鉄房総線 大原〜勝浦間開通 4年 真間川、台風被害 死傷者278人 6年 暴風雨と高潮、浦安、市川、船橋などに被害 9年 第1回国勢調査実施 千葉県人口133.6万人 10年 京成電気軌道、船橋〜千葉〜押上間開通 横利根閘門竣工、小野川水門竣工 11年 山田溜池(温石川)の竣工(南三原土地改良区) E A 16m 26.2万m3 千葉港、指定港となる 印旛水門竣工 12年 関東大震災発生 安房・君津・市原郡等被害、死者1300余人 13年 渇水、稲作に被害 14年 五郎津ダム(養老川)の完成(白鳥用水組合) E A 17m 7.6万m3
大正期は2基のダム築造がみられ、いずれもアース式で目的は農業用水で、まだ千葉県は農業県であった。
(3)昭和初期(昭和元年〜20年)
昭和 元年 内務省土木会議、東京湾臨海工業地帯の計画策定 2年 川谷堰(加茂川)の竣工(主基土地改良区) E A 15.2m 8.2万m3 3年 広田堰(平久里川)の竣工(三芳村国府第一土地改良区) E A 16.7m 30.8万m3 小湊鉄道全通 4年 房総環状線全通 5年 南堰(加茂川)の竣工(主基第2土地改良区) E A 17.1m 8.3万m3 7年 暴風雨 死者行方不明者32人 8年 八丁堰(加茂川)の竣工(吉尾土地改良区) E A 18m 15.1万m3 両国 市川間 国電開通 千葉県下 大干害 根木名川排水機場設置 9年 仲尾沢堰(岡本川)の竣工(舟形八束土地改良区) E A 15.2m 13.7万m3 千葉県営水道 市川〜千葉間、木更津水道の起工 10年 軍茶利大堰(東浪見川)の竣工(一宮町東部土地改良区) E A 15.1m 30.6万m3 大利根用水事業の起工 12年 滝の谷堰(加茂川)の竣工(主基土地改良区) E A 18m 3.1万m3 日中戦争始まる 13年 豪雨 利根下流部小貝川大洪水、真間川堤防決壊 15年 円生堰(岡本川)の竣工(富浦町八束土地改良区) E A 16.4m 14.6万m3 16年 太平洋戦争始まる 真間川氾濫 18年 日立航空機製作所(株)、蘇我海岸埋立地へ進出 根木名川閘門竣工、黒部川改修の竣工 19年 大堰(養老川)の竣工(山口地区) E A 15m 9.3万m3 20年 日中、太平洋戦争の敗戦
昭和初期は戦争の時代であったが、9基のダムが築造された。いずれも、アース式ダムで農業用水を目的としていた。平均堤高16.3m、平均総貯水容量14.8万m3であり、小規模ダムであった。
(4)昭和中期(昭和21年〜40年)
昭和22年 小中池(南白亀川)の竣工(小中川土地改良区) E A 18.9m 102.5万m3 千葉県大干害 カスリーン台風 23年 アイオン台風、銚子地方に被害 24年 幕張町で埋立着手 キティ台風 死者行方不明者14人 25年 川崎製鉄・千葉制作所の建設決定 千葉県の人口 213.9万人 朝鮮戦争おこる 高潮、銚子〜勝浦に侵入 26年 雨竜湖(東浪見川)の竣工(一宮町東部土地改良区) E A 15m 26.4万m3 一の沢堰(温石川)の竣工(岩糸第一土地改良区) E A 19.1m 34.6万m3 大利根用水完工式 蘇我・今井地先埋立て再開(〜28年) 27年 竹の中ダム(三原山)の完成(竹の中土地改良区) E A 15.5m 4.2万m3 28年 川鉄千葉製作所第1号高炉火入れ式 蘇我漁民、埋立反対の大会 29年 千葉港、関税法指定の貿易港となる 千葉市、蘇我町海面埋立て、東京電力の誘致決定 30年 三島ダム(小糸川)の完成(小糸川沿岸土地改良区) E A 25.3m 540万m3 31年 東電千葉火力第1号発電機運転開始 32年 利根川の異常渇水で8000haに塩害 両総用水、佐原一東金間の完成 幕張海岸埋立て開始(〜39年) 33年 白石ダム(利根川)の完成(銚子市) E W 19.5m 80万m3 浦安漁民、本州製紙江戸川工場排水に抗議 台風21号、狩野川台風、死者行方不明者55人 35年 京葉有料高速道路の開通 印旛機場完成 所得倍増計画の決定 36年 千葉県、君津漁業と漁業補償協定の締結 住宅公団、高根台団地を造る 稲毛海岸埋立て開始(〜39年) 37年 金山ダム(加茂川)の完成(千葉県) E A 28.3m 180.1万m3 鋸山ダム(元名川)の完成(鋸南町) G W 19.1m 14.7万m3 銚子大橋開通 両総用水、佐原〜茂原間通水式 印旛沼沿岸農業防衛同盟の結成(印旛沼、捷水路建設反対) 高潮、房州〜九十九里浜に侵入 39年 山倉ダム(養老川)の完成(千葉県) E I 23m 510万m3 東京オリンピック開催 印旛水門完成 40年 千葉港、特定重要港に指定 八幡製鉄君津製作所の操業開始 国営 両総用水事業の完成 千葉県の人口270.1万人 高潮、九十九里一宮川に侵入
昭和中期は高度経済成長の時代で、川崎製鉄、東京電力、八幡製鉄などの大企業が進出した。この期には9基のダムが築造されたが、昭和30年までは5基すべて農業用水を目的としていた。その後、白石ダムと鋸山ダムの水道用水、進出企業に工業用水を供給する山倉ダムが造られた。
(5)昭和後期(昭和41年〜63年)
昭和41年 白浜ダム(長尾川)の完成(白浜町) G W 18.5m 23万m3 新東京国際空港成田市三里塚地区に閣議決定 幕張地区埋立て開始(〜49年) 大和田排水機場、酒直機場完成 42年 検見川地区埋立て開始(〜51年) 台風34号 死者行方不明者14人 根木名川排水機場完成 43年 蔵持ダム(一宮川)の完成(長南北部土地改良区) E A 17.5m 7.5万m3 手賀沼干拓事業の竣工 44年 増間ダム(平久里川)の完成(三芳水道企業団) G W 34m 52万m3 豊英ダム(小糸川)の完成(千葉県) G I 38m 482.7万m3 地下鉄東西線、西船橋まで開通 印旛沼開発事業の完成 45年 集中豪雨、千葉県南部に大被害(被害額320億円)、 死者行方不明者50人 46年 利根川河口堰(利根川)の完成(水資源機構) FG FAWI 7m 9000万m3 第2袋倉ダム(二夕間川)の完成(鴨川市) G W 24.3m 41万m3 新東京国際空港建設、第2次行政代執行(警官3人死亡) 台風25号 死者行方不明者154人 小野川水門排水機場竣工、横利根川水門竣工、黒部川水門竣工 47年 安房中央ダム(丸山川)の完成(千葉県) E A 36m 211.3万m3 郡ダム(小糸川)の完成(千葉県) E I 38.2m 393万m3 京葉港(船橋・市川港)、開港 48年 勝浦ダム(夷隅川)の完成(千葉県) E A 29m 196.6万m3 大谷川ダム(平久里川)の完成(富山町) G W 25.5m 19万m3 石油危機始まる 49年 千葉県の人口400万人に達する 50年 小向ダム(三原川)の完成(朝夷水道企業団) G W 37m 95万m3 川鉄公害訴訟始まる 猫実排水機場完成 51年 東ダム(夷隅川)の完成(いすみ市) E W 22m 45万m3 松部ダム(夷隅川)の完成(勝浦市) E W 21.2m 17.5万m3 52年 御宿ダム(夷隅川)の完成(御宿町) E W 23.5m 61万m3 作名ダム(汐入川)の完成(館山市) G W 24.5m 63万m3 53年 荒木根ダム(夷隅川)の完成(千葉県) E A 33.5m 205.2万m3 戸面原ダム(湊川)の完成(千葉県) E A 31.5m 435万m3 新東京国際空港の開港 長津川(船橋市)の都市型水害おこる 渇水、取水制限60日(鋸南町) 野田緊急導水路完成 54年 名熊ダム(夷隅川)の完成(千葉県) E A 18.5m 24.5万m3 人工海浜「幕張の浜」オープン 渇水、22日取水制限(鋸南町) 堀江排水機場完成 55年 亀山ダム(小櫃川)の完成(千葉県) G FNW 34.5m 1475万m3 元名ダム(小磯川)の完成(鋸南町) R W 28.2m 7.7万m3 北総東部用水事業の竣工 成田用水事業の竣工 56年 小久保ダム(染川)の完成(富津市) E W 29.5m 32.6万m3 台風24号、真間川、坂川、海老川等氾濫 57年 松戸排水機場及び坂川放水路竣工 58年 東京ディズニィーランド、浦安にオープン 千葉県の人工500万人を越える 都川高潮対策事業・羽衣橋竣工 59年 東第2ダム(夷隅川)の完成(いすみ市) E W 21.0m 20.1万m3 16年ぶりの大雪 渇水、取水制限21日(宮津町・三芳村) 豪雨、海老川水系長津川の氾濫 61年 佐久間ダム(佐久間川)の完成(千葉県) E A 25.5m 127万m3 一之分目排水機場(黒部川)供用開始 台風10号、真間川、葭川など郡市河川氾濫 62年 利根川水系異常渇水、取水制限 63年 東総用水事業の竣工 千葉市モノレール開業 JR京葉線、蘇我−新木場間開通 桑納川河川浄化施設完成
昭和後期は、23基の多くのダムが築造された。1年に1基の割の完成である。その内訳は型式別ではアース式13基、重力コンクリートダム8基、ロックフィルダム1基、クロティーングゲートダム(可動堰)1基で、また目的別では農業用水、7基、水道用水12基、工業用水2基、多目的ダム2基となっている。千葉県の高度経済成長は継続し、水需要の増加の結果である。
特筆されるダムは、多目的ダムの利根川から取水する利根川河口堰、小櫃川の亀山ダム、さらに各市町が施工した水道用水のための白浜ダム等の12基である。
(6)平成期(平成元年〜17年)
平成 元年 第二奥谷ダム(大風沢川)の完成(鴨川市) G W 22.7m 9.2万m3 千葉市幕張地区に幕張メッセがオープン 海老川・長津川ふるさとの川モデル河川事業に指定 一宮川激特事業採択 2年 高滝ダム(養老川)の完成(千葉県) G FNW 24.5m 1430万m3 黒部川総合開発事業の竣工(FW) 養老川ふるさとの川モデル河川事業に指定 手賀沼に「水の館」オープン 4年 千葉市、政令指定都市に移行 大利根用水事業の竣工 根木名川、桜づつみモデル事業に認定 印旛放水路・桑納川、ふるさとの川モデル河川に指定 5年 長柄ダム(村田川)の完成(水資源機構) E W 52m 1000万m3 第3次真間川激特事業に着手 6年 国分川分水路通水式 関宿域博物館オープン 7年 東金ダム(真亀川)の完成(水資源機構) E W 28.3m 230万m3 8年 霞ヶ浦開発事業の竣工 台風17号 死者行方不明者6人 渇水、取水制限42日(鴨川市) 新坂川浄化施設完成 9年 葭川排水機場完成 柳原排水機場完成 東京アクアライン開通 10年 平沢ダム(夷隅川)の完成(千葉県) E A 25.6m 116万m3 保台ダム(待崎川)の完成(千葉県) G AW 41m 274万m3 矢那川ダム(矢那川)の完成(千葉県) E FN 29.3m 172万m3 江戸川流水保全水路完成 一宮川、第1・第2調節池竣工 11年 県北東部豪雨、佐原市で全国観測史上1位 時間降雨量152.2o 12年 片倉ダム(小櫃川)の完成(千葉県) G FNW 42.7m 841万m3 北千葉導水事業の竣工 (浄化用水が手賀沼、坂川に注水) 下永井海岸高潮対策事業竣工 13年 追原ダム建設事業の中止 14年 一宮川、激甚災害特別事業完成 15年 桁沼川浄化施設供用開始 16年 山内ダム(一宮川)の完成(千葉県) E A 21.6m 36万m3 台風22号 死者行方不明者2人 小野川放水路完成 17年 千葉県の人口605.6万人
平成期は、9基のダムが造られた。型式別では、アース式5基、重力式コンクリートダム4基で、目的別では、農業用水2基、水道用水3基、多目的ダム4基となっている。
特筆するダムは、多目的ダムの高滝ダムで総貯水容量1430万m3である。
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以上、千葉県のダムは53基に及ぶが、続いて、山倉ダム、高滝ダム、亀山ダム、片倉ダム、郡ダム、矢那川ダム、保台ダム、山内ダム、印旛沼開発、利根川河口堰、東金ダム、長柄ダムの建設について、ダム工事誌等、および事業パンフレットにより追ってみたい。
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