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◇ 10. 揖斐川ダムのまとめ

 揖斐川におけるダム建設(長良川支流西ヶ谷洞川の2ダムを含む)は、大正期以降今日まで、14基に及ぶが、次のようにまとめてみた。

@ ダム完成の区分は、大正期4基、昭和初期2基、昭和中期2基、昭和後期2基、平成期4基となっている。揖斐川筋に大正期農業用水用の大谷池の築造に始まり、昭和初期には神岳ダム、西平ダムの発電用ダム、さらに昭和39年治水を含めた多目的ダム横山ダムが完成し、平成期には根尾川上流にハイダム上大須ダム、そして揖斐川の上流に日本一の総貯水容量を誇る徳山ダムが完成した。

A ダムの型式は、アースダム5基、重力式コンクリートダム5基、中空重力式コンクリートダム1基、アーチダム1基、ロックフィルダム2基となっており、それぞれのダム地点における地形、地質などによって最良の型式が選択され、建設された。
 なお、型式では、全国的には珍しい横山ダムの中空重力式コンクリートダムは注目される。

B ダムの用途は、洪水調節・農地防災1基、農業用水3基、水力発電7基、多目的ダム3基である。なお、多目的ダムの横山ダムと徳山ダムは発電用の目的を持っており、それを加えると、全体の14基のうち発電用ダムは9基となり、64.2%を占め、揖斐川のダムは発電用のウエイトが高いことがわかる。
 とくに、根尾川上流の奥美濃発電所に関する上大須ダム、川浦鞍部ダム、川浦ダムによる最大出力150万kWの発電には特筆に値する。

C 揖斐川の治水については、横山ダムと徳山ダムの連携によって、洪水調節の役割がおおきくなり、揖斐川流域47万住民の生活と生命を脅かす水害被害からの減災が図られる。

D ダム事業者は土地改良区2基、垂井町1基、岐阜県1基、国土交通省1基、水資源機構2基、中部電力鰍U基、イビデン鰍P基である。

E ダムの移転世帯と土地取得面積は、横山ダム56世帯、221.14haであり、徳山ダム466世帯、1,804.17haであって、計522世帯、2,025.31haとなる。その他のダムは未調査であるが、特に徳山ダムは旧徳山村の全村民が移転をした。ダム完成後も移転者等のダム建設の協力を忘れてはならない。

F ダムの堤高は、15m〜50m10基、51m〜90m1基、91m〜120m2基、121m〜170m1基となっている。
 堤高ベスト3は
  1. 徳山ダム   161m
  2. 川浦ダム   107.5m
  3. 上大須ダム  98mである。

G ダムの総貯水容量は、4万m3〜100万m36基、101万m3〜1,000万m33基、1,001万m3〜2,000万m33基、2,001万m3〜5,000万m31基、5,001万m3〜6.6億m31基となっている。
 総貯水容量のベスト3は
  1. 徳山ダム  6億6,000万m3
  2. 横山ダム    4,300万m3
  3. 川浦ダム    1,720万m3である。

◇ 11. お わ り に

 以上、揖斐川におけるダム建設について、概観してきたが、おわりに揖斐川に係わる水環境の書をいくつか挙げてみたい。

・揖斐郡教育会編・発行『揖斐川』(昭和54年)
・石原ミチオ著・絵『ふるさとの川 揖斐川紀行』(岐阜新聞社・平成16年)
・宗宮勇馬著『岡田将監列伝 西濃紀行』(西濃建設・昭和59年)
・越美山系砂防工事事務所編・発行『揖斐川上流地域の用語集』(昭和63年)
・  同  『揖斐川上流地域の地形・地質の形成』(昭和63年)
・  同  『揖斐川上流域の災害』(昭和57年)
・農林省農地局編・発行『揖斐川水系農業水利実態調査』(昭和37年)
・久保田 稔著『川といきる 長良川・揖斐川ものがたり』(風媒社・平成20年)
・輪之内町教育委員会編・発行『揖斐川改修百年誌』(平成13年)
・田中宣一著『徳山村民俗誌−ダム水没地域社会の解体と再生』(慶友社・平成12年)
・徳山村の自然と歴史と文化を語る集い編・発行『美濃徳山村通信(合本bP)』(昭和60年)
・  同  『美濃徳山村通信(合本bQ)』(昭和61年)
・大牧富士夫著『徳山ダム離村記』(ブックショップマイタウン・平成3年)
・  同  『たれか故郷を思わざる』(ブックショップマイタウン・平成2年)
・大西暢夫著『僕の村の宝物−ダムに沈む徳山村山村生活記』(情報センター・平成10年)
・  同  『水になった村−ダムに沈む村に生き続けたジジババたちの物語』(情報センター・平成20年)
・増山たづ子写真『故郷−私の徳山村写真日記』(じゃこめてい出版・昭和58年)
・朝日新聞岐阜支局編『浮いてまう徳山村−わが国最大の「ダムに沈む村」からの報告』(ブックショップマイタウン・昭和61年)
・木曽川文化研究会編『木曽川は語る−川と人の関係史』(風媒社・平成16年)
・矢頭 純著『木曽川物語』(郷土出版社・昭和62年)
・朝日新聞名古屋社会部編『母なる川 木曽・長良・揖斐』(郷土出版社・昭和62年)
・木曽三川−その流域と河川技術編集委員会編『木曽三川−その流域と河川技術』(建設省中部地方建設局・昭和63年)
・木曽三川流域誌編集委員会編『木曽三川流域誌』(建設省中部地方建設局・平成4年)
・木曽三川治水百年のあゆみ編集委員会編『木曽三川治水百年のあゆみ』(建設省中部地方建設局・平成7年)
・河川環境管理財団編『船頭平閘門改築記念誌』(木曽川下流工事事務所・平成8年)
・輪之内町編・発行『大榑川』(平成3年)
・池田町八幡公民館編・発行『ふるさと やわたの川と道』(平成12年)
・岐阜県編・発行『昭和34・35・36連年災害復興誌』(昭和40年)
・伊坂敏彦写真『多芸輪中の暮らしと水害』(木曽三川フォーラム・平成19年)
・養老町教育委員会変・発行『郷土の治水−養老町』(平成2年)
・安藤萬寿男著『輪中 その展開と構造』(古今書院・昭和50年)
・  同  『輪中 その形成と推移』(大明堂・昭和63年)
・伊藤安雄・青木伸好著『輪中−洪水と人間その相克の歴史』(学生社・昭和54年)
・河合 孝・伊藤安男著『輪中 水と闘ってきた人々の記録』(大垣青年会議所・昭和51年)
・赤座憲久・河合 孝 伊藤安男著『ふるさとの宝もの輪中』(じゃこめてい出版・平成4年)
・大垣市教育委員会編・発行『大垣市輪中調査報告書1988』(昭和63年)
・大垣市編・発行『大垣市史輪中編』(平成20年)
・伊藤安男編・著『変容する輪中』(古今書院・平成8年)
・松尾國松著『濃尾に於ける輪中の史的研究(増補改訂)』(大衆書房・平成5年)
・坂内村誌編集委員会編『夜叉ヶ池−その伝承と恵沢』(坂内村教育委員会・昭和62年)
・石原傳兵衛著『夜叉ヶ池説』(自費出版・平成3年)
・高橋常義著『糸貫川廃川史』(本巣郡総合開発公社・昭和57年)
・安藤善市著『席田井水史』(席田井水土地改良区・昭和54年)
・三宅雅子著『乱流−オランダ水理工師デ・レーケ』(東都書房・平成4年)
・上林好之著『日本の川を甦らせた技師デ・レィケ』(草思社・平成11年)
・木曽川下流工事事務所編・発行『デ・レーケとその業績』(昭和62年)
・杉本苑子著『弧愁の岸』(講談社・昭和38年)
・豊田 穣著『恩讐の川面』(新潮社・昭和59年)
・黒葛原 祐著『滔々記抄』(治水社・昭和55年)
・岸 宏子著『水の勲章』(中日新聞社・昭和50年)
・大坪草二郎著『留魂記』(葦真文社・昭和55年)


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