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竹林先生緊急インタビュー 
「風土千年・復興論−天変地異・災害の世紀」を緊急出版

 地震や火山の噴火、台風に洪水と、昔から日本列島は数多くの災害に見舞われてきましたが、先人たちは知恵を絞って土地を切り拓き、豊かな国土を現代の我々に残してくれました。また20世紀以降はコンクリートと土木技術のめざましい発展によって、日本は便利で住みやすい国になりました。



 しかし、竹林先生はこれまでの急速な発展の中で、機能性重視に偏った土木技術が蔓延した結果、全国津々浦々まで画一的で個性のない土木構造物に埋め尽くされてしまい、想定外のリスクに極めて弱い社会インフラを作り出してしまったのではないか?という反省点があると唱えられています。東日本大震災という未曾有の大災害を経験した今こそ、それぞれの地域特性、つまり風土による土地の個性を活かした街づくりの時代へと変革の時を迎えているのではないかと。
 我が国が今回の大災害から復興するために何をすべきかを改めて世に問う意味で、風土工学の視座から日本文明の真の復興をめざすための提言を新たな著書にまとめられたとのことで、緊急インタビューを行い、千年先を見すえた独自の復興論を語っていただきます。
天変地異・災害の世紀

中野: 新しく本を出されるということですが、初めに本について伺いたいと思います。
 タイトルは、『風土千年・復興論』で、サブタイトルとして、「−天変地異・災害の世紀−誇り高い千年先の風土をつくる−」とありますが、どうして日本列島に天変地異・災害が頻発するのか、そこから、お話を伺いたいと思います。

竹林: 3.11東日本大震災と原発事故という、日本文明にとって未曾有の大災害を受けて「災害とは何か」ということが根本から見直されているのではないでしょうか。まず、地球上で日本列島は災害のしくみの特異点にあるということです。
 これまで環境が大切だ、ダムは環境破壊だとマスコミが煽ってきましたが、そんなことも吹き飛ぶような天変地異ではないかと思います。本来、ダムは洪水と渇水から国民を守り、水の安心安全を確保しようという根幹の施設です。ただ、今は気象現象で、@降れば大雨・豪雨降らないときは全く降らない、降雨変動巾の拡大、A局地豪雨・どこに降るか全くわからない、B季節の区切りがおかしくなってしまった、降雨時期の異変、C年総降水量減少化、という4つの異変が起きていて、地球温暖化による影響とも言える変化が進行しているので、私はこうした変動を和らげ、備えられるのはダムしかないということを訴えてきたわけです。


 ところが3.11の大災害はそれらの前提を全てひっくりかえすような、想定をはるかに超す異変でした。これはまるで、ダムが不要だ、公共事業は不要だといってきた世の風潮に対し、天の神様が何を馬鹿なことを言っているのだとお怒りになっているように感じられました。天から鉄槌がくだされ、まるで祟りにあっているようです。今までとは違う天変地異・災害の世紀に入ったということを感じざるを得ません。3.11は、関東大震災、貞観地震にも匹敵するような大地震でした。また地震、津波だけではなく、2011年7月に紀伊半島に被害を出した台風12号では、大山地崩壊があって10数カ所の天然ダムが同時にでき、その時の総雨量は戦後最大でした。今回、山の斜面では、深層崩壊があちこちに同時に起きています。一方、つくば市等では我が国では珍しい三つの大きな竜巻が同時に発生して被害が起こっています。キーワードは同時多発です。

中野: そうですね、日本にはいままでこんな大きな竜巻がそれも同時に数か所で起きることははなかったような気がします。

竹林: 竜巻というのは非常に稀有な現象で、歴史からみても日本には竜が巻くということでありそうなネーミングですが、ここまで大きなものは起きていなかった。つむじ風という言葉はありますが、今回つくば市で起きたような現象ではなく、もっとやさしい現象です。それに今回の竜巻は同じ地域で同時に3ヶ所起きています。竜巻はアメリカで多く見られますが、ヨーロッパ、アフリカなどではほとんどないのです。日本でも無かったものが起きたのです。例えば100年確率で起きるものが3つ同時に起きるとすると100×100×100=1, 000,000年確率ということになります。現生人類の起源は20万年くらい前といわれています百万年前には現生人類はいなかったので、我が国では人類史上初めての出来事だったのです。同時多発とは極めて稀有な現象だということです。

日本列島に異変が生じている

中野: 想定外のすごい事がおきたのですね。

竹林: 2012年7月に起こった北部九州の豪雨では、熊本県の阿蘇乙姫では4時間に約400ミリの雨が降りました。日本の川は時間雨量で30ミリから50ミリも降ったら氾濫します。ところが、時間雨量100ミリクラスの雨が4時間続いたのです。これはすごい現象でした。こういった集中豪雨は積乱雲によって作り出されるわけですが、積乱雲の垂直スケール、水平スケールはともに5〜15km、時間スケール(寿命)は約1時間といわれています。一つの積乱雲で数時間もの豪雨をもたらすことはできないのです。ところが、4時間で約400ミリも降るという事は同時多発積乱雲が連続して次々に発生しているわけです。

中野: 自然界がおかしくなってきているのでしょうか。

竹林: そのとおりで同時多発という極めて珍しい自然現象が頻繁に起きています。先ほどもお話しましたが、台風12号による紀伊半島での降雨は時間雨量が30ミリくらいの雨が3日間くらい降り止むことなく連続して降り続いたのです。
 今回3.11による地震、津波、原発事故ばかりが取り上げられますが、その後も豪雨、竜巻など3.11以上の異変が連続して起こっています。まさに想定外のオンパレードなのです。3.11地震は1000年に一度の確率ですが、2011年紀伊半島山地崩壊、大深層崩壊、つくばの同時多発竜巻。2012年北部九州豪雨もまさに同じように1000年に一度くらいの確率の天変地異なのです。

災害には備えるしかない、やったらやっただけの効果はある

中野: そういった状況にどのように対応すればいいのでしょうか。

竹林: 世界最大の防波堤を釜石港などに作ったが今回、一瞬の間に壊れてしまったことについて無駄な公共事業で意味がなかったとマスコミが報道をし騒ぎましたが、それもおかしなことで、あの防波堤は大変大きな効果があり役にたったと報道しなければならないのです。

中野: もしあれがなかったらもっと大変なことになっていましたよね。

竹林: なかったら釜石港の死者は何倍にもなっていました。津波の高さを有意に低下させ、また津波が来る時間を何分も遅れさせることで被害を大幅に少なくしました。3.11の時、三陸海岸から銚子沖までの海岸線で2ヶ所だけ被害が軽くてすんだ特異な場所があります。そういうこともみておかねばならない。

中野: 松島は津波の勢いを松島湾の多くの島が食い止めたというこということを聞きました。

竹林: そうです。松島湾口の多くの島がサッカーのゴールキーパーのような役割、津波をブロックしたのです。もうひとつは銚子港です。銚子港と対岸の波崎港は、ほとんど津波被害がありませんでしたが、銚子港のすぐ裏の旭市は大きな津波被害を受けました。もともと銚子港は波の荒いところだから船の安全のために防波堤が完備されていたので守られたのです。災害には備えるしかないです。釜石だけではなく、普代水門や大田名部防潮堤で津波をとめて村民を守ったのです。やったらやっただけの効果は確実にあるのです。


中野: ダム不要論というようなことをいっている場合ではないのですね。3.11以降にもすごい災害は起きているということをもっと考えなくてはいけないですね。

竹林: そうです。3.11以降に起こっているいろいろな天変地異は私達にそういったことを教えているのです。

日本の九難宿命とは

中野: 3.11以降の同時多発する天変地異は世界でも見られることでしょうか。

竹林: 日本特有のようです。日本は全世界の国土面積の約0.25%ですが、マグニチュード6以上の地震は約20%が日本で起きていると言われています。日本は災害大国なんです。約20%の数値には3.11以降の頻発している大地震ははいっていないので現在は世界の地震の20%どころかはるかに多くの地震が日本で起こっている。


中野: 日本の宿命なのでしょうか、地震が起きやすい岩盤の上にあるとか。

竹林: 日本国土は九つの宿命との闘いなのです。野球の硬球は二枚の表皮が赤い108の縫い目でつながっています。サッカーボールは正六角形が20個と正五角形が12個、32個でできていますが、こうしたものは繋ぎ目からほころびてきます。
 地球の表面は、15枚のプレートで覆われていますが、日本列島は巨大な四つのプレートがちょうど激突する境界・継目に位置していますから、継目からほころびます。地震が多く、それで津波も発生します。またプレートの境界部には火山帯を形成しますから噴火も多く、[地震]・[津波]・[火山]という3つの宿命があるのです。気象面では、大陸からは寒気団、海洋からは暖気がやってきて日本列島の脊梁山脈にぶつかり、上昇気流がおこり、積乱雲が発生すれば日本海と太平洋の海洋から水蒸気が無限に補給され、大都市からは局所上昇気流があり、それらが雲を発生させ、ゲリラ豪雨等になるのです。まさに日本列島は、豪雨発生装置そのものなのです。夏は豪雨、冬は豪雪になるのです。
 南方で熱帯性低気圧が起これば、偏西風で弓なりに進んでいくので日本は台風銀座になっています。こうしたことで[豪雨]・[台風]・[豪雪]という3つの宿命があります。それに日本国土は、70%が住みにくい山や斜面で、わずかな10%の氾濫原に50%の人口が住み、75%の資産・経済活動が集中しています。平野部の河川は天井川です。雨が降れば、[山地崩壊]・[洪水]そして降らなければ[渇水]という3つの宿命があるのです。これらを合わせ九つの宿命・九難ということになるのです。

今までにはなかった爆弾低気圧

中野: 沢山の宿命を背負っているですね。最近は一日でも気象が激変することがありますが。

竹林: それが、爆弾低気圧というものです。台風は熱帯低気圧が発達したもので、暖かい空気の塊で水蒸気をエネルギーとしているため、南方海上で発生、発達し、夏から秋にかけて日本付近に北上してくるものですが、爆弾低気圧というものは、温帯低気圧が発達したもので、寒気が暖気の一部を取り囲み、暖かい空気の塊「暖気核」を形成し台風並み発達するものです。陸上でも海上でも発達し、冬季、春季に突如発生します。去年の4月3日に起きたのもこの爆弾低気圧でした。 4月2日に1006hPaから3日には968 hPaになり一日のうちに気圧が38 hPa もさがりました。日本海で起こって一瞬にして北海道までかけぬけました。富山、香川、岩手で3名が死亡、18都道県で110名負傷者がでました。全国各地で台風のような激しい気象が同時に起りました。その時のことを覚えていますが、空が急に暗くなり、竜巻が発生し、雹が降り、そして猛烈な暴風となりました。今までにはなかったことです。今年の成人式(2013/1/14)も、爆弾低気圧は発生して、14日に988 hPaの低気圧が15日には946 hPa になり、一日にして42hPa 下がりました。その結果、雪と風で大荒れの成人の日になってしまいました。

中野: あの3.11以降にこのような異変がさらに多くなってきたということなのでしょうか。

竹林: それだけではありません2011年8月7日15時30分に起きたゲリラ豪雨が東京で同時多発的に起こりました。これも今までにはなかったことでした。ゲリラ豪雨は予測できないといっていますが、気象庁では、虫の動きで積乱雲が発生するからわかるという研究をしています。民間気象会社では、利用者と提携して虫の動きを把握、早期の警告ゲリラ豪雨予報に生かしていて8割くらいの確率であてているということです。こういう人海戦術は中国でもやっていまして、国民からの地震前兆情報を地震予知に役立てているということです。

中野: 地震のまえには何か異変が起きるのでしょうか。

竹林: 阪神淡路の大震災の前には、たくさんの異変・前兆が起こりました。動物の異常行動などがありますが、ラドンガスの発生、発光現象等々もあります。
 他にも23年には、台風6号マーゴレ、9号ムイファー、12号タラス、15号ロウキーという台風が4つ日本に上陸しています。四つの台風も南洋で急激に発達して非常に大きな勢力となって日本に多大な被害をもたらしました。3.11の前の7日前の夜に茨城県鹿嶋市の下津海岸にクジラ52頭打ち上げられました。震災後も頻繁にクジラだけでなくリュウグウノツカイ等の極めて珍しい深海魚が打ち上げられているのです。そういった異変が各地で起こっているのです。


文明滅亡の六因

中野: この本でいちばん訴えたいポイントというか、最大のメッセージは何になりますか?

竹林: まず文明についてお話します。どのような文明も必ず滅びますが、その原因は六つに分類されます。1.外敵との戦争に敗れる。 2.経済戦争・情報戦争など武力によらない国家間の戦争に敗れる。3. テロや内乱で国が乱れる。4. 天変地異で壊滅的な大被害を受ける。5. 自然による環境変化で水・食料・エネルギーのいずれかが枯渇する。6. 人為による環境改変で水・食料・エネルギーのいずれかが不足してくる。 ということが文明の滅びる六因となっています。
 日本文明についていえば、米軍による本土大空襲、関東震災等3.11よりもはるかに大きな国難からも復興しているので、今回の3.11や原発事故程度で驚いてモタモタしてはいけないのです。

中野: 3.11ではかつてない大きさの地震と巨大津波に襲われ、大きな被害を受けました。そのことについては、先生は、これまでの土木技術のアプローチが機能一辺倒ではなかったかという反省のもと、風土工学の視点から地域の復興をめざすべしと提唱されているのですね。

竹林: 風土工学を唱えてから15年くらいになるのですが、今回の3.11は、風土工学からは復興をどう考えるのかということをよく聞かれます。それにこたえるべく出版したのが、今回の「風土千年・復興論」という本です。
 学者の意見でも地震予知をめぐる迷走があります。ロバート・ゲラー東京大学教授は「地震予知はできない」「地震予知の研究はするな!」と、上田誠也東京大学名誉教授や元電気通信大学の早川正士教授は「地震は予知できる」と全く正反対なのです。予知ができれば死者は減りますが、日本は地震計の設置は多くても地震予知はしない世界的にも稀有な国なのです。ギリシャでは国として地震予知で成果を上げている。
 気象学も進んでいて、北京オリンピックの時、中国では雨は降らせませんと宣言し、事実、雨は降りませんでした。アメリカでも天気は制御できるというのです。実際1992年にはハリケーンを制御したというのです。

中野: 日本では災害が多いのになぜそうした研究がなされないのでしょうか。いろんな意見が分かれる難問に直面したら風土工学の視座ということですか。

竹林: 世の中、社会現象も自然現象も複雑に絡み合って相互に影響しあって変わっていきます。
その様な難題に直面したらどのように考えたらよいのでしょうか。外国(英語)ではどうなっているのかという方が多い。世の学者の先生と称せられている方は、英語の論文を翻訳して、日本は遅れているとして、それを日本に導入して、権威を構築してきた方が多い。
 風土工学の視座は全く逆で、何か困ったことが会ったら東洋の知恵に学ぼうと言っています。東洋の知恵とは日本の文化(大和言葉の思考法)と仏教の思考法や漢字の知恵に学ぼうと言っているのです。そのあとに、英語圏の思考法ではどうなっているか比較検証のために考える。英語ではどうなっているかは一番最後に比較のために行うことで、最初からそうすることは、一番やってはならないことだと思っています。
 何故かといえば、英語圏・西洋の思考法・文化は物事の片面しか見ない言語であり、思考法であるからである。一方東洋の知恵は物事の両面を見る思考法なのです。
英語は“丁か半””正か誤りか“と全ての物事を一面からしか見ようとせずに、判断を下す思考法だからです。物事が錯綜した現在の諸現象を見るとき、必ず裏と表の両面から見ることが絶対に必要である。全ての物事には裏と表がある。片面から見て、白か黒かを決めるのは大きな誤りのもととなります。
 例えば、談合は悪だとばかり言われますが、片面からしか見ずにすべて悪にしてしまっている。反対に、競争は大変悪い面を多く包含しているのに、それを一切見ずに、競争は善としてしまった等々、列挙すればきりがない。

中野: 国民は放射能が心配でおびえています。どう考えたらいいのでしょうか。

竹林: 今、大きな話題になっている放射能と人体の健康のことを一番よく研究しているのは、実は放射線医学の専門家なのです。地球上・自然界にはもともと多くの放射線が存在しています。現在の人間は自然界に存在する放射能と順応するように進化してきたのです。常にある程度の放射線を受けている状態で一番健康に良いように進化してきた。自然界にも放射線が異常に高い地域もありますが、放射能障害等の問題は一切報告されていません。それに福島の原発事故で放射線障害の治療を受けた住民は一人もいません。病気治療にはラジウム温泉が効く。玉川温泉、三朝温泉、有馬温泉みな放射線が相当高いが当地の住民は特に問題があるという事はありません。低線量の放射線はホルミシス効果があり健康に良いと報告されている。NASAでは、宇宙飛行士が船外活動して体に受ける高い放射能について研究が進んでいます。
 次に、放射能の強制避難の基準を低い数値にすれば安全側だという非科学的な大衆迎合的な判断で決めています。非科学的な避難をしていては、復興はできません。

中野: 脱原発でも脱ダムでも間違ったことを言う人がいるので、混乱しますね。いろんな意見のある問題についてどう考えのですか。

竹林: いろいろな視点のある場合に必要なのが、風土工学の視座なのです。マスコミは一方向でしか見ない。すべてのものには2面性があります。意見が分かれたとき、どうするのかというのが風土工学の知恵です。風土から学ぶ・原点に立ち返るということです。IPS細胞の初期化のようなものです。風土の構造には3超越があります。具体的には風土の構造・3超越の視座からの考察をすることなのです。



 まず、第一超越の自己軸の視座からの考察です。
 今回の大震災でも、一人の生命が何より大切だとことあるごとに聞かされた言葉でありますが、生命よりもっと大切なものがあることを今回の震災は知らしめたのではないでしょうか。自己の生命のために復興するのではない。自己の集合体としての日本人文明の存続のために復興するのではないでしょうか。

 次ぎに、第二超越の時間軸の視座からの考察です。
 過去から学ぶ。先人の知恵から学ぶという事です。東日本大震災よりはるかに大きな国難に私たちの先祖は立ち向かい克服し立派に復興して見せてくれました。それもそんなに古い話ではない。関東大震災や本土大空襲からの復興なのです。
 三つ目は、第三超越の空間軸の視座からの考察です。
 右手を損傷すれば左手で補うのです。さらに口や両足を総動員してすべての五官の機能を総動員して補うのです。東電管内がやられたら、中電や関電管内の発電所を安全性を確認しつつ止めることなくフル稼働して復興するのです。東電の原発が被災したからと言って、他の電力会社の原発も可能性あるとして止めることはどう考えても、根本が間違っているとしか思えません。
 喫緊の課題から解決策を探るのではなく、もっとも望ましい姿からそこへの一里塚としての復興の過程として解決策を探ろうではないかということです。

風土工学の視座は日本文明復興の道を示す

中野: 災害はどうすれば減らせるとお考えですか。

竹林: 原発事故では放射線による被害よりも、風評の被害の方がはるかに大きい、低線量で避難しなくてよいレベルなのに、強制避難命令を下したことによる被害の方がはるかに大きいということです。人間の病、病は気からといいますが、復興するときにどうしたらいいかというと、精神がめげたらおわりです。物理的な復興をしても、日本文明の精神を亡くした復興では意味がありません。日本の文化の復興でなくてはならないのです。日本人のアイデンティティのある復興の一里塚として日本文明の復興があるのです。

中野: 復興するためには、土木の先人たち知恵も役だっていくのではないでしょうか。

竹林: そのとおりです。これまで復興できたのは、土木技術者の力が不可欠です。復興を遅らせているのは、土木批判、ダム批判といった風評による害が大きいです。日本人には災害に蓄えをする国民性・先人から受け継がれてきた知恵と遺伝子があります。凶作、災害に備えることを備荒といいますが、天変地異に蓄えるシンボルは「ダム」です。ダムは蓄える基本です。大自然災害はこれ以上ない環境破壊です。それを防ぐダムは環境保全の切札です。ダムは批判もおかしいことだと思います。

中野: 風評被害が広がらないように、本質をきちんと話すことができるリーダーシップを持った人が必要なんですね。3.11起きてから2年になろうとしていますが、復興へはまだ遠いといういらだちがありますね。
 ダムについても、「千年ダム構想」ということが話題になりつつありますように、いまある既存のダムをどう長持ちさせて、いかに永く使っていけるかということを考えようということになってきています。実際、狭山池のように千年を超える月日を経た古代の知恵による水がめが、今もなお地域の人々に大いに役に立っているというように、これまでに長年かかって造ってきたダムを十分活かしていくということが求められています。こうした取り組みと、風土千年の復興論はどのようにリンクするとお考えでしょうか?


竹林: 弘法大師の満濃池は“ゆるぬき”の儀式をしてきている。行基や重源の狭山池はこれまで何度も維持補修・浚渫をしています。きちんとメンテナンスをしているから長い時間、暮らしの役に立っているのです。

中野: 以前より、『景観十年、風景百年、風土千年』ということを唱えられておられますが、景観とはいずれ損なわれる運命のもの、損なわれず残るものが風景。そしてその地の人々の心象に溶け込んだものが風土だということは、景観という目先のことを目指さず、風土千年の視野で取り組むことが必要だということですね。
 ダム技術については、どのように若手技術者を育て技術を継承していけば良いかという事が大きな問題となっています。そういう点で、何か良いアイデアはありますでしょうか?

竹林: 中止されているダムはいずれ、今後は見直しもあり、いずれ建設してほしいとなってくるでしょう。天変地異に備えるにはダムがもっとも重要な施設なのです。良好風土は一日にしてならず。国家百年の計で考えなければなりません。

中野: これからもなお大災害が予想される中、安心安全な街づくり、国づくりについて、風土千年の国づくりを見込んだ風土工学の理念を生かして日本文化の復興をめざすことが必要だと感じました。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。



『風土千年・復興論−天変地異・災害の世紀』
−誇り高い千年先の風土をつくる−

四六判 上製本 本文259頁 定価 2,667円+税
発行:ツーワンライフ出版



(参考)竹林征三さん プロフィール

氏 名:竹林 征三(たけばやし せいぞう) 工学博士

昭和42年 京都大学土木工学科卒業
昭和44年 京都大学大学院工学研究科修士課程修了
昭和44年 建設省に入省
     琵琶湖工事事務所所長、甲府工事事務所所長等を経て
平成3年 土木研究所 ダム部長
平成6年 土木研究所 環境部長
平成8年 土木研究所 地質官
平成9年 (財)土木研究センター風土工学研究所所長
平成12年 富士常葉大学環境防災学部教授、附属風土工学研究所所長
平成18年 富士常葉大学大学院環境防災研究科教授(兼)
平成22年 山口大学大学院理工学研究科講師 
平成22年 富士常葉大学名誉教授
平成24年 山口大学時間學研究所客員教授

主な著書:
「東洋の知恵の環境学」ビジネス社、1998.5
「風土工学序説」「風土工学の視座」 技報堂出版、1997.8、2006.8
「ダムのはなし」「(続)ダムのはなし」 技報堂出版、1996.2、2004.4
「甲斐路と富士川」土木学会山梨会、1995.9
「実務者のための建設環境技術」山海堂、1995.7
「湖水の文化史シリーズ」全五巻、山海堂、1996.7〜1997.2
「湖国の水のみち」サンライズ出版 1995.5
「環境防災学−災害大国日本を考える文理シナジーの実学−」技報堂出版、2011.8
「ダムと堤防−治水・現場からの検証−」鹿島出版会、2011.8
「風土千年・復興論」−天変地異・災害の世紀− ツーワンライフ社 2013.2 他多数

主な受賞歴:
平成5年7月  建設大臣研究業績表彰「ダム・堰技術の高度化と水歴史文化に関する研究」
平成10年4月 科学技術庁・長官賞受賞、第一回科学技術普及啓発功績者表彰
平成10年5月 前田工学賞受賞。 第五回年間優秀博士論文賞
「風土資産を活かしたダム・堰及び水源地のデザイン計画に関する研究」
平成14年4月 北上市創作民話公募「鬼翔平物語」最優秀賞受賞
平成15年7月 国土交通大臣建設功労表彰 他多数

(参考) ウィキペディア・竹林征三

(平成25年3月作成)
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