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ダムの補償

 当初は、1962年に制定された「土地収用法」と建設部(現在は建設交通部)の訓令である「ダム建設水没地区用地買収及び損失補償要綱」に基づき用地取得及び補償が実施されていたが、後者についてすべての収用適格公共事業を対象として評価基準、方法、手続等を統一的に定めた「公共用地の取得及び損失補償に関する特例法」(通称「公特法」)が1975年に制定され、任意買収の場合の適正補償を確保することとした。

 公特法のポイントは次のとおりである。
@ 補償の対象に移転費を追加した。
A 登記未了でも実質的な土地所有者に補償費を支給できるようにした。
B 所有者不明の土地に対しては公示送達でもって協議に代えて補償金を供託できるようにした。
C 事業用地内の土地所有者で移住が必要な者に対しては移住対策を策定・実施することとし、韓国住宅銀行の融資を優先的に実施することとした。
D 補償金受領に必要な書類は事業者が関係機関に要請して発給されるようにする等、補償金請求手続を簡素化した。
E 「先工事後補償方式」であるから工事が完成するまでは補償金の支払いがなされないのが原則であるが、補償金を早く受領したい者の立場と事業者の資金確保問題を解決するため、土地所有者等が希望する場合には補償金を償還期限5年以内の債券で支給できるようにした。


清平(チョンピョン)ダム
漢江水系の右支川である北漢江中流に位置する79.6千kWの発電ダム。1943年完成。堤高31m、堤頂長407m、総貯水容量185百万m3。

 ダム事業にあっては、水没者の生活再建が極めて重要であることは論を待たないが、上記公特法では移住定着地に移住を希望する者が10戸以上の場合に移住対策を策定・実施することとなっており、原則としてダム事業者が水没者を定着させるため宅地を造成して分譲するが、他に適当な宅地や住宅があってこれをあっせんした場合には移住対策を策定したり移住定着金を支払ったものとみなされる。

 この対策の対象となる移住者は、事業に必要な土地を提供したことによって生活の根拠を喪失することとなる者であるが、借家人が含まれないことが特徴である。

 また、移住団地造成事業は収用適格事業である附帯事業とみなされ、造成用地も事業認定を受けて収用できることも大きな特徴である。

春川(チュンチョン)ダム
漢江水系の右支川である北漢江上流に位置する57千kWの発電ダム。1965年完成。堤高40m、堤頂長453m、総貯水容量150百万m3。

 移住団地造成事業の費用は、道路等の公共施設の整備費用も含め事業者の負担であるが、移住者が負担すべき費用は分譲を受ける宅地の土地代と造成費の合計額であり、公共施設負担は除外される。我が国のように、水没者の生活再建の観点から分譲価格を低減するための工夫は行われず、あくまでも原価主義で分譲されているようである。

 このような移住対策が行われなかったり、水没者が個人移転する場合には、移住定着金が法律の規定に基づき支給される。その額は通常の公共事業の場合、建物の評価額の30%に相当する金額とし、それが300万ウォン(約30万円)以下のときは300万ウォンに、500万ウォン以上のときは500万ウォンと定められている。それがダムの場合には、水没によって先祖伝来の生活の場を全て失うことになるという特殊性から、1世帯当たり800万ウォンの移住定着金と世帯構成員1人当たり100万ウォンの生活安定基金(1世帯400万ウォンを限度)を支給することとされている。
 事業費に占める補償費の割合を見ると、次表のとおりである。道路が極めて高いのは東京都内の都市計画道路事業の補償費率が8〜9割と言われるのと同様であるが、ダムの数字が日本の水準(2〜3割)に比べて高いのが特徴である。これは前述したようにダムの規模に比して水没面積が広大で、住宅地造成などと同じく面的開発であることによるものと説明されている(工業団地の数字がそれほど高くないのは公有水面埋立による部分が多いためだそうである)。


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