[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]


ダム建設及び周辺地域支援等に関する法律

 建設交通部(日本の国土交通省に当たる)は、洪水被害防止と2000年代の水需要増加に対応するためには、ダム建設を持続的に推進する必要があるとの認識の下、現行の「特定多目的ダム法」は多目的ダムに限定されており、ダム周辺地域に対する支援等が不充分で、事業推進に困難が多いとの批判に鑑み、1999年8月13日に同法を全面改正して、「ダム建設及び周辺地域支援等に関する法律」を制定した。

 同法は、体系的な水資源の開発と事業の円滑な推進を図ることを目的としているが、その内容を一言で表現すれば、日本の特定多目的ダム法に水資源開発促進法のフルプラン規定と水源地域対策特別措置法の内容を加えたものであって、主要内容は次のとおりである。


昭陽江(ソヤンガン)ダム
漢江水系の右支川北漢江の支川昭陽江に建設された韓国最大の多目的ダム。日本の海外経済協力基金の資金協力により1973年完成。堤高123m、堤頂長530m、総貯水容量2,900百万m3。
 第一に、ダム建設長期計画の法的根拠を設け、多目的ダムのみならず発電用ダムや農業用ダム等すべてのダムを対象とする10年単位のダム建設長期計画を策定することにより、水資源の効率的、体系的な開発を図ることとした。
 第二に、環境と調和したダム建設のため、法の目的にダム建設に伴う環境対策を策定することを明示するとともに、ダム建設長期計画の内容にダム建設による環境被害を最小化する方策を含めることとし、個別ダムの基本計画もダム建設による環境被害低減方策を含めて策定することとした。
 第三に、ダム建設に伴う水没者の移転先への早期定着のため、土地収用のための事業認定時点を従前の実施計画策定時点から基本計画策定時に1年程度前倒しし、早期に補償するようにすることにより、早期定着を助けることし、合わせて事業に便乗した投機の予防と事業期間の短縮を図れるようにした。
 第四に、ダム周辺地域に対する支援を拡大、強化し、建設中のダムと新規のダムに対しては「ダム周辺地域整備事業」制度を新たに導入、ダム建設期間中の生産基盤造成、福祉文化施設や公共施設事業等の地域開発事業を施行するものとすることにより、1ダム当たり平均200億ウォン規模の整備事業を施行できるようにした。

 また、既存ダムに対しては、住民所得増大事業、小規模公共施設事業及び育成事業を行う現行の「ダム周辺地域支援事業」の支援金を現在の発電販売収入金の1%、用水販売収入金の5%からそれぞれ2%及び10%に引き上げ、年間1ダム平均約2億ウォン(2,000万円)から約8億ウォン〜10億ウォン(8,000万円〜1億円)に大幅拡大することとした。かねてより既存ダムの水没者の生活再建に関しては、「零細民」と呼ばれる生活困難者の存在が大きな社会問題となっている。1995年には安東(アンドン)ダムの零細民を地元のテレビ局が大々的に取り上げ、日本で精力的に取材を行い、水特法の制度や宮が瀬ダム等の事例を詳しく紹介し、韓国の政策対応の後れを批判したこともあるほどである。今回の法律の立法過程でも既存ダムに対する地域整備事業を施行するか否かが争点となり、国会に上程されたものの、既存ダムまで対象とすると莫大な財政資金が必要となるので、政府資金を伴う地域整備事業の対象から既存ダムを除外する代わりに、既存ダムに対する周辺地域支援事業(政府資金なし)を拡大する内容の修正案が提出され、成立した経緯がある。

 新法の施行により、今後推進されるダム建設事業は、水没者に対する早期補償により移転者の生活安定に寄与するとともに、環境対策の強化によって環境と調和した形で推進することができるようになり、ダム周辺地域に対する支援事業拡大によって地域社会発展に寄与し、ダム建設に伴う否定的な認識が解消されるものと期待されている。


[前ページ] [次ページ] [目次に戻る]
[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]