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3.尾原ダム、志津見ダムの建設

 藩政期、出雲地方は頻繁に水害を被ってきた。前述のように「出雲三兵衛」による宍道湖、斐伊川、神戸川を中心とする治水、利水事業が行われてきたが、今日も継承されている。

 斐伊川は島根県の東部に位置し、その源を中国山地の船通山(標高1142.5m)に発し、山間部を北流し、途中久野川、三刀屋川、赤川等の支川を集め、出雲平野を貫流し、宍道湖に流入後、大橋川を経て、中海に流入し、飯梨川、伯太川の支川と合わせ、境水道を経て日本海に注ぐ。流域面積2072km2、流路延長 153kmの一級河川である。一方、神戸川は女亀山(標高 830.3m)に源を発し、頓原川、伊佐川、波多川等の支川を合流しながら出雲平野を貫流し、日本海に注ぐ。流域面積 471km2、流路延長87kmの二級河川である。

 斐伊川上流域の大部分は良質の砂鉄を含む風化花崗岩(真砂土)によって覆われ、古くから砂鉄を原料とした「たたら製鉄」が盛んだった。原料の砂鉄は水路に土砂を流して流水による比重選別によって土砂の中の砂鉄分を凝集する「鉄穴流し」という方法で採取されていた。このため「鉄穴流し」によって大量の土砂流出によって斐伊川は川底が周囲の平野の地面より高い「天井川」となり、ひとたび氾濫するとその被害は出雲平野に広がった。近年でも、昭和47年7月豪雨、50年7月、58月7月、平成9年7月の梅雨前線によって水害が生じている。


『斐伊川史』

 現在、国土交通省によって、洪水調節等を目的として斐伊川上流(雲南市木次町)に尾原ダム、神戸川上流(飯石郡飯南町)に志津見ダムの両ダムが建設中である。さらに、斐伊川と神戸川を結ぶ斐伊川放水路を施行中である。この放水路は、斐伊川の水を放水路で神戸川に分流することによって斐伊川下流の洪水の減少を図る役割を担っている。また宍道湖に流れ込む斐伊川本川の川幅は 420m、これに対し、宍道湖と中海を結ぶ大橋川の川幅は 120mである。このような状況から斐伊川の洪水は宍道湖に流れ込み、大橋川で滞り、宍道湖周辺では水位が上昇し、水害をたびたびおこしてきた。そのため大橋川の川幅を拡げることで、宍道湖の水はけを良くする事業が行われている。これらの事業については、建設省出雲工事事務所編・発行『斐伊川史』(平成7年)、同『ふれあい放水路総集編』(平成10年)、建設省中国地方整備局・島根県頓原町編・発行『志津美の徑−志津見ダム故郷思い出写真集』(平成5年)の書がある。


『志津美の徑−志津見ダム故郷思い出写真集』

 なお、尾原ダムの諸元は、堤高90m、堤頂長約 400m、総貯水容量6080万m3、型式重力式コンクリートダムで、その目的は、洪水調節、河川環境の保全、水道用水の供給の役割を果たす。補償関係は移転家屋 111戸、用地取得面積 392.3haとなっている。

 一方、志津見ダムの諸元は、堤高85.5m、堤頂長約 266m、総貯水容量5060万m3、型式は重力式コンクリートダムで、その目的は、洪水調節、河川環境の保全、工業用水、発電用水供給の役割を果たす。補償関係は移転家屋97戸、用地取得面積 380.1haとなっている。両ダムの完成は平成23年の予定である。

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