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おわりに

 以上、島根県のダム建設について概観してきた。戦後60年間を振り返ってみると水害との闘いだった、といえる。そのダム建設の事跡を綴った、島根県のダム工事誌は次のように統一的な内容で構成されている。

 ・事業計画
 ・調査(水理・水文・地質)
 ・設計(基本水位、ダム・放流設備、水理模型実験)
 ・施工計画(工事工程、環境保全、安全管理)
 ・施工設備(骨材製造、コンクリート製造、電力・通信設備)
 ・施工(転流工基礎掘削ダムコンクリート設備、観測設備、取水・放流設備)
 ・管理(ダム操作規則・管理協定)
 ・用地補償補償工事
 ・組織
 ・行事(定礎式、竣工式)
 ・特記仕事書
 ・調査設計報告書一覧

 これらの工事誌を繙くと、ダムを造る側と造られる側との労苦が忍ばれ、さらに多くの技術者たちの情熱と英知を読み取ることができる。これらの工事誌は、管理中においても、また時代の変化によってダム再開発事業(撤去の可能性を含めて)が必要になったとき、そのダムの構造について容易に理解できるように編纂されている。このような工事誌の編纂は将来のことまで考えてみると意義深いものがある。

 すでに述べてきたように、藩政期の「出雲三兵衛」らの尽力から今日までダム建設事業等によって県土が守られてきた。今後、島根県は、地球温暖化に伴う異常気象に対応するためにさらなる県土の治水と利水の安定と環境の保全を図る必要性に迫られてきたといえる。それは、水循環にそくした森林、河川、海まで含めた総合的な保水施策が必要であろう。河川計画だけでなく、都市計画や農地計画などによる連携のハ−ドな面と、予防、警報システムの確立におけるソフトの面も益々重要視されてくる。昨年は多雨傾向であったが、一転して今年(平成17年6月30日現在)は、沖縄地方を除いて日本列島は少雨傾向が続いている。今夏、渇水が生じないことを願っているが。


 最後に、島根県の水環境に係わる書をいくつか掲げる。
・石塚尊俊著『大梶七兵衛と高瀬川』(出雲市教育委員会・昭和62年)
・長瀬定一編『斐伊川史』(斐伊川史刊行会・昭和25年)
・出雲工事事務所編・発行『斐伊川改修40年史』(昭和39年)
・同 『斐伊川治水経済調査報告書』(昭和39年)
・同 『斐伊川水系の植物』(平成5年)
・同 『斐伊川水系の昆虫』(平成6年)
・同 『斐伊川水系の小動物』(平成7年)
・同 『斐伊川水系の鳥類』(平成9年)
・同 『斐伊川水系の底生動物』(平成12年)
・同 『斐伊川水系の魚介類』(平成12年)
・永田滋史編『神戸川探訪』(出雲市教育委員会・平成9年)
・神戸川ラインサミット写真集編集委員会編『くにびきの川 神戸川』(中国地方整備局・平成14年)
・川上誠一著『宍道湖物語』(藤原書店・平成4年)
・山陰地域問題研究所編・発行『宍道湖・堀川水系の空間利用に関する研究』(昭和61年)
・中国新聞社松江総局編『松江堀川めぐり』(今井書房・平成11年)
・神西湖の自然編集委員会編『神西湖の自然』(たたら書房・平成7年)
・八戸川漁業協同組合編・発行『八戸川の流れ』(平成2年)
・同 『続 八戸川の流れ』(平成12年)
・松江市水道局編・発行『松江市水道史』(昭和63年)
・島根縣土木課『赤川改修工事誌 (昭和7年〜9年) 』(昭和12年)
・同 『益田川改修工事誌 (昭和8年〜10年) 』(昭和12年)
・静間川改修促進期成改修史編集委員会編・発行『新生静間川改修史』(昭和55年)
・大田土木建築事務所編・発行『静間川改修工事史』(平成2年)
・島根県編・発行『新建川改修事業完成誌』(昭和60年)
・島根縣濱田測候所編・発行『島根縣既往の災害並ニ豪雨調』(昭和9年)
・島根県災害対策本部編・発行『昭和29年9月災害』(昭和29年)
・島根県防災会議編・発行『昭和40年7月豪雨災害状況』(昭和40年)
・島根県編・発行『昭和47年豪雨災害誌』(昭和47年)
・中国地方建設局編・発行『昭和47年7月豪雨災害誌』(昭和49年)
・島根県総務部編・発行『昭和63年豪雨災害の記録』(平成元年)
・中国新聞社編『集中豪雨を追う 昭和63年7月加計、浜田災害』(渓水社・平成元年)
・広井脩著『1988 (昭和63年) 年7月浜田水害と住民の対応』(東京大学新聞研究所・平成2年)


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