『美田ダム工事記録』
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【美田川−美田ダムの建設】
美田川は隠岐郡西ノ島町美田を流れ、大橋川を合わせ海に注ぐ二級河川である。美田川の洪水は昭和30年代連続して起きた。治水のため、河道改修と引堤による耕地のつぶれを避け、観光客増による飲料水確保のために、ダム建設が計画され、昭和53年美田ダムが完成した。このダムの建設記録については、島根県企業局開発課編・発行『美田ダム工事記録』(昭和54年)の書がある。
美田ダムの諸元は、堤高26.8m、堤頂長 105m、総貯水容量用39.1万m3、型式重力式コンクリートダムで、その目的は、ダム地点における洪水流量35m3/sのうち30m3/sの洪水調節を行い、美田河沿岸の水田地帯16.9haの既得用水の補給を図る。さらに、西ノ島町浦郷地区外5地区に対し、水道用水として0.0127m3/sの取水を可能ならしめ、いままで井戸に頼っていた飲料水等がこの水道水にとってかわった。 施工者は(株)鴻池組、事業費 14.97億円である。補償関係は家屋移転はなく、用地取得面積8haとなっている。
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美田ダム建設工事は、昭和52年度河川部門で全建賞を受賞した。51年度の八戸ダム建設に次ぐもので、受賞の理由は次のことがあげられる。
@ダム完成によって一島一町の慢性的な水不足を一気解消し、離島の振興に大きく貢献した。 Aダムの流域面積が小さいため洪水調節の放流管及び非常用洪水吐ともゲ−トレスとして自然調節方式とした。(島根県では初めて) Bダム底部に低水放流管を設け、湖底滞留水の排出と異常渇水時の用水補給に備えた。 Cかんがい用水と水道用水の取水方式を多孔式個別選択方式とし、表面温水から下部の冷水まで個別に取水できるようにした。 D海に近いことからB、Cの鋼工作物は耐蝕、耐久性に富んだものを使用した。 Eセメント、骨材、その他建設資材はすべて本土から海上輸送したため、美田川河口部に専用の荷揚げ場( 500tバ−ス)を造った。 F5月〜9月にかけ、美田川の水はかんがい用を使われるため、工事用水は別の渓流に求め、既設砂防堤を嵩上げし、5km余のパイプラインを布設し自然流下により送水した。
しかしながら、昭和53年美田ダム完成後の平成3年、5年に計画を上回る降雨による洪水被害が生じた。また今後の生活環境基盤等の整備に伴い水需要の増大が予想されることから貯水容量の拡大が必要となった。 これらを解決するために、美田生活貯水池(再開発)整備事業は、次の3点が主に施工 された。
・ダムの容量を拡大として、貯水池内の掘削を行った。 ・貯水池内の掘削部分の道路を付替えた。 ・掘削中における水道用水水量確保するためにダム上流部に仮締切り堤を設置し、バイパス管により水道用水を送水した。
美田ダムの再開発事業は、平成9年に着手し、平成15年に完成し、総貯水容量39.1万m3から53.9万m3に増量が図られた。隠岐島は動植物の宝庫といわれ、西ノ島町周辺は絶滅危機にあるワシタカ科のミサゴ(鳥類)、オニヒョウタンボク、コショウノキ(植物)、モノサシトンボが確認されている。また、集団生息しているゲンジボタル、ヒメボタルの日本有数の群生地である。このことから、ダム再開発事業には動植物を対象とした自然環境の保全に努めた。
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『銚子ダム工事誌』
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【八尾川−銚子ダムの建設】
八尾川は、島根県隠岐島の島後に位置し、その源を横尾山(標高 576.8m)に発し、途中、銚子川、有木川を合流しながら、西郷町の市街地を流れて西郷湾に注ぐ。流域面積43.7km2、流路延長10.5kmの二級河川である。
銚子ダムは、八尾支川銚子川の隠岐郡西郷町(現・隠岐の島町)大字原田地先に多目的ダムとして平成12年に完成した。 この建設記録については、(株)大隆設計編『銚子ダム工事誌』(島根県土木部河川課、島根県隠岐支庁土木建築局・平成13年)の書がある。
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銚子ダムの諸元は、堤高39.7m、堤頂長 185m、総貯水容量 253万m3、型式重力式コンクリートダムで、その目的は、ダム地点における洪水量95m3/sのうち89m3/sの洪水調節を行い、かんがい用の既得用水の補給を図り、西郷町に対し、新たに水道用水最大 0.019m3/sの取水を可能ならしめるものである。施工者は(株)森本組、(株)福田組、カナツ技建工業(株)共同企業体、事業費 174億円である。補償関係は移転家屋8戸、用地取得面積36.2haとなっている。なお、関連事業として、西郷町上水道拡張事業、県道中村津戸港線改良工事が施工されている。平成6年夏には西郷町の水道用水が不足し、厳しい給水制限の日が続き、自衛隊による水運搬の支援を受けたが、この銚子ダム完成によって、このような給水車からのポリタンクでの水くみは解消されそうだ。
生コンを打ち終え語る夏休み (鈴木 茂)
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