5.北山川−坂本アーチダムの建設
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北山川は、その源を奈良県吉野郡北山村北部の境、紀伊山脈の中央部伯母峠(標高 991m)に発し、南流して天ケ瀬川を集め、小谷川、白川又川を集め池原ダムに注ぎ、東ノ川を同ダムで集水する。さらに流下し曲折しながら和歌山県に入り、大又川を合流し、七色ダム、小森ダムを流下し北山峡の美景を形成して「瀞八丁」で新宮川に合流する延長70kmの河川である。
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『工事報告:坂本アーチダム』
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坂本アーチダムは、昭和27年電源開発(株)の設立とともに新宮川の開発計画の立案に着手し、以来幾多の計画案の変更を重ねて北山川一貫開発計画の成案により、昭和37年奈良県吉野郡上北山村大字小橡、河合地先に完成した。このダムについては、電源開発・編『工事報告:坂本アーチダム』(土木学会・書和38年)が発行されている。
ダムの目的は、尾鷲第1発電所にて最大出力 40000KWを発電するものである。この電力は尾鷲第一発電所の変電所において中部電力(株)の送電線に渡し、中京工業地帯に送電されている。ダムの諸元は、堤高 103m、堤頂長 256.3m、堤体積18.3万m3、総貯水容量8700万m3、型式ドーム型コンクリートダムである。起業者は電源開発(株)、施工者は(株)熊谷組、事業費81.7億円である。なお、このダムは理想的な地質と地形に恵まれたものの、その反面交通の不便さと計画変更による補償交渉は困難をきわめたというが、昭和34年着手以来、3年の短期間で完成している。そして、電源開発(株)にとっては高さ 100m以上のアーチダムの第1号である。
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坂本ダム
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北山川建設所長西沢治は、坂本アーチダムの特筆すべき技術面について3点をあげている。
・ダムの高さ 103.0m、ダムの長さ 256.3mに対して、底厚12.5m、天端厚 4.0mの薄いアーチでそのバランスのとれたむだのない美しさはアーチダムの面目を遺憾なく発揮している。 ・コンクリートの品質管理が完璧に近く、91日強度 520kg/cm2、その変動係数6%は大方のダムエンジニヤーの驚嘆するところであった。また仕上がりコンクリートの美しさは、本邦はもとより、諸外国にも見ぬといわれる。 ・しかも、この計画、設計、および施工は全部国内技術の所産である。
このように、技術的にも経済的にも美的にも坂本アーチダムは優れており、さらになんら外国技術の援助を借りることなく完成したことを高く評価している。
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