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7.君ケ野ダム(雲出川)の建設

 雲出川は、その源を奈良県との県境、高見山北部の三峰山(標高1235m)に発し、八手俣川を合わせ、伊勢平野を流れ、長野川、波瀬川、中村川を合流し、香良洲で雲出古川を分流して伊勢湾に注ぐ。幹川延長57km、流域面積 550km2の一級河川である。

 流域の年降雨量は2000mmであり、昭和28年、13号台風、昭和34年伊勢湾台風によって、下流域において大被害を受け、抜本的な治水対策が必要となっていた。さらに、昭和40年代高度経済成長下に伴い、工業の発展で水需要が増大し、水資源開発が急務となった。



『君ケ野ダム工事誌』

 このようなことから、君ケ野ダムは三重県一志郡美杉八手俣地点に昭和47年に完成した。
 三重県編・発行『君ケ野ダム工事誌』(昭和47年)によれば、君ケ野ダムは次の4つの目的をもって造られた。

・君ケ野ダムの洪水調節容量は1580万m3であり、ダム流入量が 180m3/sを越えると、越えた水量の29%に相当する量を下流へ流し、残りの71%を貯留する。一方流入量が180m3/s以下の場合、洪水調節はせずそのまま下流へ流す。
 このようにして、洪水時で中流の大仰橋地点で3250m3/sの流量を2700m3/sに、下流大正橋地点で5000m3/sを4500m3/sに減少させる。
・下流の耕地は、農業用水が不足することがあるため、ダムにより必要に応じて補給する。
・津市、久居市、一志郡各町に対し、水道用水として 66000m3/日を供給する。
・中勢工業地帯の工業用水として、 54000m3/日を供給する。
 ダムの諸元は、堤高73m、堤頂長 323m、堤体積33.1万m3、総貯水容量2330万m3、有効貯水容量1970万m3、型式は直線重力式越型コンクリートダム、起業者は三重県、施工者は(株)熊谷組、事業費は51.7億円を要した。なお、水没家屋は41戸である。

 君ケ野ダムの管理をみてみたい。
 高水管理業務は、洪水時のデータの収集、放流設備の点検、警報、下流の巡視、関係機関の通知、そして洪水調節が行われ、緊張の連続である。
 最近では平成15年8月台風10号総雨量 419mm時に総調節量 169.8万m3、16年9月台風21号総雨量 453mm時に総調節量 600.9万m3を行い、減災を図った。

 一方、低水管理は下流基準地点の流量データの収集、流水の正常な機能の維持のための必要な補給の決定、そして放流操作となるが、綿密な作業が続く。
 平成12年1月〜12月、 123日にわたって補給量 762.7万m3、16年2月〜7月、46日にわたって補給量 559.9万m3を補給し、水供給量の平準化を図っている。

8.滝川ダム(比自岐川)の建設

 比自岐川は、その源を上野市と大山田村の境界付近の山地(標高 400〜 500m)に発し、丘陵地帯を西流し、途中、領主谷川を合流し、下神戸地先で木津川に合流する流路延長7.4km、流域面積 17.71km2の一級河川である。流域の年平均降水量は1400mm、年平均気温は13.5℃である。

 滝川ダムは淀川水系木津川支川比自岐川小支川滝川における三重県上野市高山地点に平成12年に完成した。この記録として、三重県編・発行『滝川ダム工事誌』(平成12年)、同編・発行『滝川工事誌・図集』(平成12年)が発行された。この「工事誌」によると、滝川ダムは、平成2年に国の補助採択を受け、10年3月に本体工事着手、12年完成した。

『滝川ダム工事誌』

『滝川工事誌・図集』

 ダムの目的は、

・ダム地点の計画高水流量20m3/sのうち12m3/sの洪水調節を行い比自岐川沿川地域の水害を防ぐ
・ダム地点下流の比自岐川沿川の農地の既得取水の安定化を図る。
・ダム地点下流の比自岐川に生息する動植物の保全や流水の清潔の保持を図る。
・上野市比自岐、高山地区に対し、 500m3/日の水道水を供給する。

 滝川ダムの諸元は、堤高29.8m、堤頂長 120m、堤体積3万m3、総貯水容量28.2万m3、有効貯水容量23万m3、型式重力式コンクリートダム。起業者は三重県、施工者は(株)大林組・日本土建(株)、(株)堀池組共同企業体、事業費72億円を要した。

 滝川ダムは、三重県初の生活貯水池建設事業であり、利水面では給水区域として、高山、摺見、比自岐、岡波、下神戸の一部に供給し、長年井戸水や谷水に頼っていて、渇水時にもらい水をするなど、その恒常的な水不足の解消が図られた。


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