[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]


11.安濃ダム(安濃川)の建設

 安濃川は、その源を経ケ峰(標高 820m)に発し、各支谷を合しながら約7km北方に流下して流路を東方に転じる。伊勢平野を流れ、芸濃町、安濃町を貫流し、津軽で伊勢湾に注ぐ。流路延長30km、流域面積 110km2の二級河川である。
 安濃ダムは、伊勢平野における農業用水の慣性的な水不足を解消する中勢用水事業の一環として平成3年三重県河芸河内地点に築造された。

 東海農政局中勢用水農業水利事業所編・発行『安濃ダム技術誌』(平成3年)によると、有効貯水容量 980万m3の安濃ダムを造り水源を確保すると共に安濃川掛りの地域22ケ所の井堰を4ケ所の頭首工に整統合し、新規利水地域には、用水路約97kmを新設するほか、これら全ての施設を結ぶ水管理施設を新設し、計画的、効率的に配水が図られている。


『安濃ダム技術誌』

 このほか整備等、関連事業の実施と相まって用水の安定的な、労働生産性の向上を図り、農業の近代化を目的としている。受益面積は3627ha、灌漑容量は 980万m3である。安濃ダムの諸元は、堤高73m、堤頂長 212m、堤体積24.6万m3、総貯水容量1050万m3、有効貯水容量 980万m3。型式重力式コンクリートダム、起業者は農林水産省、施工者は前田建設(株)、大日本土木(株)共同企業体、事業費は 221.3億円である。

12.中里ダム(牧田川)の建設

 北勢地方鈴鹿山麓から伊勢湾にいたる農業地帯の水田は古くから地区内の中小河川、ため池などを水源としていたが、いずれも水量が乏しく、安定取水できる水源の確保が望まれていた。また山麓の畑地帯はまったく水源をもたず、天水に依存せざるを得なかった。一方、この地方の産業の発展に伴い都市用水の需要が増大し、その充足も緊急な課題となっていた。
 三重用水事業において、これらの要請に対処するために平成2都市三重県いなべ市藤原町字鼎地点に中里ダム(調整池)が建設され、白乙流域と、岐阜県側木曽川水系揖斐川支流牧田川から取水するとともに、員弁川、河内谷川、冷川より取水して、このダムに貯留し主水源とした。


 水資源開発公団三重用水建設所編・発行『中里ダム工事誌』(平成2年)に拠れば、中里ダムの諸元は堤高46m、堤頂長 985m、堤体積 297万m3、総貯水容量1640万m3、有効貯水容量1600万m3、型式はゾーン型フィルダム(前面コアー型)、起業者は水資源開発公団(現・水資源機構)、施工者は大成建設(株)、事業費は70.8億円を要した。

 この三重用水事業は、三重県北勢地方約7700haの農地に対し、最大5.99m3/s、水道用水最大 0.668m3/s、工業用水最大 0.194m3/sを供給する。前述したように、木曽川水系揖斐川支流牧田川及び三重県内の田切川、員弁川筋から流域変更して中里ダムへ導入貯留し、打上、宮川、菰野、加佐登の調整池の建設によってそれらの流量調節を行うものである。導水については、幹線水路、用水路、支線水路、導水路の建設をもって各々の農地へ配水する。


『中里ダム工事誌』
 この事業の特色は、流域変更と、水源のほとんどが小河川の湲流取水に依存していることにある。北勢地方には、上記の水需要を一つの河川で賄うことができるような大河川がなく、小河川に余剰水があるとき取水して、調整池に貯留し利用することとなった。従って湲流取水の権利を侵害しない前提で行われ、権利者との調整に最も苦心されている。


[前ページ] [次ページ] [目次に戻る]
[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]