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10.田代八重ダム(大淀川水系綾北川)の建設

 綾北川は、宮崎県中央部に位置し、その源を熊本県多良木町の黒原山(標高1017m)に発し、山間部を東流し、尾股川、相見谷川などを合流し、綾北町地先で合流して本庄川となり、さらに宮崎県柳瀬において、大淀川に合流し、日向灘に注ぐ流路延長45.4km、流域面積 216.3km2、平均河床勾配 1/86と比較的急流の一級河川である。

 田代八重ダムは、この綾北川の上流宮崎県西諸県郡須木村(現・小林市)田代八重地先に多目的ダムとして、宮崎県によって平成12年に完成した。なお、この田代八重ダムの下流に、同様に宮崎県施行による綾北ダム(昭和35年完成)、古賀根橋ダム(昭和33年完成)、一方、本庄川に綾南ダム(昭和33年)に竣工しており、これらのすべてのダムは、水力発電の目的を持っている。


 綾北川総合開発建設事務所・アイドルエンジニヤリング(株)編『田代八重ダム工事誌』(宮崎県・平成12年)によれば、田代八重ダムは4つの目的を持って建設された。


『田代八重ダム工事誌』

・ダム地先の計画高水流量1240m3/sのうち、 350m3/sの洪水調節を行い、綾北川沿川地域の水害を防除する。
・ダム地先下流の綾北川、本庄川沿川の既得用水の補給や川の動植物の生息環境、水質、河川の景観を守るなど河川環境を図る。用水補給対象区域は総面積 850.45ha である。
・宮崎市に対し、水道用水として新たに 0.694m3/s(60,000m3/日)の取水を可能ならしめる。宮崎市の人口は36.7万人(平成18年9月現在)、この水道水の供給量は約14万人分であって38.8%にあたる。
・新たに、田代八重発電所を建設して、最大出力 5,800KWの発電を可能ならしめる。
 この田代八重ダムの諸元は、堤高64.6m、堤頂長 216m、堤体積 21.18万m3、総貯水容量1927万m3、有効貯水容量1427万m3、型式重力式コンクリートダムである。起業者は宮崎県、施工者は(株)大林組、(株)間組、(株)坂下組共同企業体、総事業費 342億円(ダム建設 289億円、発電所建設53億円)を要した。主なる補償は、土地取得面積約 135ha、移転家屋11世帯、付替道路公共補償などである。

 なお、共同事業費の負担金については、政令に基づく費用割り振りを行い、治水負担率72.4%(宮崎市)、水道用水18.0%(宮崎市水道局)、発電 9.6%(宮崎県企業局)のとおり決定された。



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