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8.久吉ダム(岩木川水系平川)の建設

 平川は青森県南津軽郡に位置し、その源を秋田県境の柴森山(標高786m)に発して、山間部を北流し虹貝川、三ツ目内川、大和沢川、引座川、浅瀬石川などの支川を合流し、藤崎町白子地先で岩木川と合流する、流域面積839.21km2、流路延長46.2kmの一級河川である。

 平川の上流地域では停滞前線による局地的集中豪雨が多くそのほか融雪、梅雨前線、台風と水害発生頻度が高く、昭和10年、昭和33年、昭和35年、昭和41年と度重なる洪水に見舞われ、特に昭和41年8月には平川上流、津刈川流域に前線性集中豪雨によって、温泉街の碇ケ関、大鰐地域は甚大な被害を被った。このため上流部にダムを建設し、災害の減災を図る治水計画がなされ、青森県によって昭和43年度から着手した遠部治水ダムが昭和51年3月に完成した。続いて、治水の安全度を高め、水源の高度利用を目的として、南津軽郡碇ケ関村大字碇ケ関地先に久吉ダムが平成6年9月に完成した。

 このダム工事記録、青森県土木部編・発行『久吉ダム工事誌』(平成8年)によれば、次の3つの目的を持っている。


『久吉ダム工事誌』
洪水調節
 ダム地点の計画高水量295m3/Sのうち、275m3/Sの洪水調節を行い、碇ケ関、大鰐地域の水害を防除する。また洪水調節は、人為的操作を伴わない自然調節方式をとっている。

・流水の正常な機能の維持
 ダム地点下流の既得用水の補給を行う等、流水の正常な機能の維持を増進をはかる。

・水道用水
 久吉ダム水道企業団(大鰐町、碇ケ関村)に対し、ダム地点において水道用として11.500m3/日(0.133m3/S)の取水が可能とする。


 久吉ダムの諸元は、堤高57m、堤頂長317m、堤堆積28.7万m3、有効貯水容量607万m3、総貯水容量673万m3、型式は直線重力式コンクリートダムである。起業者は青森県、施工者は大林組、三井建設、東急建設共同企業体、事業費231億円を要した。昭和57年8月損失補償基準妥結したが、主なる補償関係は、家屋移転33戸、用地取得面積50.37ha(そのうち国有林地43.7ha)、特殊補償として鉱業権1件、漁業権1件、津刈温泉の温泉権1件となっている。

 前述の昭和51年3月に完成した遠部ダムは、堤高43m、堤頂長158m、堤体積7.5万m3、有効貯水容量112万m3、総貯水容量142万m3の直線重力式コンクリートダムである。達部ダムは、ダム地点の計画高水流量150m3/Sのうち、120m3/Sの洪水調節を行い、久吉ダムとともに大鰐町、碇ケ関村の水害防除の一翼を担っている。

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