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13.小泊ダム(小泊川水系小泊川)の建設

 小泊村(現中泊町)は、津軽半島北西部に位置し、日本海に面しイカ、マス、メバル漁を主とした青森県内の有数の漁村である。また、小泊村と竜飛岬を結ぶ竜泊ライン沿いにはヒバの原生林が連なる。古来から風待ち港として、北前船が立ち寄る港と知られ、風光明媚な地形から津軽国定公園に指定されている。平成14年3月現在人口4395人、世帯数1500、面積64.62km2であったが、平成17年7月小泊村は中里町と合併して中泊町となった。

 小泊川は津軽半島北西部の四ツ滝山(標高518.3m)に、その源を発し、山間部を西流しながら板割沢川と合流し、小泊の街なかを経て日本海に注ぐ流路延長6.2km、流域面積11.5km2の二級河川である。

 小泊川流域は東北日本海型の気候を示し、降雨は梅雨期と台風期に多く、洪水被害はこの時期に多く発生する。流域の年平均降水量1215mm、年平均気温9.7℃である。

 小泊ダムは(遊仙湖)は、昭和63年〜平成9年にかけて小泊川の青森県北津軽郡小泊村字滝地先に小規模生活ダムとして完成した。

 このダム建設記録については、青森県五所川原土木事務所編『小泊ダム工事誌』(青森県・平成9年)が刊行され、この書により、小泊ダム建設の必要性、目的、諸元、特徴について追ってみたい。

 ダム建設の必要性は、昭和48年、50年、52年、53年と毎年のように河川の決壊、氾濫を繰り返し、とくに昭和62年8月には浸水戸数76戸、440百万円の被害を受け、これらの水害を防ぐためであった。

 最近の降雨資料に基づき、治水安全度を見直し、計画規模1/30、計画日雨量125mmとして、基準点出合橋における基本高水ピーク流量を現行45m3/Sから124m3/Sとし、計画高水流量をダム調節により97m3/Sとした。

 次に小泊ダムは3つの目的を持っている。

洪水調節は自然調節方式として、年間を通じて標高67.5mから標高75.1mの間の容量24.7万m3を利用してダムサイトにおける計画高水流量31m3/Sのうち28m3/Sを調節し、小泊川沿川の水害を防ぐ。

・小泊川は昭和55年、59年などの夏期においてはしばしば深刻な水不足に見舞われている。このため既存用水の補給、流水の正常な機能を維持と増進を図るとして、山朝橋地点において0.042m3/Sを確保するために標高62.4mから標高67.5mの間を利用して容量93000m3のうち37000m3を補給する。

・小泊村水道に対し、標高62.4mから標高67.5mの間の容量93000m3のうち56000m3を利用して、新たに最大水道水0.014m3/S(最大1200m3/日)の取水を可能ならしめる。

 小泊ダムの諸元は堤高33.5m、堤頂長121.5m、堤体積3.43万m3、有効貯水容量34万m3、総貯水容量40万m3、型式重力式コンクリートダムである。起業者は青森県、施工者は奥村組、日本国土、斉藤建設共同企業体、事業費62億円で、用地補償は、国有林地10haの取得であった。

 小泊の建設は昭和63年から平成9年3月までの工期であったが、その主な経過をみてみたい。

 昭和63年小泊ダム建設事業に採択される。平成3年11月事業用地が国有林地に伴い青森県営林局と基本協定を締結。同年12月工事用道路を着手。4年補償工事(林道)を着手。5年3月ダム本体工事の発注、6年5月ダム本体の定礎式が行われ、6年11月本体コンクリート打設完了(堤体積3.43万m3)。7年10月湛水を開始し、8年9月ダムの竣工式、9年3月にダム事業が完了した。

『小泊ダム工事誌』

『青森県土木五十年史』

(撮影:ふかちゃん)
 続いて、青森県土木部編・発行『青森県土木五十年史』(平成12年)により、小泊ダム建設の特徴について記してみる。

・ダム建設のための単独事務所が、青森県内では初めて開設されなかったこと。小泊ダムに係わる一切の事務処理は、五所川原土木事務所建設第二課河川第二係を中心として行われた。

・小泊ダムは青森県における最初の小規模生活ダムの建設であったこと。なお、小規模生活ダムは山間部や半島部などの小河川での局地的な治水、利水を目的としたダムである。

・小泊ダムの事業用地は、国有林地内であったこと。

・ダム現場が狭小なため、購入骨材の採用や汎用機械の積極的な、合理的な施工が行われたこと。骨材については、近くで入手できなく、購入骨材を利用せざるを得なかった。

コンクリート打設は、冬期休工期間を除いた11ケ月間で 3.43万m3の打設を終えたこと。

 前掲書『小泊ダム工事誌』で、青森県五所川原土木事務所の滝沢弘行、土岐勝彦両氏の論文「小泊ダムの施工を振り返って」に、

「小規模ダムである小泊ダムの施工にあたっては技術的に簡略化したということはない。他の通常ダムでもっていることを参考とした現状に則した対応により実施した……」

と、述べており、小規模ダムとはいえ、技術的には様々な調査研究がなされ施工された。


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