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1. ダムの事典

(1) 土木史・土木人物 
 三浦基弘・岡本義喬編「日本土木史総合年表」(東京堂出版・平成16年)を繙くと、縄文時代から1992年(平成4年)までの国内外の土木関連事業が年毎に記載されている。例えば323年頃、大阪府門真市堤根神社の淀川下流左岸側に、日本初の河川工事とされる茨田池、茨田堤を築造、記念碑が建立されてあると記されている。

 さらにこの書は、1891年(明治24年)、長崎市上水道工事完成、日本初のアース式本河内高部堰堤(高さ18.1m、堤頂長127.3m、有効貯水量36.16万m<上付>3)が完成、1900年(明治33)神戸市上水道工事完成、初のコンクリート重力式の布引五本松ダム(高さ33.8m、堤頂長110.3m、有効貯水量76万m<上付>3)が完成とある。両ダムとも吉村長策の設計であるが、最近老朽化が進み再開発が行われた。


「日本土木史総合年表」
 1939年(昭和14年)には、白岩砂防群(常願寺川)、今渡ダム(木曽・飛騨川合流点)、新郷ダム(阿賀野川)、立岩ダム(太田川)、さらに、1961年(昭和36年)高度経済成長期には、木地山ダム(最上川)、大倉ダム(名取川)、滝ダム(只見川)、御母衣ダム(庄川)、牧尾ダム(木曽川)、大武川砂防ダム(富士川)、笹間川ダム・畑薙第2ダム(大井川)、二瀬ダム(荒川・埼玉県)、風屋ダム(熊野川)、大淀川ダム(大淀川)など多くのダムが建設された。

 また、索引には〔埋立て・干拓・開発〕、〔エネルギー施設〕、〔河川施設・疏水・運河〕、〔上水道・下水道、工業用水道〕、〔ダム(堰堤)〕、〔トンネル(隧道)〕など22項目に分類されており、人名索引もあり、土木史が一目瞭然に理解できるようになっている。

 藤井肇男著「土木人物事典」(アテネ書房・平成16年)では、幕末期から昭和時代までの間に土木の世界に身を置いた日本人500名の略歴や業績、横顔などを簡潔に述べてある。もちろんダム建設に活躍された技術者も掲載されている。

 伊藤令二について次のように述べてある。
 「1902.9.2〜1990.8.30。静岡県に生まれる。1927(昭和2)年に東京帝国大学工学部土木工学科卒。内務省に入り土木試験所、横浜土木出張所勤務を経て、36年、富山県に出向し、有峰ダム建設工事に従事し、41年内務省に復帰する。戦後、内務省が解体され、1948年1月に建設院が発足し、水政局利水課長兼砂防課長、同年7月建設省が設置されると、中部地方建設局長を経て、中国、四国、関東の各建設局長を務め53年に退任する。その後、東京電力会社を経て電源開発会社に転じ、奥只見ダム、御母衣ダムの建設所長として大型ダムの建設にあたった。著書に「堰堤工学」(1947年)がある。」


「土木人物事典」
 その他のダム技術者として、小牧ダムの建設に尽力した石井頴一郎、矢作川水力発電事業の大西英一、鴨緑江の水豊ダム、日本工営会社の設立者久保田豊、小河内ダムの建設に尽力した佐藤志郎、佐久間ダムの建設所長永田年、台湾烏山頭ダムを完成させた八田與一、大分県砂防課長で由布岳の崩壊を防ぐ堰堤を計画しながら殉職した宮崎孝介も記載されている。ダム建設史を巡る書である。

(2) ダム年鑑・農業水利ダム集 
 現在わが国においては、約2 700基のダムが建設されている。これらのすべてのダムを網羅している日本ダム協会編・発行「ダム年鑑」(平成19年)は、毎年刊行されている。この年鑑には施工中(新規着手を含む)、実施計画調査、全体実施設計中のダム(原則として高さ15m以上)を収録し、さらに湖沼開発、遊水池、河口堰、頭首工についても掲載されている。
 その内容は第1編 ダム事業の現況と計画、第2編 全国ダム施設現況、第3編 全国水力発電所設備・現況、第4編 水資源対策、第5編 工事経歴と納入実績、第6編 帳表別解説、それにダム位置図からなる。日本のダム建設について、水系毎に、都道府県別に、全体像を捉えている。

 また農業水利のダムについては、昭和59年発行、公共事業通信社から農業水利ダム集大成編集委員会編「農業水利ダム集大成全3巻」がある。


ダム年鑑
「農業水利ダム集大成 第1巻」

「農業水利ダム集大成 第2巻」

「農業水利ダム集大成 第3巻」
 第1巻は農業用水の現状と将来、農業用のダムの技術の変遷、横川ダム及び内の倉ダムのコンクリートダム、城原ダムの均一型フィルダム、御料ダムのゾーン型フィルダムの決定を詳述。そして安濃ダム、合所ダムなどの洪水量の決定と堆砂及び背水について検討がなされており、さらに、コンクリートダム材料における岳ダムのコンクリート配合設計、真栄里ダムの堤体設計、浪岡ダムの遮水ゾーン接合ブロック設計、双葉ダムの監査廊の設計などが述べられている。
 第2巻では、洪水吐の設計、取水設備、観測計器、費用振分、さらに仮設備計画、基礎処理工、工程管理、品質管理を論ずる。
 第3巻は、管理(初期湛水)、ダムの挙動、構造物管理、利水管理、特別仕様書、ダム操作規定、資料からなり、全国の農業用ダム一覧表もある。以上、農業水利ダムの調査から計画、設計、施工に関する資料を各ダム毎に集成されている。農業土木技術の向上と良好なダム管理を資することを目的として編集された。


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