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大滝ダム竣工式に行ってきました

 これは、「月刊ダム日本」に「ダムマイスターレポート」として掲載された記事を転載したものです。著者は、ダムマイスターの夜雀さんです。

 平成25年3月23日、ダム仲間と一緒に奈良県の大滝ダムに向かいました。昨年3月30日にサーチャージ水位に到達し、試験湛水を終了した大滝ダムの竣工式です。
 竣工式を迎えるまでにも台風はやってきました。昨年も洪水調節を実施してくれています。なので、竣工式がほぼ一年も経ってから行われるという事に不思議な感じを受けた人もいたようです。
 竣工式はダム建設とダム管理、その歴史とこれからの役割を地元の方や、流域の方にお伝えする記念の式典であると思います。
 自分は今までダムの竣工式というものを見た事はありませんでしたので、工事中からずっと見てきた大滝ダムの晴れ姿を見たいという思いで竣工式の取材をさせていただきました。近畿在住のダム仲間も駆けつけてくれまして、みんなで手分けして当日の様子を記録してきましたのでご報告します。



 大滝ダムへの道は堤体が見えてからトンネルをくぐり、ダム湖側に回って駐車場に入ります。
 大滝ダム左岸駐車場への交差点にはこんなモニュメントができていてお出迎えしてくれました。竜神をイメージしたモニュメントです。


大滝ダム入口交差点に設置された竜を象った竣工式の表示
(撮影 ダム愛好家 ひろし様)
 駐車場はたくさん用意されていて、堤体に近いところは関係者と報道用。一般とダムマニア用にも別途確保されていました。
 曇り空の下、ダム湖には水がたくさん溜まっています。右岸の山に残る建設時のクレーン橋脚と移動塔は今日の竣工式に合わせて整備され、誰でも見に上がることができるようになりました。

一般とダムマニア用駐車場入口

 ダム周辺の説明板も充実しています。今までは殺風景だったコンクリートの壁にも見やすい素敵な説明板がいくつも並びました。ダム周辺散策マップやダム建設の歴史年表、ダムの諸元にダムの仕事。
 ここを見たら大滝ダムのことが十分理解できる内容です。各ゲートなどの詳細な説明はダム天端の説明板にあります。
 右岸に移動した時に、丁度、ダム湖名碑の神事が行われていました。竣工式に先立ってダム湖名の発表とダム湖名碑の除幕式がここで行われます。


ダム湖名碑の神事
 除幕式までまだ時間があったので、右岸クレーン移動塔を見に行きました。
今までは手すりなどもなく、階段もなく転落の危険があるために解放されていなかったこのクレーン移動塔。富山県の黒部ダム建設時に使われたものです。黒部ダム建設後、真名川ダムの建設で使いたいという声もあったようですが(真名川ダム工事誌より)、先に大滝ダムが確保したそうです。そしてここでずっと仕事ができる日を待ち続け、工事で活躍し、今は仕事を終えてここで余生を送ることになりました。日本の土木史にとってとても重要な産業遺産です。その価値から、ここで永久展示するために今回の竣工式に向けて整備が進められていたのでした。

手摺や案内看板も整備された

黒部ダムでも使われたクレーン移動塔
(撮影 ダム愛好家 やまとり様)
 移動塔を愛でていると下ではどんどん人が集まり、もうすぐ除幕式が始まる時間になりました。
 関係者の方からのメッセージがありダム湖名の発表の後は除幕式です。地元の小中学生の方が風船を手に参加です。合図とともに空に舞う風船。
 白布が外れてダム湖名碑が姿を現しました。ダム湖名は『おおたき龍神湖』に決まりました。
続いて記念植樹です。湖畔を彩る立派な木になって欲しいです。

竣工式行事会場全景

地元の子供達と関係者による風船放天
(撮影 ダム愛好家 やまとり様)
命名:おおたき龍神湖
(撮影 ダム愛好家 まっちゃん様)

記念植樹
(撮影 ダム愛好家 まっちゃん様)
 この後、竣工式ということで関係者の方、取材、報道のスタッフはマイクロバスで竣工式会場に移動です。自分も取材できていますのでマイクロバスに乗り込みます。
 除幕式までは左岸側の利水放流バルブから出ていた水は華やかな計画水位維持放流設備(通称:カスケード)に切り替えられました。お祝いムードを放流も盛り上げてくれます。式典に入れなかった一般の方もせっかくお越しいただいたのですから、素敵なダムの姿をみたいですよね。気配り万全の竣工式。


見事なカスケード放流
(撮影 ダム愛好家 まっちゃん様)
 この頃、堤体周辺は右岸クレーン移動塔もですが堤体の左岸側から外部桟橋を通るルートが解放され、更に左岸下流広場(命名:ダイナミック広場)にも入れるようになっていて、お越しになった方が堤体周辺散策を始められていました。
 自分は竣工式取材のため散策は後回しに。



 ダム下流にある川上小学校の講堂で竣工式です。
 たくさんの方がお越しくださいました。水没地から移転された方、用地協力者の皆様もたくさんお越しくださっていました。
 会場には昔の川上村の様子が写った写真パネルも展示され、届いた祝電も紹介されていました。
 オープニングは地元の川上村の子供たちによる和太鼓の演奏です。迫力のある演奏で会場が大きな拍手に包まれました。

 まず、国土交通省 水管理・国土保全局長から挨拶があり、続いて事業経過報告が紀の川ダム統合管理事務所長からスライドで説明されました。


竣工式式典会場全景
(撮影 ダム愛好家 まっちゃん様)
事業経過報告
(撮影 ダム愛好家 まっちゃん様

コンクリート最終打設
(撮影 ダム愛好家 まっちゃん様)
 大滝ダムは、昭和34 年の伊勢湾台風の被害を受けて計画されました。伊勢湾台風ではこの川上村でも死者72人、全遺流失家屋209戸という大変な被害を受けました。昭和37年に大滝ダム建設の調査が始まりましたが、地元の反対運動で計画はなかなか進みませんでした。川上村にはすでに農林水産省の大迫ダムの計画があり、水没地の拡大は村にとって大変な問題であったためです。
 昭和56年にようやく、川上村・奈良県・建設省が調印して工事が始まります。
 付替道路と代替移転地の整備が進み、平成2年に着工しました。
 平成15年、初めての試験湛水の途中で上流の白屋地区に地滑りが発生し試験湛水は中断されました。
 地滑り対策工事と白屋地区の方の移転が終わり、二度目の試験湛水に臨んだのは平成23 年12 月のことでした。
 日に日に上がる水位、サーチャージ水位に達する直前の豪雨、今度こそ試験湛水が成功しますようにとお祈りするような気持で大滝ダムの様子を何度も見に行きました。
 平成24年3月30日、大滝ダムはサーチャージ水位に到達しました。そして順調に水位低下を達成し、平成24年の台風17号でも見事な洪水調節をやってのけたのです。
 たくさんの方から祝辞を頂き、竣工式は終わりました。少し雨はぱらつきましたがお天気も持ちました。マイクロバスでダムに戻ります。

大滝ダムサーチャージ水位到達
(撮影 ダム愛好家 まっちゃん様)

竣工式典も無事終了


 この日、大滝ダム上流の道の駅では竣工式に合わせてイベントが行われていました。
 美味しい物がたくさんあったようです。お祝いのお餅もふるまわれていたとか。自分は大滝ダム周辺で売られている柿の葉寿司がいつもこのエリアに来た時の食事なのでこの日も買いに行ったのですが、柿の葉寿司のお店でも「ふるまい餅」ということでお餅を戴きました。
 お昼御飯を食べて、解放されている外部桟橋の展示を見に行きました。防災について国土交通省が担う役割と災害時の実際の活動の紹介パネルがあり、その奥には大滝ダムの写真コーナーが用意されていました。
道の駅でのイベントの模様
(撮影 ダム愛好家 やまとり様)

大滝ダム下流に設置された外部桟橋
 全部ではありませんが、近畿地方で配布されているダムカードの展示もありました。
 そして今回、竣工式に合わせてダム愛好家にもスペースを頂き、ダム仲間の写真を展示させてもらうことができました。可愛いコメントは紀の川ダム統合管理事務所の方の手によるものです。
 ダム仲間の写真は、サーチャージ水位到達時に全国から大滝ダムをお祝いするために集まったダム愛好家の力作です。サーチャージ水位二日目の土砂降りの中、必死で撮影を頑張る様子も展示されていました。

ダムカードの展示

ダム愛好家の写真展示も
 竣工式の時に「50年」という言葉が何度も出てきました。大滝ダムが計画されてから50年の月日がたったのです。
 平成25年は、黒部ダム(富山県)完成50周年の年に当たります。黒部ダムができた頃は、戦後の復興と経済発展のために電気がとにかく必要だという気持ちでたくさんの発電ダムが建設されました。50年経った今、ダムは災害から人と暮らしを守るために防災の礎として働かなくてはならないようになってきました。

  ダムは人のために作られるものです。
  人の為に仕事をするものです。

大滝ダムを見上げる左岸広場から堤体を見上げて思います。
「これから本番です。お仕事、見事に果たしてください。いつも応援しています」と。


左岸広場から見上げた大滝ダム
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(2013年7月作成)
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 (夜雀)
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