東京お台場の東京カルチャーカルチャーにて、「ダムナイト6」が開催された。昨年末に行われた「日本ダムアワード2013」から半年ぶりのダムイベントとあってか、120席用意されたチケットは早々に完売!。注目の高さ、人気の高さがよく分かる。
ダムナイト6の看板。チケット完売
開場前の様子 18時から放流(公演)開始であるが、開場時間の17時には入口に行列ができていた。過去の開催では会場内に物販ブースを作っていたが、席数確保の為に会場内にブースを作るスペースが確保できなくなったため、今回は物販ブースは外に。土木系グッズを多数手がけるマニアパレルさんのTシャツやダムぐるみ、2014年6月に出版された4名のダム愛好家による写真集「ダムを愛する者たちへ」、2014年7月に発売された、ダムの空撮映像が楽しめるDVD「絶景ダム −空撮− 誰も見たことのないダム」等が並んでおり、現地で購入されたかたもいらっしゃったようだ。
ダムナイト名物のダムカレー ダムナイトは、食事やお酒を楽しみながら参加できるトークショー。ダムナイトオリジナルのフード・ドリンクも提供される。 名物「ダムカレー」は今回も開場20分には売り切れのアナウンスが入る大人気ぶり。追加で仕込みを行い追加販売も行われたが、それもすぐに売り切れていた。 ダムをイメージしたオリジナルカクテル「四万川ダム」「三春ダム」も提供。四万川ダムのカクテルは「四万ブルー」をイメージさせる美しいブルー、三春ダムは新緑を感じる爽やかなグリーンのカクテル。
乾杯 そしていよいよ開演時間。出演者の萩原さんの乾杯の音頭でダムトークライブがスタートした。
●自己紹介
出演者の皆さん。左より萩原さん、星野さん、琉さん、宮島さん 「ダム好きによるダム好きのためのダムトークライブ!〜もういちど、あのダムへ行こう〜」日本を代表する4名のダム愛好家が出演。
萩原雅紀さん(HP「ダムサイト」) ダムライター。デイリーポータルZでの記事等ご覧になられている方も多いと思う。書籍やDVDの出版やトークショー等、ダムに関連した幅広い活動を行われている。 今回は小河内ダムのダムサイトに立つご幼少時の写真を公開!初めて立った場所はダムだった(かも?)という、本当にダムと縁が深い方なんだなぁと思うエピソードを紹介。
星野夕陽さん(HP「ちょいとダムに行ってくる」) ダム愛好家。訪問したダムの数は約4年で500基にのぼる。執筆活動やテレビ出演等も精力的にこなす。ダムの防災活動について詳しく、近年のダムの洪水調節対応についての講演も行っている。 元々は土木全般に興味を持っていたが、ある女性ダム愛好家との出会いがダム愛好家への道を進むきっかけとなったというエピソードを紹介。
琉さん(HP「DamJapan」) 高校生の頃からダム巡りを始め、ダム王子と呼ばれる。最近はダムツーリズムプロデューサーとして、地域と連携したダム巡りツアー等を企画するなど、観光資源としてのダムの活用に力を入れている。 昔は太ってました〜と、ダム巡りを始めた頃?の写真を公開。会場からのどよめきが印象に残った。
宮島咲さん(HP「ダムマニア」) ダムマニア&ダムライター。ダムに関する本の出版や、数々の講演や、テレビ等へも多数出演され、ダムへの理解促進・ダムファンの拡大に日々尽力されている。 最近は、ダムカレーで町おこし、といった相談を受けることが多くなってきたとのこと。ダムのある地域の名物としてダムカレーの設計・施工に協力されている。
●僕の好きなダム
自己紹介を兼ねて、好きなダムを紹介しましょうか、という流れになり、萩原さんが宮ヶ瀬ダムを紹介。宮ヶ瀬ダムの洪水吐きの特徴である天端側水路に実際に入って見学させてもらったという話に周囲から「いいなぁ〜」の声。 続いて宮島さんが奈良俣ダムを紹介。当時ロックフィルダムを知らなかった宮島さん、ドライブしていてカーブを曲がったらいきなり巨大な堤体が目に飛び込んできたという衝撃的な出会いをしたというエピソードを紹介。
そのまま自己紹介が続くと思いきや、奈良俣ダム建設当時は真っ白だったよねぇ、出来たての新しいダムって真っ白だよね〜という話になり「白いダムを挙げてみましょうか」といった流れになり各自のダム画像フォルダが火を噴きはじめることになる。
奈良俣ダムからアイドルの座を奪ったという南相木ダム、昨年完成してばかりの湯西川ダム、出来てからだいぶ経つけどまだ白い方じゃない?という滝沢ダム、こちらも近年完成したデザイナーズマンションみたいな苫田ダム。新しいダムは真っ白だけど打設の際に冷却のために流していた水の水質の影響で黄ばんでしまいちょっと残念だったという小原ダム、自由越流堤頂の志津見ダムも白いよね…と観客を待たせることなく、次々と出てくる白いダム。志津見ダムの写真は、試験湛水時の全面越流の写真で観客席から「おぉ〜」と反応があった。
志津見ダムの全面越流 同じダムでも訪問タイミングで色味が全然違うダム。夕張シューパロダムの画像は、出してきた人それぞれで色が違った。晴れた日の写真では白く、雨の日の写真では黒っぽい。水に濡れることでコンクリートの色味が変わるよね、という話もあった。 また、天候の話から、大滝ダムの試験放流では多少の雨ではその場を離れることのないダム愛好家が撤退する程の物凄い大雨だったというエピソードも紹介された。
●ダムの型式について
休憩時間をはさみ、次はダムについてあまり知らない初心者の方へ、ダムの形式を紹介することに。実際に行ってきた写真を使って紹介。
重力式コンクリートダム(蓮ダム・丸山ダム・境川ダム) アーチ式コンクリートダム(佐々並川ダム・温井ダム・高根第一ダム) マルティプルアーチダム(大倉ダム・豊稔池ダム) バットレスダム(丸沼ダム・笹流ダム) アスファルトフェイシングフィルダム(沼原ダム) 中空重力式(高根第二ダム・内の倉ダム) ロックフィルダム(味噌川ダム・高瀬ダム・下小鳥ダム・九頭竜ダム・手取川ダム) アースダム(勝浦ダム・野花南ダム・千軒平溜池・大萱林道溜池)
もう羽ばたいてるようにしか見えないでしょ? 萩原さんが境川ダムの遠景が鳥の羽ばたく姿に見える、というのがなかなか理解されないので作ってきました!という合成画像で会場が沸いた。
バットレスダムの丸沼ダムは、渡し船から見るダムというところに観客からの反応があった。(私は春に丸沼ダムに行ったが時期が早すぎて渡し船に乗ることができなかった…。)
ロックフィルダムの味噌川ダムの写真を見て「えぇ?今こんなに草が生えてるの…」宮島さんがびっくり。完成当時はとってもきれいな石積みだったそうだ。草が生えてしまっていることについての話も出たが、ロックフィルダムの堤体の色は地域色が出るよね、という話も出た。ダムに積み上げる石は近くの原石山から切り出してきた石を積んでいくので、その地域の石の色が堤体の色となる。日本海側のロックフィルダムは黒っぽい傾向があるそうだ。そういう視点でダムを眺めるのも面白いなぁと思った。
アースダムでは地元の方に場所を尋ねてもダムという認識がされていない事が多いという話があった。「このダムはどこにありますか?」と尋ねてもポカーンとされたりするが「この溜池を知ってますか?」と尋ねれば「あぁそれならあっちにあるよ」と返ってくることが多いとのこと。 また、手入れがされているか否かといった話でも盛り上がった。草がぼうぼうで堤体がどこだかわからないようなものも多数ある。そのようなダムに向かっている自分を地元の方が怪訝そうに見送っている姿になかなか慣れなかったりといった経験談に一同頷く場面もあった。
●ダム巡り
続いてのテーマは「ダム巡り」。これからダム巡りを始める際の参考にもなるかなぁということで、それぞれのダム巡りのプランニングについて紹介してもらうことに。
皆さんダムの場所を確認する手段として、「ダム紙幣」でお馴染みのtakaneさんが公開している「DamMaps」を活用されていた。 DamMapsが出来るまでは、ダム巡りの計画を立てる時のお供は紙の地図だった。そこからダムかな?と思うところを探して行ってくるという形だったので、一日に10か所もまわるような計画はなかなか立てられなかったという。
星野さんのダム巡り例 便利なツールに支えられている例が、ゴールデンウィーク2泊3日で計画したという、星野さんの東北地方のダム巡りの地図。表示されると、プロットされていた地点の数の多さに会場がどっと沸いた。全部で30か所ぐらい回ったとのこと。
行程を考える時は、道で決めるのではなく、水系で。川をたどれば立ち寄るダムが決まってくるとのこと。 ダム巡りをしていくとルート上に道の駅があったりするので、上手に活用してその土地の名産品を楽しむのもいいなぁと思っている。
失敗した例なんですが…と宮島さんが出してきたのが北海道のダム巡りの地図。日本最北端のダムに行くルートを考えてルートを引っ張ってみたけれど、トータル10時間かかるって算出されて時間足りないので考えてるところです、とのこと。
川をたどって順々に巡って行けるダムとは別に、ぽつんと離れたところに存在しているダムに行くのは悩ましいという話も出た。本州最北端の川内ダムは下北半島にあり、かなり迂回して行かないといけないのだ。 そのような離れたダムの訪問はついつい後回しになってしまう傾向があるようである。しかし色々なダムを訪問していく内に、「訪問出来てないのはこのダムだけか。このエリアのダムはすべてコンプリートしたいから行こう!」というような形になることもあったりするようで、後回しになることはあっても、行かないという選択に行き着くことは少ないようだ。
●自宅でのダムの楽しみ方
ダム巡りだけがダムの楽しみではない。出かけられない時もある。台風など災害発生時はダムに行くことは危険だ。自宅でダムの様子を楽しむ方法はあるのだろうか。
数字をつまみに呑める →川の防災情報 最初に挙げられたのは国土交通省が提供している「川の防災情報」だ。全国の川の状況、防災操作を行うダムの数字が誰でも見ることができる。実際に過去にあった防災操作に関する数字のスクリーンショットを幾つか挙げ、数字から読み取れる防災操作を説明。パッと見て数字だけじゃよくわからない、という人も、説明を聞きながら眺めていると「うわぁ凄い!」と驚いたりできたようだ。
ただ、川の防災情報の掲載情報は物足りない部分があって、もう少しイメージがつかみやすい情報を提供してくれるといいなぁ、新潟県の河川防災情報システム等は大変分かりやすい表示を行われているので、これが全国のダムで見ることがでいるといいのにね、といった意見もあった。
→GoogleMapのストリートビュー 360度撮影できるカメラで街中を走り回って作られているGoogleMapストリートビュー。どんどん撮影エリアが広がっているが、ダム周辺にもストリートビューカーが来ているようで、ストリートビューでダム巡りを楽しむことも出来るようになってきている。例としてアクセスした下久保ダムでは、直下の広場までストリートビューカーが来ており、ダム下からの下久保ダムを鑑賞することが可能になっていた。気になるダムの近くにストリートビューが来ているようだったら、ダムが見えないかチェックしてみても楽しいだろう。
→ツール・ド・フランス 毎年7月に行われるサイクルロードレース「ツール・ド・フランス」では、自転車レースの映像を空撮等でも行われている。テレビでは、コース上にある史跡や観光スポット等も紹介されるのだが、そのコース上にダムがあったりするそうだ。自転車のレースを楽しむ際に、ダムの空撮や周辺施設等もチェックできて、ダムファンには二度美味しいのでオススメとのこと。
→映画 映画の中でダムが出てくることもある。日本最大のダムを占拠したテロリストから人質を救うべく立ち上がった青年の活躍を描く「ホワイトアウト」では国内のいくつものダムがロケ地として使われたそうだ。映画だけでなく、テレビドラマ等でもダムが出てきたら、それがどこのダムなのか、パッとわかると満足するよね、逆にわからないと引っかかって仕方がない。ダムが見えた瞬間、ネット等駆使してどこのダムか調べるよね、といった話で盛り上がった。
●森と湖に親しむ旬間
近々始まる「森と湖に親しむ旬間(7/21-7/31)」のイベントで、オススメはありますか?という質問があった。それぞれのオススメはこちら。
星野さんは「鬼怒川4ダム(川俣ダム・湯西川ダム・川治ダム・五十里ダム)見学会」。1日で4つのダムの見学が同時開催される。アーチダムの川俣ダム・川治ダムではキャットウォークと呼ばれる監査廊を歩くことができる。このような体験が出来るのは、このイベントの時だけ!とのこと。
琉さんは「小渋ダム解放(自由見学)」。昨年実施され大好評だった小渋ダムの解放イベント。通常職員の引率で決まったルートをめぐる形の見学会になるところを、見学者が自由に見て回れるようにしてくれている。日本ダムアワード2013でイベント賞を受賞したオススメイベント!とのこと。
宮島さんは「おけと湖水まつり(鹿ノ子ダム見学会)」。北海道のダムですが、監査廊に絵が描ける…かも!(※)ちょっと遠いですが絵が描けるのはここだけなのでオススメとのこと。 ※イベント情報に監査廊アートについての明記がないので要確認
萩原さんは、西荒川ダム、笹生川ダム、手取川ダムといった、普段は立ち入り禁止で近づけないダムの見学会がオススメとのこと。
「森と湖に親しむ旬間」に開催されるイベント情報については、国土交通省の紹介ページに一覧データが掲載されているので、是非チェックして頂ければと思う。
今回のトークショーはフリートーク形式だったので、おおまかなテーマは定義しているものの、予め作っておいたスライドでプレゼンする形ではなかったようで、出演者の皆さんも、白いダムの話の時のような、話題に出てきてから画像を探す、といった形が結構あったのだが、サクサクと画像を出してこられて訪問しているダムの多さは勿論、パッと思いついて出してこれることに凄いなぁと感心しながら聞いていた。 このレポートを書く為に書き込んでいたメモに記されたダムの名前は43基あった。聞き漏らしもあった気がするので、実際はもっとあったかもしれない。3時間のトークイベントの中でこれだけのダムの写真をダム愛好家の説明と共に一気に鑑賞できるとは。なんと濃いイベントだったのだろうか。
話が盛り上がると、ついついマニアックな話になりそうになったり、説明が省略されてしまうようなことがありがちだが、きちんと要所要所で初心者にもわかるように説明を加えてくれたり、「今のダムは何処の何ていうダム?」とか聞いてたりと、聴いている人への心配りを随所に感じるトークショーだった。 イベントの様子は、USTREAMでも放送された。会場に来ることが叶わなかったダムファンの方々も楽しむことが出来たようでよかったと思う。
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(2014.7.15、NOW2000)
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