《このごろ》
日本ダムアワード2013 〜2年半ぶりに「ダムナイト」〜

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平成25年も暮れようとしている12月29日の夕方5時、お台場のカルチャーカルチャー、通称『カルカル』には多くのダム愛好家達が詰めかけた。2年半ぶりとなる「ダムナイト」が開催されるのである。

今年のテーマは『日本ダムアワード2013』
様々な分野で活躍したダムを選び、表彰しようというものだ。
午後5時に開場。場内は、ダム関連生書籍等の販売で賑やかである。
『ダムマニア』、『ダムカード大全集』、『水力ドットコム』、『ダム』などのおなじみの書籍の他、『ダム』『ダム2』の文庫版、ダム空撮DVD(今回初お目見え)などを買い求める人で開始前から熱気が漂う。


午後6時にいよいよ開幕。総合司会は萩原雅紀さん。今回はチケット完売で、手に入れられなかった人が会場近くで余ったチケットを求めていたという話も。
また今回が初参加という人も結構いた。ダム愛好家も止まる所を知らず、増加の一方なのかも知れない。

本日のプレゼンテーターは、萩原雅紀さん、琉さん、Dam master さん、サキさん、星野夕陽さんの5名。


まずは、萩原さんから『ダムアワード』の説明があった。要約すると、ダムは人知れず役に立っているが、その活躍はあまり報じられない。そこで今回、今年一年を通して活躍したダムを紹介し、それぞれの分野で最も活躍したと思われるダムを表彰しようというのである。

今回のイベントを開くにあたって、ダムマニアやダムファンからなる選考委員により28ダムがノミネートされた。これらのダムを次の各部門で表彰しようというのだ。

1.放流賞
2.イベント賞
3.低水管理賞
4.洪水調節賞
5.ダム大賞

参加者の席には事前に『投票用紙』が配られており、それにはノミネートされたダム名が書かれている。プレゼンテーションを聞いて、どのダムが最も活躍したと感じたかを投票するのである。


☆放流賞
まずは萩原さんの放流賞ノミネートダムの説明から始まった。
例によって、それぞれのダムの特徴が事細かく語られ、知らず知らず話に引き込まれていく。
ダムマニア達によってノミネートされただけあって、どのダムも百戦錬磨の強者に思える。それらが迫力のある写真とともに紹介されるので、目をそらす暇も無い。また、たまに笑いも取るところはさすがである。
片方のゲートが壊れていながらも放流を行った宮川ダム。
台風18号の豪雨での天ヶ瀬ダムのど迫力の放流。
川治ダムの点検放流や畑川ダムの大晦日の試験放流など。
いずれも、それなりに何かしらのエピソード付きの放流である。


☆イベント賞
次に、琉さんによる『イベント賞』のプレゼンテーション。
壇上の琉さんはいつにもましてビジュアル系だった。それはともかく、イベント賞をかいつまんで紹介すると…。

漫画やアニメで大人気の「進撃の巨人」をモチーフにしたまちおこしコスプレイベント会場にダムを提供した大山ダム。
フル開放とでもいうべき「小渋ダム開放DAY」。
命綱をつけての放流管見学会……月山ダム。
季節毎に工夫を凝らした見学会を行う津軽ダム。

…など、いずれ劣らぬ『行ってみたくなる』イベント揃いであった。


☆低水管理賞
水無しでは人は生きてはいけない。その大事な水を貯め、供給してくれるのがダム。
しかし、ダムにも『容量』という限界がある。
ここでは、dam masterさんとサキさんにより、その『容量』の限界に挑んだダム達が紹介された。

給水制限が続いたが、貯水量20%強までがんばった早明浦ダム。早明浦ダムは過去にも一夜で0%から100%に回復したという逸話が残されている。
それから、うどん県香川の秘蔵の水瓶・宝山湖。
ダムマニアの雨神様、神馬シンさんも雨乞いをした宇連ダム。
人工降雨機を備えている、首都東京の渇水対策最終兵器、小河内ダム。
貯水率が少なく、点検放流が中止になった矢木沢ダム。過去には、ホルムアルデヒド流出事件の時に放流し、毒の濃度を薄めるという秘技も使ったという。
三重県の農業用水を司る安濃ダム。しかし、渇水で貯水率が0%まで低下し、給水停止にまで追い込まれた。困り果てた近隣の農家の方々が雨乞いまでしたという。ダムも万能では無い。しかしダムが無かったら、さらに大変なことになっていただろうということは想像に難くない。


☆洪水調節賞
近年、台風は大型化し、また、局所的な豪雨もしばしば起きるようになってきた。
治水機能を持つダムも、この凶暴化してきた気象には全力で戦いを挑まざるを得ない。
そんな決死の洪水対策を行ったダム達が、最近テレビでもおなじみの星野夕陽さんによってプレゼンテーションされた。

京都嵐山での桂川氾濫の映像は、記憶に焼き付いている。日吉ダムは、その上流で限界まで水を溜め込んで下流の洪水を防いだ。もし日吉ダムが無かったら、渡月橋は跡形も無く流されていたかも知れないし、京都の町もどうなっていたかわからない。
御所ダムは、8月9日の洪水時に既往最大(H19.9.17の2,197m3/s)のなんと1.7倍もの3,733m3/sが流れ込んだが、このうちの2,548m3/sを貯め込んだ。これは計画高水流量の1.5倍。的確なダム操作で、盛岡市をはじめとする下流の町は守られた。
山口県の阿武川ダムでも、上流で鉄橋が流される等の被害が出たが、阿武川下流では一切被害は出なかった。
四十四田ダムにおいても、台風18号の出水から北上川沿川の町を守った。
木津川では水機構の管理する5ダム(高山、比奈知、青蓮寺、室生、布目の人呼んで木津川戦隊ゴレンダム)が力を合わせて下流の京都大阪を守った。その裏には、攻めの洪水調節オペレーションがあったという。


以上のプレゼンの後、会場の参加者が記入した投票用紙が集計され、ダムアワードそれぞれの賞が決定した。

1.放流賞 川治ダム:マニア受けする点検放流がマニア心をくすぐったようである。

2.イベント賞 小渋ダム:何の制約もない開放日。マニアは心ゆくまでダムを堪能できた。

3.低水管理賞 早明浦ダム:まさに四国のいのち、である。

4.洪水調節賞 日吉ダム:もうこれ以上は貯められない、というところまで貯め込んで下流を守った、その献身的犠牲の精神に拍手。

5.ダム大賞 日吉ダム:やはり、「命を守る」ということが如実の現れていたのでは無いだろうか。会場のみなさんは、そこに感銘を受けたのだろうと私は思う。

ダム大賞を受賞した「日吉ダム」には大賞のトロフィー(dam masterによる渾身の作品)が贈られた。こうして興奮の渦のうちに、2013年のダムナイトは幕を閉じた。


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(2014.1.8、池ちゃん)
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 (星野 夕陽)
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