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5.千種川 〜 安室ダム・長谷ダムの建設、 市川 〜 生野ダム(銀山湖)の建設


〔千種川〕 
 千種川は、兵庫県南西部に位置し、その源を三宝山(標高1358m)に発し、南流しながら、中流部で志文川、佐用川を合流し、さらに下流部では鞍居川、安室川、矢野川、長谷川等流域面積10・の支川を数多く合流し、播磨灘に注ぐ流域面積 747km、幹線流路延長67kmの二級河川である。その流域は忠臣蔵で有名な赤穂市、相生市等西播地方における社会、経済の基盤となっている。


『安室ダム工事誌』

安室ダム(本宮湖)の建設 
 安室ダムは、千種川水系安室川の兵庫県赤穂郡上郡町行頭地点に千種川総合開発の一環として平成14年に完成した。
 兵庫県上郡土木事務所編・発行『安室ダム工事誌』(平成4年)のなかで、ダム事業の必要性について「昭和49年7月7日の豪雨災害により、大規模な災害を受け、・・・・昭和51年9月台風17号の豪雨によって再び河川災害50ケ処、橋梁流失5ケ処、家屋の浸水 641戸、田畑の冠水 230haと壊滅的な被害を受けた。このため昭和56年3月千種川水系工事実施基本計画が策定された」と述べている。これらの被害については、治水経済調査が行われ、安室ダム建設によって年平均被害軽減額を 522.8百万円と積算されている。


安室ダム

 安室ダムは3つの目的をもって建設された。

・ダム地点の計画高水流量 100m3/sのうち85m3/sの洪水調節
・安室川沿線の既得用水の補給
・水道用水として、相生市、赤穂市上郡町揖保川町および御津町に対し0.23m3/s(20,000m3/日)の給水

を可能ならしめることである。
 ダムの諸元は、堤高50m、堤頂長 172m、総貯水容量 430万m3、重力式コンクリートダムである。総事業費85億円、起業者は兵庫県、施工者は清水建設(株)・竹中土木(株)・(株)神崎組共同企業体である。なお、補償にかかわる用地取得面積31.1haとなっている。残念なことには、長期間交渉を続けていたが、同意を得られず、4人の土地所有者とは土地収用法に基づく事業認定を行い、収用裁決、行政代執行を行う結果となった。

 このダム施工の特徴については、ダム用自動型枠を開発、実施したことである。自動型枠は空間を利用した「回転式」と尺取り虫のように上昇していく「スライド」の2種類があり、回転式は9ブロック、スライド式は3ブロック及び5ブロックに実施された。


長谷ダム

長谷ダム(深山湖)の建設 
 長谷ダムは、播磨科学公園都市建設に伴う流出増対策として築造されたダムである。この公園都市は、西播磨テクノポリスの中枢となる都市建設であって、兵庫県の「創造性豊かな科学技術の振興」と「産業構造の高度化」を推進する拠点として、新宮町、上郡町及び三日月町にまたがる西播磨丘陵に、基幹施設として、大型放射光施設、兵庫県立大学、先端技術研究開発センタ−コンピュニタカレッジ等が建設されている。



 長谷ダムは、千種川水系長谷川の兵庫県揖保郡新宮町上莇原字深山口の地点に、平成63年〜平成4年の短期間のうちに完成した。
 兵庫県竜野土木事務所編・発行『長谷ダム工事誌』(平成5年)がある。この建設目的として、ダム地点における計画高水流量16m3/sのうち12m3/sの洪水調節を行い、長谷川沿川の既得用水の補給を図ることにある。ダムの諸元は堤高30.3m、堤頂長 125m、総貯水容量24万m3、重力式コンクリートダム、総事業費24億円である。起業者は兵庫県、施工者は、(株)林組・(株)熊谷組・(株)宮本組共同企業体である。


〔市川〕 
 市川はその源を兵庫県朝来郡青倉山に発し、栃原川、越知川、小田原川等を合流しながら南流し、神崎郡神崎町を経て、平地を拡大し姫路の肥沃な扇状をつくり、播磨灘に注ぐ流域面積 491.2km2、幹線流路延長77.5kmの二級河川である。とくに下流部は姫路市を中心として古くから開けた町であり、播磨工業地帯の中核として飛躍的な発展を遂げた地域である。


『生野ダム建設工事誌』

生野ダムの建設 
 生野ダムは市川総合開発事業として、市川の兵庫県朝来郡生野町竹野原地点に昭和48年に完成した。
 兵庫県企業庁編・発行『生野ダム建設工事誌』(昭和48年)には、このダム事業の必要性について「昭和30年以降の姫路市周辺の急激な人口の増加(昭和30年人口25.4万人→平成16年人口48.1万人)、播磨工業整備特例の指定に伴い、姫路市を中心とする周辺地域の都市用水の需要に対処するために水資源の開発が急務となった」と述べている。


生野ダム

 生野ダムは次の4つの目的をもって施行された。

・ダム地点の計画洪水量 410m3/sのうち 300m3/sの洪水調節を行う
・市川沿川の 3,071haの耕地に灌漑用水、下流の既設用水を補給する
・水道用水として、姫路市地域に対し、75,000m3/日を供給する
・工業用水として姫路臨海部工業地帯に 115,000m3/日を供給する。

 ダムの諸元は、堤高56.7m、堤頂長 220m、総貯水容量1800万m3、重力式コンクリートダムである。補償については、本村と菅町における水没家屋58世帯、非水没魚ケ滝9世帯も社会的、経済的に孤立することから、水没同様に移転補償を行った。総取得面積99.4haである。総事業費45.7億円であるが、その内訳の比率は本工事費38%、用地費及補償費28.6%、補償工事費23.3%、事務費その他10.1%となっているが、補償費を合わせると51.9%を占める。起業者は兵庫県、施工者は(株)熊谷組である。

 なお、生野ダムは昭和56年からダム周辺環境整備事業が行われ、「銀山湖」周辺は、上流の黒川渓谷とともに「ひょうご百景」に選ばれている。一方利水面においては、平成6年、12年、14年の渇水時に大きな効果を発揮した。

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