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この書によると、大門ダムは、4つの目的をもって建設された。
・大門ダムにおいて、洪水量 240m3/sのうち、 110m3/sをダムにため、残りの 130m3/sを下流へ流し、須玉川、塩川沿岸地域の水害を防除する。 ・既得用水の補給(かんがい面積 478.2ha)と河川維持用水として塩川ダムと合わせて黒沢川基準点で維持流量を確保する。(大門ダムは須玉川流末で 0.3m3/s) ・峡北地域のうち、高根町、長坂町、小渕沢町、大泉村に対し、最大流量13,000m3/日(0.151m3/s)を供給する。 ・利水放流を利用し、最大出力 230KWにより、ダム管理用の発電を行う。
大門ダムの諸元は堤高65.5m、堤頂長 180m、堤体積18万m3、総貯水容量 235万m3、型式は重力式コンクリートダムである。施工者は西松建設(株)、飛島建設(株)、国際建設(株)共同企業体で、事業費は 176億円を要した。なお、補償関係は、取得面積25.8ha、移転家屋はなかったが、営農面積50%以上水没する農家も数人あり、代替農地の斡旋が行われた経過がある。
この大門ダム建設において技術的に特筆されることは、「貯水池内の大規模火山性堆積物に対する遮水壁の設計と施工」であり、前掲書『大門ダム』に次のように記されている。
・遮水壁の設計:大門ダム右岸アバットに連なる山体、上流側の緩傾斜地の岩盤30〜40度の傾斜で右岸側に落ち込み、その上に火山性堆積物が厚く堆積している。右岸の山体は、貯水池からの漏水とそれに伴うパイピングが懸念されたので、アスファルトコンクリートによる表面遮水壁を設けることとした。大門ダムにおける遮水壁は、貯水池内に設けられ、大規模な背圧対策を行ったもので、面積42,000m2、最大水深50mという本邦では最大級のものである。
・遮水壁の施工:本遮水壁は、地山形状に合わせた設計としたため、上下流方向には勾配変化部の円弧によるつなぎ、ダム本体および船窪沢水路との結合等複雑な箇所があり、それらの施工方法を確立した。
・アスファルトコンクリートの配合設計:各種基礎を行って配合設計方法について詳細に検討し、その体系化を図るとともに、アスファルトと骨材との付着について検討した結果、従来考えられていた剥離防止剤としての消石灰添加率30〜50%を10%まで減少させ、経済性を高めるとともに施工性を容易ならしめた。 このような遮水壁の設計と施工によって、技術的評価が高く認められ、昭和62年5月「土木学会・技術賞」の受賞の栄誉に輝いた。
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