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8.塩川ダム(塩川)の建設

 塩川は、山梨県峡北地方の東部に位置し、その源を奥秩父山系の高峰金峰山(標高2595m)に発し、山間部を南流し、須玉川を合流しながら流下し、双葉町塩崎地先で富士川に合流する流域面積 389.7km2、流路延長約40kmの河川である。塩川は古くからかんがい用水、発電等に利用され、とくに下流部には広大な耕地を有し、峡北地方の穀倉地帯となっている。韮崎の市街地は塩川の下流部に形成されている。塩川ダム(みずがき湖)は、この塩川の山梨県北巨摩郡須玉町比志地先(現北杜市須玉町)に、平成10年6月に多目的ダムとして建設された。

 山梨県大門・塩川ダム事務所編・発行『塩川ダム』(平成11年)、同『塩川ダム写真集』(平成11年)によると、このダムは5つの目的を持っている。

『塩川ダム』

『塩川ダム写真集』

・ダム地点の計画高水流量 450m3/sのうち、 200m3/sの洪水調節を行い、塩川沿川地域の水害を防除する。
・ダム地点下流の塩川沿川の既得用水の補給を行う等、流水の正常な機能の維持と増進を図る。
・茅ヶ岳山麓地区の 520haの農地に対し、かんがい用水として、かんがい期平均0.07m3/s、最大0.38m3/s、年間 237万m3の取水を可能ならしめる。
・峡北地区(須玉町、韮崎市、明野村、双葉町)に対し、江草地点において水道用水として新たに17,000m3/日( 0.2m3/s)の取水を可能ならしめる。
・新たに塩川発電所を建設し、最大出力 1,100KWの発電を行う。


 塩川ダムの諸元は堤高79m、堤頂長 225m、堤体積38.8万m3、総貯水容量1150万m3、型式重力式コンクリートダムである。施工者は大成建設(株)、戸田建設(株)、長田組土木(株)共同企業体、事業費は 490億円を要した。補償関係は、用地取得面積約85ha、移転家屋36戸、江草発電所の補償などとなっている。36戸の移住地は湖畔地区10戸、火打坂地区7戸、百観音地区6戸、その他13戸と各々移転している。なお、伊藤七六・写真『塩川ダムの水没者の人々』(山梨県須玉町・平成3年)の書が刊行されている。

 前掲書『塩川ダム』のなかで、沼田俊樹山梨県土木部長は、

 塩川ダムは重力式コンクリートのダム本体と左岸上流に建設した傾斜土質コア型ロックフィル形式の遮水工とで出来ています。ダム本体コンクリート打設は、超固練りコンクリートをダンプトラックブルドーザー、振動ローラなど汎用性のある建設機材を用いた、いわゆるRCD(Roller Compacted Dam−Concrete)工法を県下で初めて採用したところです。また、遮水工には旧河床堆積物からの漏水防止を万全とするため、厚さ60┰の大規模コンクリート連続地中壁を施工しております。

 と、そのダムの施工特徴を挙げている。

 さらに、このダムで特筆に値することは、建設工事において、安全管理が徹底的に行われ、重大な事故が一件も発生しなかったことである。

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