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9.深城ダム(葛野川)の建設

 葛野川は、相模川水系上流部の一大支流にあたり、北関東山地の小金沢山(標高2014m)及び黒岳(標高1988m)に源を発し、山岳地帯を東に流下し、土室川と合流して流れを南に変えて大月市七保町を横断し、大月市猿橋町で桂川(相模川)に合流する流域面積 114.3km2で、流路延長約17.0kmの一級河川である。

 深城ダム(シオジの森ふかしろ湖)は、この葛野川の大月市七保町大字瀬戸字唐沢地先に平成17年、多目的ダムとして完成した。
 山梨県深城ダム建設事務所編・発行『深城ダム』(平成17年)、同『深城ダム写真集』(平成17年)によると、このダムは4つの目的を持っている。

・ダム地点において、概ね80年に1度の割合で発生する洪水量を 400m3/sと見込み、そのうちの 200m3/sをダムに一時的に貯留し、残りの 200m3/sを下流に流す。このダムの洪水調節により下流の大月市七保町田無瀬地点では基本高水流量 850m3/sを 680m3/sに減少させ、沿川地域の水害を防除する。
・かんがい面積41.2haの農地に対し、かんがい期を中心に 0.115〜 0.514m3/sの農業用水を確保する。
・河川に生息する魚類などの水性生物や河川の浄化機能を保全するため、0.40〜1.33m3/sの水を確保する。
・田無瀬下流地点で、水道用水として新たに 18000m3/日( 0.209m3/s)の取水を可能にする。

『深城ダム』

『深城ダム写真集』

 深城ダムの諸元は、堤高87m、堤頂長 164m、堤体積21.1万m3、総貯水容量 644万m3、型式重力式コンクリートダムである。施工者は、西松建設(株)、鹿島建設(株)、(株)早野組共同企業体、事業費は 398.5億円を要した。
 なお、主なる補償関係は、用地取得面積約66ha、移転家屋31戸(33世帯)、公共補償として国道等の付替、漁業補償となっている。

 前掲書『深城ダム』のなかで、三井克己山梨県土木部長はダム施工の特徴について、

 深城ダムは、河床幅の狭い急峻なV字谷という十分な仮設ヤードの確保も難しい厳しい地形条件の中での施工でありました。また、地形上生じるダムサイト原石山の長大法面については様々な緑化工法による現地試験施工を行い、その活着状況等を確保しながら、よりよい現地に適した工法を選定し施工しており、環境にも配慮いたしました。ダム本体部分につきましても洪水期及び非洪水期常用洪水吐ゲートを兼用すること等によるコスト縮減を図ったところです。

 と、述べており、技術的苦難が伺える。

 深城ダムの建設経過をみると、昭和61年4月ダム事務所の開所、平成元年一般補償基準の調印(個別補償交渉開始)、8年ダム本体工事発注、11年基礎掘削の完了、12年本体コンクリート打設開始、14年本体コンクリート打設完了、15年試験湛水開始、17年3月ダムは完成した。昭和61年着手以来18年の長い歳月が流れ、ここに被補償者の協力によって、事業者、施工者及び各関係者の努力が実った。


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