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11.桐見ダム(仁淀川水系坂折川)の建設

 前述のように仁淀川は、西日本最高峰の石鎚山(標高1982m)にその源を発し、愛媛県、高知両県にまたがって土佐湾にそそぐ一級河川で、吉野川、四万十川(渡川)に次ぎ、四国でも第3位の大河川である。

 仁淀川の名の由来は、その昔朝廷の贄殿(にえどの)に鮎を毎年献上したので贄殿川となり、いつしか仁淀川といわれるようになったという説や、川の様相が淀川に似ていることから似淀川と呼ばれ、仁淀川となったという説などもある。古代、仁淀川は大神に捧げる酒をこの水で醸造したことから、「神川」と書いて゛三輪川゛と呼ばれていた。


 仁淀川の流域の95%が山地であり、平地としては上流の久万町及び中流越知町周辺に盆地があるほか、伊野から河口に至る左右岸に開ける吾南、高東平野だけで、この下流域の2平野は、高知県の主要な農耕地帯をなしている。また、仁淀川流域は、年間降雨量が上流部2500〜4000mm、下流平地部で2000〜3500mmわが国有数の温暖多雨地帯となっている。

 一方、坂折川は、仁淀村長者地区の南東部山地の北斜面に源を発し、越知町の中心地越知地区で仁淀川本流と合流する、流域面積58.9km2、流路延長16.4kmの急流河川で、地元では桐見川または大桐川とも呼ばれている。
 「霧見川」の古名は、川霧の深く立ちこめる所から名づけられたといわれ、霧の多いこの川の流域では、良質の茶が生産される。

 坂折川は、下流部に越知町の中心地をひかえる重要な河川であるが、従来河川改修がほとんどなされておらず、古くから多くの災害を受けて来た。近年においても昭和38年8月の台風9号、昭和50年8月の台風5号などによる豪雨出水で多大の被害をうけ、越知町の平地部の発展が著しく阻害されており、早くから抜本的な治水対策が望まれていた。このため、一級河川仁淀川水系坂折川の高知県高岡郡越知町五味地先に桐見ダムは治水ダムとして建設されたもので、坂折川の治水事業の一環をなすものである。

 この工事記録について、桐見ダム工事誌編集委員会編『桐見ダム工事誌』(高知県桐見ダム建設事務所・平成3年)がある。


『桐見ダム工事誌』
 桐見ダムは、3つの目的を持っている。

洪水調節
 洪水調節は、洪水期(7月1日〜10月10日)において、貯水位 114.0mから 132.8mまでの間の容量 5,410,000m3を利用し、計画高水流量 990m3/sのうち 600m3/sを調節する。また、非洪水期(10月11日〜6月30日)においては、貯水位 122.5mから 132.8mまでの容量 3,410,000 m3を利用して調節を行う。

・流水の正常な機能の維持
 遊行寺地点下流の田畑( 212ha)に対するかんがい用水の補給を行うとともに、流水の正常な機能の維持と増進をはかる。
 下流既得用水および河川維持用水として、洪水期は貯水位 107.5mから 114mまでの容量 1,050,000m3、非洪水期は貯水位 107.5mから 122.5mまでの容量 3,050,000m3を 利用して、渇水時に補給する。

・管理用発電
 管理用発電として、洪水調節、流水の正常な機能の維持と増進、制限水位及び常時満水位の維持のために行う放流を利用して最大 600KWの発電を行う。
 管理用発電として、洪水期は貯水位 107.5mから 114mまでの容量 1,050,000m3、非洪水期は貯水位 107.5mから 122.5mまでの容量 3,050,000m3を利用して行うこととなっている。

 桐見ダムの諸元は、堤高69m、堤頂長 156m、堤体積18.2万m3、有効貯水容量 646万m3、総貯水容量 816万m3、型式は直線重力式コンクリートダムである。起業者は高知県、施工者は西松建設(株)竹中土木共同企業体、事業費は 186億円を要した。

 なお、主なる補償は、家屋移転30戸、取得面積48.6ha、県道・町道の付替補償となっている。

 ダム周辺には、越知町のシンボルである横倉山の馬鹿だめし、住吉神社付近の雄大な山容が眺められる展望広場、ダム建設の際の骨材プラント跡地を利用したアンモナイトを模したカラー舗装やローラースケートコースなどの大桐広場、貯水池上端に位置し、植栽を中心とした親水広場としての水遊びを楽しめる佐ノ国広場の3ケ所の環境整備がなされている。


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