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13.坂本ダム(松田川)の建設

 松田川は、その源を愛媛県津島町小岩道に発し、高知県西南地域の拠点都市である宿毛市を縦貫して、宿毛湾に注ぐ、流域面積 232.0km2、流路延長51.1kmの二級河川であり、下流に宿毛市街と豊かな平野を形成している。

 流域の年間平均降雨量は約2000mmで夏期に集中して降る傾向にあり、幾度となく豪雨や台風により氾濫し、下流域の人々は多くの被害を受けてきた。特に大正9年には河戸堰の堤防が決壊し、死者60人、家屋の流失全壊 190戸という大惨事になった。また近年では、昭和38年、39年、47年、55年と洪水による大きな被害が発生している。

 このため松田川の抜本的な治水対策が望まれ、流域の治水効果を高めるため松田川総合開発事業のひとつとして、中流域の宿毛市橋上町坂本地先にダムの建設が決定した。

 坂本ダムは、昭和43年度から県単独で予備調査を行い、昭和47年度実施計画調査に事業採択され、昭和58年度から建設事業に着工した。付替県道が平成5年度に完成、ダム本体は平成6年3月に着工し、平成13年2月に竣工した。

 四国電力技術コンサルタント高知支店編『坂本ダム工事誌』(高知県坂本ダム管理所・平成14年)によれば、坂本ダムは3つの目的をもって造られた。


『坂本ダム工事誌』
洪水調節
 ダム地点の計画高水流量 950m3/s(年超過確率1/50)のうち 560m3/sを貯水池に貯留し、これによって下流宿毛地点での基本高水流量2400m3/sを1900m3/sの流量に低減し、下流域の洪水を減災する。

・既得取水の安定化、河川環境の保全
 ダム下流域で利用されているかんがい用水(対象面積 331ha)、上水道用水(0.08m3/s)に支障のないように流水を補給する。また渇水期には貯水池の水を放流し、河川環境(対象面積 225.1km2)を保全する。

・発電
 年々増える電気の需要にこたえるため、最大 5.0m3/sの放流水を利用して、ダム直下の坂本発電所で最大出力1100KW、年間発生電力量5448 MWHの発電を行う。
 貯水池には発電のための特定貯水容量を設けず、河川維持用水の放流で発電する従属発電方式としている。



 一方、坂本ダムの諸元は、堤高60.3m、堤頂長 193.5m、堤体積17万m3、有効貯水容量1610万m3、総貯水容量1815万m3、型式重力式コンクリートダムである。起業者は高知県、施工者は熊谷組、佐藤工業、新進建設共同企業体、事業費 391億円を要した。 なお、主なる補償は、移転家屋28戸、用地取得面積136.87ha、公共建物移転5施設となっている。
 坂本ダムの周辺整備は、日平公園(人工滝、池、キャンプ場、炭焼き体験広場)、楠山公園(紅梅、白梅の林)、池ノ上公園(大榎、どんぐりの森、原っぱ)、展望広場が設置され、その周りの出井の甌穴や上流の笹平キャンプ場と一体となったレクリエーション活動空間を創りあげている。

 横道にそれるが、ダム湖の環境について重要視されてきており、平成18年9月28日、水源地環境整備センター主催の「貯水池の生態学」をテーマに、自然湖沼との比較を通じて、ダム湖の特性を明らかにし、生物学的・生態学的な課題についてのセミナーが東京都内に於いて開催された。(「ポータル」'06.10月号)


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