◇ 10. 市房ダム(球磨川)の建設
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球磨川は熊本県南部一帯を占める九州第3の河川で、その源を銚子笠(標高1,489m)に発し、途中で川辺川、山田川、鹿目川などを合流しながら下り、八代平野に出て不知火海に注ぐ流路延長115q、流域面積1,880km2の一級河川である。球磨川本川におけるダム建設は下流から上流に向かって、荒瀬ダム(昭和30年完成)、瀬戸石ダム(昭和33年完成)、幸野ダム(昭和34年完成)、市房ダム(昭和34年完成)がみられる。球磨川上流に建設された市房ダム建設を追ってみたい。
球磨川流域は戦後改修が始められたが、昭和24年のデラ、フェイ、ジュディスの3台風、および25年のキジャ台風で大被害を蒙った。
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一方、湯前、免田地区の球磨川南岸は従来から用水不足に悩み、反復利用や間断灌漑で切り抜けていたが収穫が極めて少なかったため、用水補給と幸野溝、百太郎溝の用水施設改良が強く要請されていた。また九州地方は、電力事情も特に逼迫の度を増しつつあり、このような背景から治水利水の一貫とした河川開発が望まれ、昭和24年市房ダムの調査が始まった。昭和28年市房ダム工事着手、昭和34年熊本県球磨郡水上村地点に完成した。
市房ダムの建設については、建設省九州地方建設局八代工事事務所編・発行『五十年史』(昭和63年)のなかに記されている。この書によれば、市房ダムは3つの目的を持っている。
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@ 洪水調節 ダム地点の計画高水流量1,300m3/sを650m3/sに低減させるとともに、人吉地点の基本高水流量4,500m3/sを4,000m3/sに調整する。 A 農業用水 球磨川上流部左岸地区に最大取水量15.6m3/sをもって農地3,578haに対し、農業用水を確保し、既耕地の用水強化を図る。 B 発電 発電は、ダム式の市房第一発電所、調整池水路式の市房第二発電所を設け、それぞれの発電所にて、最大出力15,100kW、2,300kWを発電する。
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『五十年史』 |
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市房ダムの諸元は、堤高78.5m、堤頂長258.5m、堤体積31.2万m3、総貯水容量4,020万m3、有効貯水容量3,510万m3、型式は溢流型直線重力式コンクリートダムである。起業者は建設省(昭和46年5月熊本県に移管)、施工者は西松建設で、事業費は38.3億円を要した。主なる補償関係は、家屋移転208戸、土地取得面積132.6ha、公共補償水上村役場、小中学校、発電所補償2件、漁業補償1件であった。
次に、工事経過を追ってみると、昭和28年工事着手、32年本体工事着手、仮排水トンネル工事着手、その後ダム地点の掘削工事、33年8月に本体コンクリート打設を開始した。コンクリート製造、打設設備は1.5m3ミキサー2基、両端移動式9tケーブルクレーン1基をもって時間最大74.8m3、日最大1,632.3m3を打設して、当初予定した27ヵ月の打設計画を8ヵ月短縮して、昭和35年2月打設を完了した。コンクリート骨材は、下流20qの深田村、13qの須恵村より、7tダンプトラック5台、5tダンプトラック7台によって運ばれた。
なお、市房ダムはわが国初の自動水位維持装置、自動洪水調節装置が設置された。
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