これは、「月刊ダム日本」に掲載された記事を一部修正して転載したものです。著者は、古賀邦雄氏(水・河川・湖沼関係文献研究会、ダムマイスター 01-014)です。
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◆ 9. 西之谷ダムの建設
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西之谷ダムは、二級河川新川水系新川の上流鹿児島市西別府町西之谷地内(錦江湾河口から9.2q地点)に建設されるもので、新川河川総合開発の一環をなすものである。新川は、川幅が狭小であるため梅雨期や台風期に毎年のように河川の増水、氾濫を繰り返してきた。昭和44年6月30日、61年7月10日、63年8月22日と水害が起こり、特に平成5年8月6日の洪水では、1時間雨量56oで、新川下流一帯の浸水家屋1,379戸が被害を受け、平成7年8月11日の洪水では、1時間雨量99oで、浸水家屋1,283戸、多くの車が流された。
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このような状況から、47年から実地計画調査に着手し、ダム本体のコンクリート打設が完了し、平成24年10月試験湛水を行っている。
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◆ 10. 西之谷ダムの地質
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鹿児島県のダム建設は、ダムサイトなどの複雑な火砕流の地質構造となっていることから、その設計・施工には苦労のあとがにじみ出ている。
西之谷ダム地域の地質構成は、四万十層群と呼ばれる中生代の砂岩、頁岩が基盤をなし、その上部に幾層かの火砕流堆積物と水成堆積層などが覆っている。これらは下から照国火砕流、花倉層、小山田層、加久藤火砕流、城山層、入戸火砕流堆積物(シラス)の順となっている。西之谷ダムの基礎地盤は、主にこの城山層にもとめており、一部シラスに着岩する。
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◆ 11. 西之谷ダムの諸元と目的
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西之谷ダムの諸元は、型式 重力式コンクリートダムで、堤高21.5m、堤頂長135.8m、堤体積32,300m3、ダム天端標高EL.59.0m、最低基盤標高EL.37.5m、上流面勾配上流フィレット1:0.6(始点EL.52.5m)、下流面勾配1:0.78である。
貯水池は、集水面積6.8km2、総貯水容量793,000m3、堆砂容量75,000m3、設計洪水位EL.57.3m、サーチャージ水位EL.55.0m、最低水位EL.43.0mとなっている。放流設備として、常用洪水吐き 幅1.95m×高さ1.65m 1門、非常用洪水吐き 幅12.0m 4門を備え、ダム設計洪水流量320m3/s、計画高水流量95m3(1/100)、計画最大放流量40m3/sとなっている。
西之谷ダムの目的は、洪水調節のみであり、洪水調節方法は、穴あき方式(ゲートレス)であり、確率規模別流量配分で、次の3通りで行われる。 @ 1/20 20年に1回の雨が降った時、ダム地点で最大60m3/sの洪水が流下するが、ダムにより35m3/sを制御し、下流河川に25m3/sを流下させる。 A 1/50 50年に1回の雨が降った時、ダム地点で最大80m3/sの洪水が流下するが、ダムによって50m3/sを制御し、下流に30m3/sを流下させる。 B 1/100 100年に1回の雨が降った時、ダム地点で最大95m3/sの洪水が流下するが、ダムによって65m3/sを制御し下流に30m3/sを流下させる。
西之谷ダムの特徴は、洪水調節容量のみで、不特定容量を持たない、穴あき式のダムで、そのため貯水容量を確保するために、貯水池内の掘削を行った。
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