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■ 初の多目的ダム・長島ダム 
 大井川の流域において、いままで全てが発電用のダム建設であったが、初めて治水、利水とした多目的ダム長島ダムが、昭和48年1月の調査立入り以来、30年を経て平成14年3月完成した。この建設記録として、国土交通省長島ダム工事事務所編・発行『大井川水系 長島ダム工事誌』(平成16年)が刊行された。

 長島ダムは、大井川の上流静岡県榛原郡本川根町梅地、犬間地点に建設され、大井川総合開発の一環をなすものである。
 大井川の治水計画は、昭和49年に最近の出水状況及び流域の開発状況にかんがみて工事実施基本計画が改定され、基準地点である神座(河口より24Km地点)において基本高水ピーク流量11,500m3/sのうち上流ダム群で 2,000m3/sを調節し、 9,500m3/sと定められた。
 長島ダムは次の4つの目的をもって建設された。

・長島ダムの建設される地点における計画高水流量 6,600m3/sのうち 1,600m3/sの調節を行い下流市町の水害を軽減する。
・下流の既得用水の補給等、流水の正常な機能の維持と増進を図る。
・牧ノ原地区の 5,145ヘクタールの農地にかんがい用水(最大Q= 3.045m3/s)の補給を行う。
・静岡県大井川広域水道企業団に新たに一日最大 518,400m3(Q= 6.0m3/s)の水道用水の取水を可能とする。



 その諸元は、堤高 109m、堤頂長 308m、堤体積86.1万m3、総貯水量 7,800万m3、重力式コンクリートダムで総事業費1670億円。起業者は国土交通省、施工者は前田建設工業(株)、清水建設(株)、竹中土木(株)である。なお、用地補償は家屋移転は43戸となっている。

 相原正之長島ダム工事事務所長は、長島ダムの特徴について、

・放流設備が国内最大規模である
骨材採取は河道に堆積して、豊富な礫を利用した
・岩盤を置き換え的に基礎コンクリートの部分をRCD工法で施工した
・上流仮締切り施工として国内初のCSG(施工現場にある砂礫にセメントを混合させる転圧施工する)を施工した
・そして、補償工事として水没する電力所有のミニ森林鉄道を付替え、約 1.5Km区間を国内唯一のアプト式( 第3軌条としてラックレール敷設)とした

ことを挙げている。
 さらに地域に開かれたダムとして、本川根資料分室、接岨峡温泉会館、もりのいずみ(大井川畔の露天風呂)、久保山ゲートボール場、レイクコラージ奥大井(井川線奥大井湖上駅の展望施設)等がダム周辺整備事業として行われた。(「月刊ダム日本」'95 No.610 )

 平成16年11月26日長島ダムを訪れたが、とくに大井川鉄道井川線のメルヘンのような長島ダム駅舎、ひらんだ駅、湖上に浮かぶ、レインボーブリッヂの奥大井湖上駅の3つもの湖辺駅の景観は目を見張らせるものであった。

   〈錦秋を ダムに映して 湖上駅〉
                 (森田祐次)

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