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7.桂川(淀川水系)−日吉ダムの建設


 淀川の三支流の一つである桂川は、その源を丹波高原の東端の峰々に発し、亀岡盆地、京都盆地を形成して、京都府大山崎町、八幡市付近で宇治川、木津川と合流して淀川本川に入る。流路延長 114km、流域面積 1,100km2である。

 桂川、淀川沿川は、しばしば洪水の被害を受けてきた。特に桂川は中流部に保津峡があるため、亀岡市を中心とする上流域は水害に見舞われてきた。前述したが、このような治水面から昭和45年淀川水系工事実施基本計画の改訂がなされ、淀川枚方地点で基本高流量17,000m3/sのうち上流ダム群により 5,000m3/sを調節して計画高水流量12,000m3/sと決定された。この上流ダム群の一つとして、桂川、淀川の治水上、重要な役割を持つ日吉ダムは、京都府船井郡日吉町中地点に、昭和48年1月に着工し、平成10年3月に竣工した。
 

『日吉ダム対策天若同盟30年のあゆみ』

 このダムの建設に関する日吉ダム対策天若同盟編・発行『日吉ダム対策天若同盟30年のあゆみ』(平成9年)は、ダム絶対反対から条件闘争、補償妥結、家屋移転、離村式まで、写真やその当時の新聞記事もあわせて編集されている。昭和36年3月日吉ダム(当初宮村ダム)建設の構想以来、23年間の長期にわたる闘争が、昭和59年9月17日損失補償基準書の調印式により、終止符を打つこととなった。林田悠紀夫京都府知事の「犠牲を犠牲としないダム造り」をモットーに、生活再建策と日吉町などの振興策が積極的に実施された。
 

 日吉ダムの目的は、
・日吉ダム地点において 150m3/sの洪水調節を行う。
・既得用水の補給など流水の正常な機能の維持を図る。
・水道用水として 3.7m3/s(給水人口99万人相当)を供給するが、その内訳は京都府 1.160m3/s、大阪府 1.576m3/s、兵庫県 0.964m3/sとなっている。
 京都府の水道 1.160m3/sは、「JR保津峡駅」下流の取水から取水され、トンネルにより京都市西京区御陵の浄水場まで標高差30mによって導水される。さらに、この水は向日市、長岡京市、大山崎町へ送水される。現在、乙訓地域の地下水位の低下をふせぐために、日吉ダムで開発された桂川の水と、乙訓地域の地下水をブレンドした水が利用されている。
 


 ダムの諸元は、堤高67.4m、堤頂長 438m、堤体積67.4万m3、総貯水容量 6,600万m3で型式重力式コンクリートダムである。起業者は水資源開発公団(水資源機構)、施工者は飛島建設(株)、(株)鴻池組、(株)森組共同企業体、事業費は 1,836億円である。なお、補償関係は移転家屋 216戸、用地取得面積約 306haとなっている。

 関西電力(株)の世木ダム(日吉ダムの上流約 5.5kmに位置する)については、ダムを取水堰とするダム水路式発電所で、ダム下流約10kmにある新庄発電所で最大出力 7,000KW/hの発電をおこなっていたが、日吉ダムの建設によって、この世木ダムは水没することとなった。このためゲートの撤去、取水口及び導水路を改造し、従来どおり新庄発電所で発電を行うこととし、現在、世木ダムは日吉ダムの土砂流入を防ぐための貯砂ダムとしての役割を果している。

 工事については、平成6年11月からRCD工法によるコンクリート打設を開始し、平成8年7月にはコンクリート打設標高が 192mとなり、ダム本体の幅が狭くなったことから、打設工法をELCMに変更、11月には打設を完了した。平成9年3月に試験湛水を開始し、5月に常時満水位に達し、12月にサーチャージ水位となり、以後貯水位を下げ、常時満水位となって試験湛水を終了した。工事において特筆することは、両工法とも高低差がなく、施工面が水平であるため、安全作業ができ、ダム工事本体は全工程を通じて無事故、無災害で完成したことである。

 なお、建設コスト縮減について、製砂設備による骨材製造過程で発生する微粉末は、従来は廃棄していたが、この微粉末をコンクリート配合することによって、セメント細骨材の使用量の低減となった。

 平成5年日吉ダムは、「地域に開かれたダム」に指定された。この指定は地域の特性を活かしたダム、ダム湖及び周辺地域の整備を促進し、地域の活性化を図る目的としたものである。指定に伴い日吉ダムでは、里のゾーン(スプリングスパーク)、水のゾーン(日吉ダム湖周辺、世木ダム湖周辺)、森のゾーン(市民の森)、山のゾーン(青少年野外活動センター)の4つのゾーンが整備され、新しい景観と憩いの場、学習の場、を生み出した。これらの新たな水と緑の水辺空間の創出は、京都府さらには周辺府県の人々のレクリエーションの基地となっている。

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