《このごろ》
ダムマニア展レポート(6)
〜トークライブ「ダム協会ってどんなとこ:ダム便覧」

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 ダムマニア展の初日、19日(土)13時からのトークライブ第一部は、「ダム協会ってどんなとこ」。萩原さんが話をし、そして聞き手になって、ダム協会の酒井(Jny)と廣池が答え、時に Dam master さんが加わるといったスタイル。

 だいぶ前に萩原さんから出演依頼があった。人前で話すのはどちらかといえば苦手だし、トークショーのようなものは経験もないので、どうしようかなとも思ったが、仕方がないかと観念。ダム便覧について話してほしいというので、萩原さんに、萩原さんの方から質問をしてほしい、それに答える形にするからとお願いをした。それと、ダム協会の廣池が一緒に出るとしても、ややこしいのでまず私の分担分をやって、それが終わってから廣池の分担分というように、分けてほしいとお願いをした。実際、ほぼそんな風で、私がダム便覧やダム協会について、廣池が「ダム日本」について、萩原さんの質問に沿った形で話した。

 前にも書いたが、ちょっとしたハプニングもあった。ダム便覧関係は何かあったら実物のダム便覧を見てもらおうと、何も資料を用意せずに行った。あらかじめ、プロジェクターでインターネットを映せるよう頼んでおいたつもりだったが、当日行って見ると、ネットには繋がらないという。急遽、近くにいた Dam master さんのネット接続可能なパソコンを借りて、事なきを得た。そんなこともあって、事前には出演予定の無かった Dam master さんが緊急友情?出演。Dam master さんはトークも慣れたもので、何の違和感もなく参加していた。こんな具合に。

(萩原)・・・僕がダム巡りを始めた10年、11年ぐらい前は、全くネット上にダムの情報がなかったんで、地図を見て調べたりとか、自分でどんどん情報を漁っていかないと、どこにどんなものがあるか全然わかんなかったんですけど、今「ダム便覧」があるので、どのダムがどこにあって、どのくらいの大きさでどんな役割でということが簡単に分かるんで、すごく、ダム巡り人気に火をつけた、みんながダム巡りに行きやすくなったと思うんですよね。
(Dam master)ごもっともなんですが、逆に、何こんな所にダムができたのって言う、あの頃の感動って言うのが無くなったんですよね。昔は、地図を見てね・・・
(萩原)確かに、行ってみたらここはアーチだったんだっていう驚きとか、ありますよね。
(Dam master)こんなに高いんだー、とかね。
(酒井)贅沢ですねー。(笑)


 萩原さんも Dam master さんも、ダムマニアの草分けとして、ここ10年、あるいはそれ以上の期間、多くのダムを熱心に巡り、その情報をネットで流すということを続けて来た。だから、同時代を同じ思いで生きてきた仲間のようなところがあって、会話が自然に弾む。こちらが出る幕ではないようだった。

 ダム便覧の管理人としてうれしかったのは、萩原さんがダム便覧を評価してくれている点だ。萩原さんは数年前にも次のように書いている。

 「ダム年鑑」は日本のダムに関するデータなら全て載っていると言っても過言ではない書籍で、(中略)一時は「ダム好きのバイブル」とまで形容されました。もっともそんなユーザーは想定されていないため非常に高価で、またB5サイズながら厚さが約10cm、重量約3kgというヘビーなものです。一時代前までは、これとカメラやレンズ、それに地図を入れた重たい鞄を肩から下げ、三脚を持って一般車通行止の場所にある小さなアースダムを目指して炎天下数キロ歩く、といった、ある種苦行とも呼べるようなダムめぐりを行なっている人が何人もいました。
 この先人たちの苦労を一気に解消してしまったのが「ダム便覧」です。これはダム協会のホームページ内に作られた「デジタルダム年鑑」とも呼べるもので、位置情報やスペック、トピックスといったダムめぐりに必要な情報だけに特化し、様々なジャンルで検索もできる非常に便利なサイトです。「ダム便覧」の登場によって、肩から重い鞄を下げた古いスタイルのダム探訪者たちは、デジカメとノートパソコンという軽い装備に駆逐されるかたちとなり、今では一部のマニアを除いてほとんど姿を消しました。(「はじめてのダムめぐり〜ダムに出かけてみよう〜」)

 そして、この続きのような鋭い質問があった。

(萩原)「ダム年鑑」という本がありまして、(中略)それが、今はもうネット上のダム便覧でほぼ手に入ってしまうんで、ダム年鑑の存在価値を揺るがしてしまっているんじゃないかなと言う、そういう意見って、ダム協会内であったりしないんですか。
(酒井)本当はですね、ダム年鑑とダム便覧はだいぶ違うんですよ。ダム年鑑に載っかっている情報と、ダム便覧に載っかっている情報は、ダブっているのはダムの堤高とか、いわゆるダムの諸元と言われるものだけであって、それ以外の部分が年鑑にも、便覧にも実は非常に多いんです。ダム便覧は諸元が載っかっているものだという理解もあるんですが、私は、ダム便覧は総合的なダムの情報サイトですよと言っています。昔から「テーマページ」という読み物があり、最近は「このごろ」というブログみたいなものとか、「ダム事典」とか、いろんなことがあって、世界のダムもある。ダム年鑑は日本のダムだけですから。一部ダブってるけど、大部分はダブってない。だから、そういうことはないのではないかなと、反論しているんです。


 ややすれ違いのような答えになってしまった。実のところ、これは悩ましい質問で、ダム便覧の誕生がダム年鑑に与えた影響を評価して、それを元に真正面からこの問いに答えるとすると、一体どうなるのか。簡単には答えが出ないのではないだろうか。

 次にまた鋭いというか厳しい質問。これは、私も以前から気になっていたことではあるが。

(萩原)ダム便覧はダム年鑑と競合しているんではなくて、堤高とか、そういうものも含めた総合的な情報データベースとして作っているというお話ですが、それはつまり、僕らがやっているホームページと競合しちゃっていると言うことですよね。僕らが一生懸命ダムのデータベースサイトを作っていたのが、中の人が本気出してちょっとやっちゃったら、総なめになって、シェアー全部奪っちゃった、そういうような状況になっている、ということですかね。
(酒井)そういう面はあると思いますけど、ただね、ダムって言うのは、いろんな側面があるんですよね。今個人のサイト、ダムマニアさんのサイトを見てみると、いろいろある側面のうち抜け落ちてる部分があるんではないかという気がするんです。ダムマニアさんのサイトは、どちらかというと技術的な面とか、写真撮るとか、そんな面に重きが置かれているように思うんです。そうじゃなくて、そこの文化とか、最近ですと地域振興にダムを使おうみたいなこともある。今回日本画が出ていますが、そういう芸術とか、あるいは、小説なんかも、そういうものの舞台になったり対象になったりもする。そんなことも含めて、ダムマニアさんより広い観点でダムをとらえているというつもりではいるんです。
(萩原)なるほど。
(Dam master)ちなみに、酒井常務はダムマニアですか。
(酒井)ダムマニアになりたいなーと思っている。仕事辞めたら、ダムマニアになりたいなーと。先輩のダムマニアを見習って。

 質問を受けるばかりでは面白くないと、逆にこちらから質問してみた。以前から知りたいと思っていたことだ。

(酒井)萩原さん、質問なんですけど、「ダムマニア」っていう言葉はいつからあります?
(萩原)うーん、どうなんでしょうねー。具体的にいつって言うのが。
(酒井)宮島さんのサイトが「ダムマニア」ですよね。宮島さんは、ダム便覧を作った当時サイトを持っていたんですが、あれがダムマニアだったかどうかが記憶がないんです。
(Dam master)「ダムマニア」って言うホームページ、元々私のホームページ、「Dam master」ていう前に「ダムマニア」というホームページだったんですよ。ダムマニアってそのまんまだから面白くないなと、「Dam master」っていうホームページに改名した。その後に、宮島さんがダムマニアって言うホームページを立ち上げた。
(酒井)と言うことは、その当時もうダムマニアという言葉があった。あったか作ったか。
(Dam master)誰でも思いついたような言葉ですからね、別に誰が作ったというような言葉じゃないんですけどね。
(萩原)でも、結果的に10年経って考えると、検索ワードとしては、宮島さん大勝利。(笑)
(Dam master)いやいや、Dam master というブランドは守りますよ。
(萩原)僕も宮ヶ瀬ダムを見て、その帰り道に「ダムサイト」っていう名前を思いついたときはすごっくドキドキしましたからね。


 こんな風に、予定時間をだいぶオーバーして延々と続く。しかも、内容のある質問ばかりで、答えるのに正直やや手こずった感があるが、いい勉強になった。萩原さんも Dam master さんも、楽しそうに話している姿を間近に見て、もしかしたらトークマニアではないのか、ダム&トークマニア誕生かもしれない、などと思ってしまった。

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(2011.12.21、Jny)
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