《このごろ》
徳山ダム見学会

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 ダムマイスター研修「徳山ダム見学会」が、独立行政法人資源機構徳山ダム管理所のご協力で平成24年11月3日(祝)に行われました。今回の見学会は、ダムマイスターはじめ20名(うち日本ダム協会から3名)の参加となりました。管理所の方の話によると、当日朝方、徳山ダム上流の冠山では、降雪が見られたということでした。日中は多少雲が多かったものの、幸い天候には恵まれた見学会になりました。天気予報では、全国的に秋晴れの一日となるはずでしたが、ここは天端標高406mの徳山ダムです。すでに東京スカイツリー第1展望台よりも50m以上高い場所です。天気予報が外れたということではないようです。

1.揖斐の防人

 徳山ダムは、日本一の堤体積を誇るロックフィルダムとして平成20年に完成しました。同じく貯水量も日本一を誇るダムです。


監査廊、堤体内左岸EL280m付近から旧河床部方向


徳山湖、徳之山八徳橋

 徳山湖を横断する「徳之山八徳橋」は、この型式の橋梁としては世界最大級のスパンを有しているそうです。この橋は、付替国道417号線となっています。将来的には岐阜県と福井県の県境をトンネルで短絡し、日本海側へのルートが完成します。

 見学内容は、洪水吐ゲート、堤体内部、監査廊、選択取水塔、洪水吐右岸からの見学等です。通常は一般人が立ち入りできない管理専用区域からの見学も含まれました。堤体直下では中部電力による徳山発電所の建設工事が進められています。現在は、導水トンネルなどの掘削工事が行われています。


徳山ダム堤体下流部

 揖斐川流域では、徳山ダムの完成により伊勢湾台風レベルの洪水を軽減することができるようになりました。


徳山ダム

2.濃尾の水瓶

 徳山水力発電所(最大出力153,400kW)には、2つの発電機が設置されます。1号機(131,000kW)は、ダム水路式の発電機で、その水圧鉄管の製造が堤体直下で行われていました。鉄管は、堤頂部からはとても小さなチューブのように見えます。ところが、実際は直径5メートルもあるそうです。仮に、この鉄管3本を縦に並べて、コンクリートを流し込めば河川法上のダムという事になります。徳山ダムの壮大さを実感できます。発電所は、平成26年度の運転開始を目指して建設が進められていました。


水圧鉄管建設予定地

 1号機で発電に使用された水は、地下放水路を経由して横山ダム(奥いび湖)に直接導水されることになっています。1号機は、日中ピーク時の電力供給を目的にしているそうです。

 これに対して、2号機(22,400kW)は、徳山ダムの河川維持放流を利用したダム式発電機です。2号機では堤体直下付近で揖斐川に放流されます。この放流水は、横山ダム上流の小堰堤で再び取水されイビデン東横山発電所で再度水力発電に利用されます。河川維持放流を利用した水力発電となりますので、出力は1号機に比べて小さいものの常時発電機が回され、中部電力のベース供給を担うことになります。

 もちろん、1号機から放流された水も横山ダムにおいて発電その他の利水に使用にされます。2号機からの放流水の大部分は、横山ダム(奥いび湖)を経由することなく、東横山発電所から下流のダム群で水力発電に利用されます。こうして、新生ダムと年長ダムが連携することにより揖斐川の急激な水位変動を防ぐ役割を果たしているのです。


イビデン東横山発電所

3.これからの徳山ダム


徳山ダム試験放流(平成20年4月撮影)

 徳山ダムは、堤体積・貯水量という2つの部門で日本一という輝かしい勲章を持ちながらも、下流面のビューポイントが限定されることが弱点です。堤体直下に至る道路は、かつて国道417号線でした。付替国道開通後、道路の所有者は国から揖斐川町に移りました。この町道を中部電力が占有許可を得て工事専用道路としているそうです。このような事情から中部電力に排他的使用権があり、一般車両は通行できません。この旧国道は、いわゆる『酷道』でした。発電所建設工事完了後も、揖斐川町道として一般に供用するためには、整備のために相当の財源を投入しなければならないと思われます。


洪水吐左岸付近から下流方向(平成20年4月撮影)

 徳山ダムは四季を通じてとても魅力のあるダムです。黒部ダム(富山県)や宮ヶ瀬ダム(神奈川県)に匹敵する集客力があります。下流側の町道が開放されることで、徳山ダムの観光資源としての価値がさらに高まると思います。冠山峠のトンネルが完成し国道417号線が全通した暁には、アルペンルートのような観光道路になることでしょう。

 当面、堤体下流部の開放は無理であるとしても、観光放流時には、マイクロバスによるシャトル運行(有料または抽選)などを検討していただけないかと思いました。いつか条件が整ってダムカードのような放流を間近で見学できる日が来ればよいと願っています。


ダムカード

 最後にはなりましたが、祝日にもかかわらず、徳山ダムをご案内いただきました水資源機構の職員の方々に厚くお礼を申し添えます。

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(2012.11.20、安部塁)
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