平成24年9月15日(土)、ダムマイスター研修会「石淵ダム・胆沢ダム見学会」が行われました。全国から総勢15名のダムマイスター・ダム愛好家の方が、胆沢ダム学習館に集結します。多くの方が早朝あるいは前夜に自宅を出発、見学会終了後は、連休を利用して東北のダムを巡る予定を組んでいるようです。 私は、幸い前日の金曜日に休みをとることができました。そこで、栃木県北部と最近ダムカードが発行された福島県の日中ダム、大内ダムなど平日限定配布のダムを時間の許す限り回ることにして、岩手県北上市内に前泊することにしました。その反面、見学会終了後は家庭の事情もあってすみやかに帰宅しなければなりません。 一つ驚いたことは、道の駅「湯西川」付近で見かけた水陸両用バスです。これが平日なのかと疑うほど満員の観光客を乗せて、川治ダムに向かうところでした。ダム湖を利用した観光が、大成功した事例だと思います。
1. 石淵ダム
胆沢ダム学習館駐車場には、今日まで石淵ダムを静かに見守ってきた慰霊碑が仮移設されていました。この場所で当面、正式な移設先である左岸の高台が整備されるのを待つことになります。かつて洪水吐シュート部の撮影ポイントであった若柳橋も解体作業が始められていました。試験湛水への準備が着々と進められているようです。 堤頂部の照明灯もすでに撤去されていました。
照明灯の跡 この台座の上にあったものは、電球の類のような小さな照明器具ではありません。この上には、街路灯などに使用されているものと同じタイプのポール(3.6メートル)が設置されていました。
石淵ダムについては、ほとんど余すところなく見学することができました。堤頂部、上流面(ダム湖内)、取水塔、排水塔、下流面、そしてゲート機器室。
ゲート機器室内
石淵ダム上流面 日本の高度経済成長期を支えてくれた石淵ダムは、胆沢ダムの貯砂ダムとして震災復興をこれからも支えてくれるはずです。
2. 胆沢ダム
昼食後、見学者一行を乗せたマイクロバスは、パトランプ(青色回転灯)をつけて下流側から胆沢ダム場内に入りました。堤体に近づくにつれ、胆沢ダムの大迫力に圧倒されバスの中は悲鳴にも近い歓喜の渦が沸き上がりました。これには、バスの運転手さんが、一番驚かれたことでしょう。ところで、この運転手さんは、急な階段や、寒い監査廊にも不機嫌な顔一つせず、私たち見学者と同じ行動をしてくれました。感謝の言葉が見つかりません。 堤体直下では、発電所の建設工事が急ピッチで進められていました。この場所には、岩手県企業局の発電機が1基、電源開発の発電機が2基設置されることになっているそうです。
胆沢ダム下流直下(発電所建設中) 胆沢ダムの見学箇所は、堤体直下、監査廊、取水施設、展望台などです。堤頂右岸部には、リップラップで使われなかった思われるロック材が残されていました。この岩石は堤頂部に並べられて、岩と岩の間をチェーンで繋ぐ予定であるということです。今後、徳山ダムや奈良俣ダムなどのように、ロックフィルダムでよく見かけるタイプの堤頂部に整備されて行くようです。
整備が進められている堤頂部 今回の見学会で最も印象的であったのは、胆沢川の呑み口に設置された右岸上流法面保護工です。この保護工はピラミッドを彷彿させる階段状もので、とても素晴らしい造形美を呈していました。これはCSG工法で建設されたものです。
右岸上流法面保護工 「CSG積込ホッパ」というプラントが胆沢ダムの湛水域にありました。以前、CSGの使用の目的について、国土交通省の方に聞いたことがありました。そのとき「法面整備に使用している」という話を伺ってはいました。 その保護工がこのような姿であったとは、全く想像に及びませんでした。
CSG積込ホッパ、2010年12月撮影 この保護工の大部分は、最低水位以下に位置しています。水没後この現物を見ることは、ほとんど困難です。
最低水位 EL=304.00m 3.最後に
新しく誕生する貯水池の名称は、まだ決まっておりません。新ダム湖名は、公募(応募については平成24年6月末で締切)の中から、胆沢ダム水源地域ビジョン策定委員会の審査で決められるということでした。この審査会は、9月27日に開かれるそうです。 もし、審査会において甲乙付け難い名前が出た場合、両方とも採用して良いのではないかと思いました。たとえば、石淵ダムを境に下流の部分は、●●●●湖、上流の部分は、■■湖などのような例があっても面白いのではないかと個人的に思いました。河川名でも、上流の長野県では「千曲川」で新潟県に入ると「信濃川」と呼ぶような例があります。同じような例は、ほかにも多数あります。 いずれにしましても、地元有識者によって東北復興のシンボルとなるようなダム湖名が命名されることでしょう。新しいダム湖名は平成24年秋の発表予定ですから、もう間もなくということです。
中央が現在の胆沢川 いよいよ12月、クレーンで吊り降ろされたゲートがスリットに差し込まれ試験湛水が開始されます。これからが正念場です。学生で言えば、卒業試験の問題と解答用紙が配布された段階です。心を引き締めて合格点をとらなければなりません。 私たちは技術的な面では何もすることができませんが、ダムの役割を世間に声高らかに伝えて行きます。安全優先で試験湛水を無事終えることを願います。
がんばろう!東北 最後になりましたが、とても感激的な見学会にしていただきました。関係各位の方にこの場を借りて、厚くお礼を申し上げます。
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