《このごろ》
ダムマイスター自主研修会「鹿野川ダム改造事業見学会」

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 平成27年1月11日(日)ダムマイスター自主研修会「鹿野川ダム改造事業見学会」が行われました。参加者は、私とピンクのうさぎさん、ほかダム愛好家の方々4名、計6名です。この日は、天候にも恵まれ予定を大幅に上回る3時間の見学となりました。なお、本来工期の関係(放流管組立作業)でトンネル内部の見学はできないとのことでしたが、特別なはからいで見学させていただくことができました。


1.管理庁舎会議室

 鹿野川ダムは、四国西部を流れる一級河川肱川に建設されました。肱川河口部には、長浜大橋(通称:赤橋)という可動橋があります。ポニー・ワーレントラスの長浜大橋は、船舶航行時に中央の径間部が跳ね上がる構造になっています。同じ目的を持っている勝鬨橋(東京・隅田川河口部)の可動部が、今後も開かれる見込みがない一方で、長浜大橋は可動部が定期的に開閉され、今日まで大切に利用され続けています。


跳開中の長浜大橋

 見学会は、鹿野川ダム管理庁舎会議室において改造事業の趣旨説明から始まりました。冒頭で、マルチコプターで空撮された鹿野川ダムのビデオが上映されます。この映像は一般の方から寄贈されたもので、国土交通省で作成したものではないそうですが、鹿野川ダムの全貌がよくわかる素晴らしい内容です。見学会のスタートは、まずこの映像から始まることになっているそうです。


クレストゲートから放流中(平成23年6月撮影)

 鹿野川ダムではトンネル洪水吐が新設されることによって洪水調節容量がこれまでより1.4倍に増加します。ところが、これを『1.4倍多く放流する』と誤解している人が多いということです。結論から言えば、最大放流量は従来と同じです。しかしながら、洪水調節容量を1.4倍に高める“魔法の工事”がこの改造事業のポイントということになります。


容量配分の変更についての説明

 このダムには、4門のクレストゲートのほか、放水バルブ1門と発電放流用の放流管しか設置されておりません。そのため、クレストゲート敷高以下の水位から洪水に備えて予備放流を行うことは不可能です。今回の再開発は、容量配分の変更です。これまで死水容量・発電容量とされていた部分が廃止されて、あらたに河川環境容量が設定されます。これを実現するためには、低水位からの放流設備(トンネル洪水吐)の新設が必須です。そのための改造工事が、今まさに行われているところです。


2.鹿野川ダム見学

 引続き見学者一行は、ダム操作室や監査廊内部など、通常では見学できない場所を案内していただきました。


鹿野川ダムのプラムライン

 堤体内にはエレベータなどの移動手段はありません。すべて階段・徒歩での移動となります。


放水バルブ室

 当日は、放水バルブのほかにジェットフローゲートからも放流されていました。


肱川発電所付近より減勢工付近を望む見学者

 このジェットフローゲートは昨年11月より使用開始されたもので、最終的には新設される選択取水設備からの吐口となります。


新設のジェットフローゲートからの放流

 選択取水設備工事では、潜水作業が可能なバックホウが使用されます。この水中バックホウは、国内でも20台ほどしか存在しないそうです。上述のとおり、鹿野川ダムに「河川環境容量」が新設されます。完成後は、発電所を通る水は河川環境容量の中から使用されることになります。(改造事業中は発電所停止)


水中バックホウ

 右岸側では、呑口立坑の掘削工事が進められていました。


呑口立坑

 洪水吐トンネルは、大きく分けて曲線部(上流側・呑口)と直線部(下流側・吐口)の2つの工区からなります。なお、直線部最下流部90mは、鋼製の放流管(トンネルの内側に設置)となります。
 トンネルの呑口と吐口にはそれぞれゲートが設置されます。地上では何もわかりませんが、この道路のダム湖側レーンマーク(白線)の直下までトンネルが掘り進められているということでした。この地上と地下の画像を対比すると次のようになります。地上からは全く想像のできない別世界が地面の下に広がっていました。


地上:洪水吐トンネル切羽部地上付近


地下:上掲写真の地下・洪水吐トンネル切羽部


3.トンネル見学


見学ステージにて説明を受ける見学者

 見学者一行は、坑口で防じんマスクを装着しトンネル内へと進みます。将来的に減勢工となる場所付近では、放流管の組立作業が進められていました。


組立中作業の放流管

 放流管の内側にある鋼材は支保工です。組立作業が終了するとクレーンで起立させ(横倒し)、レールで洪水吐トンネルに挿し込まれます。内部の支保工は、放流管がコンクリートでトンネルと一体化した後、撤去されます。


内部支保工

 断面が円形のトンネルは、それぞれ呑口部・吐口部に向かう部分でしだいに長方形に変化させるそうです。(トランジション部)


吐口側のトランジション部

 円形から少しずつ変化を加え長方形にする理由は、ゲートの形に合わせるためです。
 トンネル左上の管は、新鮮な空気を切羽まで送るためのもので、トンネルが貫通するまで使用されます。


曲線部付近

 トンネル内部で作業用の車両が停車していました。車両と比較するとトンネルの規模がいかに大きいものか理解していただけるのではないかと思います。


曲線部付近

 一定の間隔で配線コードのようなものがむき出しになっています。これは、洪水吐運用開始後に万一、岩盤とコンクリートの間に空間ができた場合に、ここからグラウト材を注入するための注入口(ホース)であるということです。


グラウト材注入口

 全長457.5mのトンネルのうち、坑口から435m付近まで歩いてきました。この先は、呑口立坑の完成を待ってから掘削が再開される予定です。


坑口から435m付近

 巨大なトンネルを目の前にして、驚きと感動の連続で肝をつぶしそうです。
鹿野川ダムは昭和34年3月に竣工したダムで、まもなく56歳の誕生日を迎えます。大きな手術を受けている最中ですが、これからも肱川流域を洪水から守るために頑張ってほしいと思います。また、実際に工事現場まで足を運んでいただき、一人でも多くの方にダム改造事業を理解してほしいと思いました。


通常のダムカード(左)と見学者用のカード(右)


 最後にはなりましたが、この場をお借りしまして、ご多忙中ご案内いただいた山鳥坂ダム工事事務所鹿野川管理庁舎の上田様・谷岡様はじめ、作業中の皆様に深くお礼を申しあげます。貴重な現場を見学させていただき、本当にありがとうございました。
 安全第一で工事が進められ無事竣工することを願います。

[関連ダム] 鹿野川ダム(再)  鹿野川ダム(元)
(2015.1.16、安部塁)
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